第16話 もう二度とことない
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アコはその場に立ち尽くし、まるで足が動かせなくなっていた。
「他にも何人か雑種がおるけど、一緒に読み上げよか?」
「お父さん、お母さん!それ、どこで手に入れたんや!」キリカは焦りと怒りで、泣き出しそうだった。
「ふん。キリカ、まさか自分で知らんバンドに入ってコードネームつければ何も問題ないと思っとるんか?とっくに人を遣って監視しとるわ。お前のいわゆる友達の情報も、もう全部掴んどるんや。」
「ひどすぎる……!」
カガミはアコがぼんやりしている様子やハナルが平手打ちを受けた姿に、怒りで殴りかかりそうになった。
「戻って、カガミさん!」
しかしカガミはそんなことを気にせず、小柄な体で二人の大人に突っ込んでいった。
しかしキリカの父親はただ者ではなく、カガミはまた男に蹴り飛ばされた。
セイナはアコを支えて転ばないようにしながらも、カガミの様子にいら立ちを覚えた。セイナはキリカに目配せし、何かあればすぐに動くことを伝えた。
「今日は本来キリカのリハーサルの成果を見に来ただけや。まさかここで思わぬ収穫があるとはな!お前ら雑種どもに警告しとるんや。早よ娘から離れんかい。離れんかったら、お前らの情報を全部公開したる。バンドも潰したる。娘をダメにさせるわけにはいかん。」
「やめて!そんなことしたらあかん!お父さん、お母さん!友達にそんなことしたらあかんて!」
「……さっき、なんて言い方した?」キリカの父親は今まで黙っていたが、娘が敬語を使わなかったことにようやく気づき、表情を曇らせた。
「もうやめて。彼女たちは私の友達で、家族なんや。あんたたちが彼女たちをそんなふうに言うの、許されへん。謝って!」
「まだそんな意味不明なごっこ遊びしとるんか?幼稚すぎるわ、うちの娘さん。お前は貴族の家の子やぞ。そんな下品な遊びをして恥ずかしゅうないんか?人生を無駄にしたらどないすんねん。笑わせるわ。」
「こんなことしてるのが人生の無駄やいうなら、私は一生あんたたちが決めたレールの上を歩きたない!」
その時、痛みと放心状態からようやく意識を取り戻したハナルは、鼻血を出し始めた。さっきの平手打ちがどれだけ強かったかを物語っていた。
「これ使って連絡して。」セイナが小声で言った。彼女とキリカが初めてここに来た時、何かあったら無線機で連絡し合うと約束していたのだ。セイナらしい。ギターの腕前はまだまだだが、頭の回転は間違いなく速い。
「まずは彼女たちを連れて逃げるわ。」セイナはキリカに目配せすると、ハナルを支え、地面に倒れているカガミを起こした。カガミも正気に戻り、放心状態のアコを連れて歩き出した。
「止まれ!逃げるな!」
キリカの母親が追いかけようとしたが、キリカの冷たい視線に遮られた。
「まずは私たちの話をしようや、お母さん。」
「私はオーケストラのメンバーになりたくないし、指揮者にもなりたくない。あんたたちが決めた枠の中で生きる気もない。私がやりたいのは、いわゆる寒川家の一人娘とかお嬢様とかなんとかじゃなくて、自分自身として生きることや。私の人生は、私が決める。」
「お、おう……この小娘、逆らう気か!毎日の懲らしめが足りんようだな!」
「あんたたちが今まで私を殴ってベンチにも座れなくしたら勝ちやと思っとるんか?私はそう簡単に折れへんで。」
その時、周りにはすでに多くの人が集まっていた。見物人たちの中には、あの夫婦が寒川グループの後継者とその妻だと気づいた者もいた。
「私はゼンマイを巻けば動く機械人形やない。正直言うと、この息の詰まる交響曲が嫌いや。この豪華な服も嫌いや。私を人形みたいに扱うのも嫌いや。」
「私の友達を、あんたたちがどんなに人格を貶めても、私は気にせえへん。私の出自が何だろうと、気にせえへん。」
「もしあんたたちが望まんのやったら、今すぐ私を連れて帰って、執事に何度でも叩かせたらええ。それはあんたたちの勝手や。でも、私の心がどこに向かうかは、あんたたちには決められへん。」
キリカの母親は激怒していた。周りに人がいなければ、とっくに娘を地面に叩きつけて跪かせていただろう。実際、人前であっても何度もやり、むしろ得意としていることだった。
「あんたたちはいつも私に百合泉の友達と遊べ言うけど、いざ他の人と付き合う時は『お嬢様らしく』しろって。」
「私の同級生でギタリストのセイナちゃんを例に取ろう。私は彼女と友達でいたいのに、あんたたちは『家柄が合わん』『プレッシャーが強い』って止めたよな?」
「でも、あんたたちの方がよっぽどひどいと思うわ。セイナちゃんの家族は彼女が東大に合格するよう頑張っとるけど、彼女には自分で決める意思がある。家族もただ『合格できなかったら努力が無駄になるかも』って心配してるだけや。やり方は少し極端かもしれへんけど、今の私の状況よりはマシや。」
キリカはそう言いながら、心の中で強い罪悪感を覚えていた。セイナが家族の痛いところを突かれるのを怖がっているのを知っていたからだ。でも……後で謝ろう。聞いていなければいい。
「そしてあんたたちはどうや?私にこれをさせ、あれをさせるのは、結局あんたたちの利益のためやろ?あんたたちは私に『体裁を整えろ』いうだけで、本当に必要なのは、教養があって礼儀正しくて音楽に精通してて、嫁ぎ先に誇れる『道具』としての娘なんや。」
「あんたたちがそう思うなら、おじいちゃんおばあちゃんとほとんど変わらへんな。」
キリカ自身も、どうしてこんな言葉が出てきたのかわからなかった。しかしキリカの両親は、その場で娘を厳しく懲らしめようとしていた。周りに多くの上流階級の子弟がいるからこそ、家にいた時のようにすぐに叩くことができずにいるだけだった。
スキャンダルも悪くない。少なくともあまり縛られずに済むから。
「もうええわ!帰るぞ!これ以上恥をさらすな!」
そう言ってキリカの父親は娘の細い手首を強く掴み、引きずるように車へと向かい、運転手に発車を命じた。
トイレの中。
カガミはまだ、なぜ外に飛び出して止めなかったのか悔やんでいた。自分を責めた。あの二人がキリカを連れ去るのを、なぜ止められなかったのか。
セイナがハナルの鼻血を止めている間、ハナルは心配そうにアコを見つめ、どうすればいいのかわからなかった。
「今は……とりあえず身を隠せる場所を探さんと。みんな、どこか修理できる場所ない?アコさん、今かなりしんどそうや……」
「……うちの家に来い。」カガミは断固として言った。
カガミの家は修理工場を営んでいる。車の洗浄や修理も請け負っている。カガミの部屋は四人がぎゅうぎゅうになっても十分な広さがあった。マサル(カガミの父)は、カガミの部屋は昔は小さなガレージだったと言っていた。
マサルはカガミが友達を連れてきたのを見てとても喜び、カガミの兄に仕事を任せて自分が料理をしてみようと思った。しかし、アコのぼんやりとした様子、目に光が宿っていない様子を見て驚いた。
「どうしたんや、これは?わしがこの前乗せたお嬢ちゃんと違うか?なんがあったんや?」
「あんまり良うないんよ……お父ちゃん、なんか食べ物作ってくれへん?今……アコちゃん、ちょっと……」
「アコさんは『家族』って言葉にあんなに拒否感を示してたんやな……どうやら寒川夫妻が言ったことだけが全部やないみたいや。アコさんにはまだ他にも言えない事情があるんやろな。」
ハナルはカガミが用意してくれたジンジャーティーを飲んでいた。
「わた、私たち……ア、アコさんが回復するのを待ちましょう。あ、後でキリカさんに連絡してみることもできるけど、ま、まずはアコさんにちょっと休んでもらおう。今のアコさんは……わ、私たちの話、聞こえてないかもしれへんから。」
「うん。キリカさんの無線機が……取り上げられてへんことを祈るわ。」
(From Dandy:
Excited to see what's in the next chapter? It'll be updated this afternoon.Hope you guys like it and leave a comment!)




