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第38話 New instrument!

楽器店のガラスドアを開けると、冷房の効いた空気と、木と金属と、そして「音」の匂いが混ざった独特の空気が、六人を包み込んだ。

「わああああ——」カガミが声を上げる。「めっちゃ楽器いっぱいやん!」

「当たり前や。楽器屋やから。」キリカが返すが、その目はもうドラムコーナーをしっかりとらえていた。

店内は広く、壁一面にギターが並び、ガラスケースの中には煌びやかな管楽器、奥にはピアノやキーボード、ドラムセットが鎮座している。

「とりあえず、それぞれ見たいとこ見よか。」ヒデミがだるそうに言う。

「おう!」カガミが即座にギターコーナーへ走っていく。

セイナもその後ろを歩いていった。ハナルはマイクコーナーに目を輝かせている。アコはキーボードアクセサリーの棚へ。キリカはドラムコーナーへ。

ヒデミは一歩遅れて、アコの後ろをだらりと歩いた。

ドラムコーナー。

キリカは棚に並んだ真鍮のシンバルを一枚一枚手に取っては、指で軽く叩いていた。澄んだ音が、店内に響く。

「ええ音や。」ぽつりと呟く。

「キリカちゃん、何見てるん?」カガミがギターコーナーから顔を出す。

「さっきギターを見てたでしょ?なんでいつも私の後をついてくるの?」

「何を見てるのか見せてよ。」

「シンバルと、パッド。今の、ちょっと反応悪なってきたから。」

「買うん?」

「うん。」キリカは迷わず、シンバルと新しいドラムパッドを手に取った。「練習の時、音が気になってたんや。これで少しはマシになるやろ。」

カガミはキリカの横顔を見て、にやっと笑った。「まじめやなあ。」

「うるさい。」キリカはそっけなく言った。

「明らかに好きなんでしょ。寝る前にドラムを抱きしめてたじゃない。」

「やかましい!」

ギターコーナー。

カガミは高い位置に掛かったエレキギターを見上げていた。深いブルーのボディ。艶やかなメイプルネック。値札を見て、目を見開く。

「……た、高い……」

「諦めましたか?」セイナが横から覗き込む。

「諦めへん!いつか絶対買うたる!」カガミは拳を握りしめた。「これがもしパパによって赤く塗ってもらえたら最高だね。」

その時、キリカがドラムコーナーから戻ってきて、ギターコーナーの前を通りかかった。ふと、セイナがじっと見ているギターに気づいた。二手のストラトタイプ。値札はそれなりに手頃。

「それ、試してみぃや。」キリカが言う。

「え……で、でも……」

「ええから。すみません——これ、試奏してもええですか?」

店員が快く承諾し、アンプに繋いでくれる。セイナはおずおずとギターを抱え、スイッチを入れた。

ジャラーン——太く澄んだ音が響く。

セイナの目が少しだけ大きく開いた。

「いい音……すごく好き…」

「やろ?買うたら?」カガミが背中を押す。

「でも……もう少し、練習してから……それに、両親はこんなものを買うお金をくれないよ。エントリーモデルのギターだってすごく高いんだから。」

「あんたなあ。」キリカが呆れる。「ほしいもんは、欲しい時に買わなあかん。」

その時、ヒデミがベースコーナーから現れた。手には新しいベース。艶やかなサンバーストフィニッシュ。

「あら、ヒデミさん、それ買うんですか?」セイナが聞く。

「うん。ずっと欲しかったやつ。今日たまたまあったから。」ヒデミはあっさり言って、アコの方を見た。「アコ、キーボード、もう見終わったん?」

アコは戻ってきた:「私は買わないよ。せいぜいキーボードスタンドを見るだけ。」

「よかったな。」ヒデミは短く言って、自分のベースをケースにしまった。

その時、キリカがふとセイナの隣に立っていた。

「セイナ。」

「はい?」

「それ、買ってやる。」

「え?」

キリカは無言で、さっきセイナが見ていた二手のストラトを棚から取り出し、レジに向かって歩き出した。

「き、キリカさん!待ってください!」セイナが慌てて追いかける。「そんな、悪いです!」

「別に。お前にあげるわけやない。」キリカは振り返らずに言う。「貸しや。今度、ちゃんと返せよ。」

「で、でも——」

「うるさい。リズムギタリストがいつまでも下手くそやから、こっちも困るねん。」

キリカはそのギターを抱えて去っていき、一言残した。「二人ともギターが下手だね。」

カガミがその言葉を聞いて飛び上がる。「ちょっと待て!オレは下手くそやない!」

「上手いとは言うてない。」キリカは涼しい顔でレジにギターを置いた。

セイナの目が潤んでいる。「キリカさん……ありがとう……」

「礼なんてええわ。」キリカは相変わらずそっけなかったけど、耳の先がほんのり赤くなっている。

カガミはそれを見て、小さく笑った。「ツンデレ。」

「あんたもな。」キリカが返す。

マイクコーナー。

ハナルは、壁に並んだマイクを一つ一つ見ていた。どれも同じに見えるけど、値段が全然違う。

「ど、どれがいいか、わ、わからん……」

「ハナルちゃん。」アコが近づいてきた。「これ、試してみ?」

アコが手に持っていたのは、コンデンサーマイク。少し小さめで、ハナルの手のひらにすっぽり収まる。

「これ、声に優しいんやて。前に店長が教えてくれた。」

「あ、ありがとうございます……」ハナルが受け取ると、アコがさらに言う。

「それ、プレゼント。」

「え?」

「うちから。ハナルちゃんへの。」

ハナルは驚いて目を見開いた。「で、でも、こんな高いもん——」

「ええねん。ハナルちゃんの声、もっと届くようになったら、バンドももっと良くなるし。」アコは優しく笑った。「それに、うちも、みんなにしてもらったから。あなたたちがいなければ、うちはずっと暗闇の中で生きていたかもしれない。」

ハナルはマイクをぎゅっと抱きしめて、涙をこらえた。「……あ、ありがとうございます。大、大事にします。」

アコは照れくさそうにうつむいた。

その時、ヒデミが近づいてきた。

「アコ。」

「ん?」

「新しいキーボード、欲しいか。」

「……なんでや。」

「教えろ。」

アコは少し迷ってから答えた。「欲しい。」

「クリスマスイブ。」ヒデミはうなずいた。「あなたの誕生日はその日ですよね?それで今買うたる。」

「は?」

「新しいの。今よりええやつ。」

「いらん。」

「いらん言うな。」

「いらんねん!」

「ほしいやろ。」

「……ほしいけど、自分で買う。」

「誕生日やから、うちが買う。」

「まだ半年以上先や!」

「それも今買う。」

「はあ!?」

ヒデミはもうレジに向かおうとした。アコが慌ててその腕を掴む。

「待って待って!なんでそうなるん!」

「早よう買うた方が、早よう使えるやろ。」

「そういう問題やない!」

二人の言い合いを見ていたカガミが、声を上げて笑った。「ヒデミちゃん、もしかしてアコちゃんにプレゼントしたくてしゃーないんちゃう?」

「ち、違うわ。」ヒデミは珍しく口ごもった。「ただ……その……」

「はいはい、わかった。あなたたち、本当にお似合いだね。」キリカがまるで見物人のように言う。

アコはヒデミの手を離して、少し間を置いてから言った。「……誕生日にくれたら、もらう。それまで待て。」

ヒデミは少し考えて、「……わかった。」とうなずいた。でも、目線はアコから外さなかった。

六人がレジに集まった時、カガミが突然言い出した。

「なあ、これから、楽器にペイントせえへん?」

「ペイント?」キリカが眉をひそめる。

「そうや!自分たちの楽器に、自分たちの色をつけようや!FAってわかるように!」

「それ、いいアイデアかもしれへんな。」ヒデミが意外にも乗り気だ。

セイナもうなずく。「せっかくですし、みんなで同じデザインにしたら、統一感も出ますね。」

「わ、私、コードネームを書くのがいいと思う。」ハナルが小さな声で言う。「自分の名前を、楽器に。」

「おお!それええな!」カガミが目を輝かせる。

「それぞれ、自分のイメージカラーで塗ったら?」アコが言う。

「それもええなあ。」キリカがうなずく。「でも、やりすぎると音に影響出るからな。ステッカーにしとくのが無難や。」

「それや!」カガミが指を鳴らす。「ステッカー作ろう!自分のコードネーム入りの!」

「それなら、私、デザイン描けます。」セイナが手を挙げる。

「よし、決まりや!」カガミが叫ぶ。「次のライブまでに、みんなの楽器にステッカー貼るで!」

ヒデミは新しいベースのケースを手に取り、アコを見た。

「キーボード、いつ貼るん?」

「……ヒデミが買うてくれたら、貼る。」

「まだ言うとる。」ヒデミは笑った。「わかった。クリスマスまで待ったる。」

「約束やで。」アコも笑った。

六人は楽器店を出た。夕日が商店街をオレンジに染めている。

カガミが空に向かって叫んだ。「次はステッカーや!セイナちゃん、頼むで!」

「はい!頑張ります!」セイナが元気に答える。

ハナルは新しいマイクを抱きしめて、小さく微笑んだ。キリカはシンバルの袋を軽く揺らしながら、セイナの後ろ姿を見ていた。自分が買ってやったギターを、セイナが大事そうに背負っている。その背中を見て、キリカは口元を緩めた。

「……感謝されるの、慣れへんな。」心の中で呟いた。

ヒデミはアコの隣を歩きながら、何も言わなかった。でも、時々アコの方を見て、すぐに目をそらした。

アコはその視線に気づいていた。でも、あえて何も言わなかった。

「……ばか。」小さな声で言った。

ヒデミは聞こえているのに、知らんぷりした。

六人がそれぞれの楽器を抱えて、それぞれの音を探して——これからも、続いていく。

「いつ家に帰るの?」ヒデミが尋ねた。

「急がなくていいよ。和歌山でもっと楽しんできてね!」

(From Dandy:

Guess the six people's representative colors! Let us know in the comments! Love you all.)

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