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第11話 What Sparked

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「大丈夫よ。アコちゃん、何か用事?」

「心配してたんや。昨日のバンドのことで、気分悪かったやろ?」

「そ、それな……オレはキャプテンとしてちゃんと話しに行かんとあかんかったのに、アコちゃんがキリカをなだめてくれたんやな。」

「あんたは悪ないよ、カガミさん。」

「うん……気遣ってくれてありがとな、アコちゃん。もし何かあったらオレの責任やから、明日のリハーサル、絶対来てな。」

「カガミさん、そんなん言わんといて……まずは落ち着きな。何でもうちに話したらええねん。」

「あんたもな、アコちゃん。オレはちょっと疲れただけや。起きたらオレが責任取るから。」

「……わかった。早よ寝や。お利口さんやで。」

「はい。」


次の日。授業が終わるとすぐに、カガミは走ってユキを探しに行った。

松園は元々良い学校じゃなかった。生徒たちが休み時間に自由に階を行き来しても、誰も気にしない。カガミは高2の3組へ向かった。数日前に軽音部の記録で見つけたクラスだ。

「すみません!泉佐野さんを探してるんですけど!」

「泉佐野有希さん?ユキさんは今日、お休み取ってますよ。」

「休みか……まあええわ。」


教室に戻ると、カガミは自分の席に座り、気分は最悪だった。隣のハナルは難しい問題に頭を悩ませていた。カガミが重い音を立てて座ったので、ハナルはびくっとした。

「あ、あの……だ、大丈夫ですか、か、カガミさん?」

「ユキが休みやった……何か話そう思ってたのに、無理みたいや。後でメッセージ送るわ。」

「つ、次は松本先生の英語ですよ……ほ、本当にスマホい、いじってもいいんですか?」

「誰の授業でもやることある時はあるねん。安心せえ。絶対みんなに迷惑かけへんから。」

ハナルは何も言わなかった。でも気づいていた——あの日、自分が見たユキの目つきは、確かにおかしかった。そして、その中に、なぜユキがあんな態度を取ったのかの理由が隠されているような気がした。


松本先生は50代のベテラン教師で、緩い松園の中では最も厳しいと言われている。松本の授業では、生徒はこっそりと気を散らすことしかできない。どんなに退屈でも寝ることは許されない。授業中ずっと立たされたり、スマホを没収されたり——あのベテラン特有の威圧感に、大抵の生徒はおとなしく従う。

カガミはこっそりスマホを教科書の下に置き、授業を聞いているふりをしながらユキにメッセージを送った。

「ユキちゃん!体調悪いん?」

「うん。なんで知ってるの?」五分後、ようやく返信が来た。本当に体調が悪いのかもしれない。

「あんたのクラスに行って探したら、休みって言われたわ。」

今度は十分以上経ってから返事が来た。

「それで、何の用?」

「ユキちゃんがどうしたんか聞きたかったんよ。それに、体調悪いなら、午後の練習来んでもええで。」

「そうする。」

その後、カガミが何度メッセージを送っても、昨日なぜあんなことをしたのか、ユキは二度と返事をしなかった。


午後。MOCA。

今回のキリカは意外にもずいぶん早く来ていた。セイナと一緒だ。キリカがまだ彼女に楽譜の弾き方を教えている。

「こ、こんにちは、キ、キリカさん、セイナさん。」

「こんちは。ハナル、今日は一人で来たん?カガミは?」

「か、カガミさんは、な、何か食べもん買いに、行くって。す、すぐ来るよ。」

キリカはうなずいたが、何かを考えているようだった。不機嫌なのは明らかだ。


次に入ってきたのはアコ。アコはシンプルな服装をしていた。

「みなさん、こんにちは。」

個室の雰囲気がおかしいことに気づき、アコはすぐに何かあったと察した。自分に一番近いハナルのところへ行く。

「何かあったん?みんな。」

「あ、ああ、だ、大丈夫ですよ、ア、アコさん。」

ハナルがそう言っても、母性本能の強いアコを騙せるはずもない。アコはみんなが自分を隠していると知った。

「何かあったらお姉ちゃんに言いなさい。」彼女はハナルに近づき、その優しい雰囲気でハナルの緊張をほぐした。

「みんな……実はずっとあんまり良うなかったんです。あの日、カガミさんとキリカさんが言い合うて、他の人も……ハナルはずっと寝られへんくて、セイナも自分のせいやと思てるみたいで……」

「そうなんか……」アコはハナルを抱きしめ、そのままキリカとセイナのところへ歩いていき、三人をまとめて胸に抱き寄せた。

ハナルとキリカはまだ小柄だからいいが、背の高いセイナは抱きしめるのもひと苦労だ。

「みんな、悲しまんといて。ええか?みんな悪ないって信じとるから……家族なんやろ?喧嘩ばかりせんと、仲直りしようや。お利口さんやで?」

「は、離せ!も、もう息できへん!」キリカはアコの胸に押し付けられて、もがいた。

「はは……ごめんな。でも、みんなバンドメンバーやし。確かにユキさんには問題あるかもしれへんけど、でも……共存できへんほどやないと思うんや。」

「あんたはユキがどれだけたち悪いか知らんからそんなこと言えるんや。としま。バンドメンバーがずっと練習せんと、普段も一言も話さんと、自分から何もせんのに周りに推測させて——そんな奴、我慢できるか?しかも態度悪いし。内気ってレベルちゃうやろ!」

「……うちに免じて、そこまでにしといてくれへん?」

「無理や。今日こそあいつに説明させたる。」

アコは手を引っ込め、唇を噛んでから、黙って横に座った。

隣のセイナは何か言いたそうだったが、やはり勇気が出なかった。


「みんなみんな!美味しいもん買ってきたで!食べながら練習しよ!今日はユキちゃんが休みやから、みんなで食べよな!」

カガミはドアを蹴り開けるように入ってきた。大きな袋いっぱいのスナックを床に置く。

「アコちゃんも来てたんか!一緒に食べや!」

これは……昨夜や今朝のカガミとは全く別人だ。普段のカガミはこんな感じだが、こんなことがあった後でもまだこんなに元気でいられるのは、もしかして——

「ぼんやりしてどないしたん?みんな、早よ食べ。」そう言って、彼女はハナルの好きなゼリーをハナルの手に押し込んだ。

ハナルはそれを受け取り、少しだけ笑った。


その時、ドアが再び開いた。

全員の視線が一斉に向く。

そこに立っていたのは——ユキだった。ギターケースを背負っている。顔色は悪くない。むしろ、いつもより少しだけ青白いように見えるが。

「……ユキちゃん?」カガミが立ち上がった。「体調、もうええん?」

「うん。」ユキはそれだけ言って、いつもの隅の席に向かおうとした。

「待ちなさい。」キリカの声が、冷たく部屋に響いた。

「どしたん?」

「どしたん、やないわ。昨日の話、まだ終わってへん。」

ユキは足を止めたが、振り返らなかった。

「何の話?」

「とぼけんな。なんで昨日、セイナがミスした時にベースでカバーせんかったん?前もってそう決めてたやろ。」

沈黙。ユキはゆっくりと振り返った。その目はキリカをまっすぐに見ていた。

「……別に。カバーしたって、ファンは増えへんし。自分の実力も上がらへん。そんなの時間の無駄やから。」

「はあ?」キリカの眉が吊り上がる。「それがベーシストの言うことか?」

「ベーシストとして、大事なのは自分の技術や。ミスした奴を助ける義理はない。」

「セイナがあんなに困ってたのに!」カガミが叫ぶ。

「困るなら練習すればいいやん。それに——」ユキは淡々と続けた。「ライブの時くらいちゃんとしろよ。ファンはミスなんか見たくないねん。拍手も投げ銭も、上手いからくれるんや。失敗する奴のためにわざわざカバーして、こっちの印象まで下げるわけにはいかへん。」

「お前……!」キリカが前に出ようとした。

「待って。」アコがその腕を掴んだ。

「離して、アコ!」

「一旦落ち着け。」

アコは立ち上がり、ユキの前に歩いていった。

「ユキさん。セイナさんがミスしたのは事実や。でも、あんたが約束を破ったのも事実や。それについて、何か言いたいことないん?」

ユキはアコを見つめた。その目には、苛立ちにも似た感情が浮かんでいた。

「……あんたに言われたくない。あんたが来てから、バンドの雰囲気が変わった。みんな『家族』『家族』って——そんなの、ただの綺麗事やろ。結局、バンドに必要なのは実力とファンの数や。お情けで長続きするもんちゃう。」

「ユキちゃん!」カガミの声が震える。「お前、そんなこと思ってたんか……」

「思うとるよ。最初から。だって現実やん。」ユキはギターケースを床に置いた。「私は辞める。こんなバンド、時間の無駄や。ファンもつかへんし、金にもならん。」

「ユキちゃん——」

「もうええわ。お前らだけで『家族』ごっこしとけ。」

彼女は振り返り、ドアに向かって歩き出した。その時、一瞬だけ立ち止まった。

「……あと、アコ。」

「何?」

「あんたが一番気持ち悪い。『お姉ちゃん』ぶって、みんなに優しくして——本当は自分が一番認められたいだけやろ。バンドのためちゃうくて、自分のためや。」

その言葉は、ナイフのように鋭かった。

アコは何も言えなかった。

ドアが閉まる音が、部屋に響いた。


沈黙。

誰も動けなかった。

カガミはその場に立ち尽くし、ハナルは両手をぎゅっと握りしめ、セイナはうつむいたまま震えていた。キリカは拳を握りしめ、壁を殴りつけたいのをこらえている。

「……アコ?」カガミが気づいた。

アコが——立ったまま、動いていない。目を見開いて、ユキが去ったドアを見つめている。その目は潤んでいるように見えたが、涙は落ちていない。

「アコちゃん、大丈夫?」

「……うち。」アコの声が、かすかに震えた。「うち、何か……間違っとったんかな。」

「そんなことない!」カガミが駆け寄る。「アコちゃんは何も悪ない!あいつが——」

「でも。」アコはゆっくりと首を振った。「あの子が言うたこと、ずっとうちの心の中にあったことやねん。」

「アコちゃん……」

「『お姉ちゃん』ぶって、みんなに優しくして——ほんまは自分が一番認めてほしいだけ。」彼女は笑った。悲しい笑顔だった。「図星や。」

「違う!アコちゃんは——」

「カガミ。」アコはカガミの手をそっと握った。「ありがとう。でも、ちょっとだけ……一人にさせてくれる?」

「……」カガミは何も言えなかった。ただ、うなずくことしかできなかった。

アコはキーボードの前に座った。鍵盤に手を置く。でも、音は出さなかった。

その背中は、誰も声をかけられないほど——小さく見えた。


セイナはこっそりと涙を拭った。

キリカは壁にもたれて、天井を見上げていた。

ハナルはアコの背中を見つめながら、自分の手を握りしめた。

カガミは床に落ちていたスナックの袋を、一つ一つ拾い集めていた。

誰も、何も言えなかった。

でも——誰も、帰ろうとしなかった。

ただ、そこにいた。

アコの隣に。

(From Dandy:

Every time I can't sleep, I think about how to keep their story going so I can fall asleep. So many times I've dreamed of making them the most amazing band. So please follow and subscribe more。This really matters to me.)

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