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第10話 「家族」から

松園。

次の日の朝、なぜかハナルは特に元気だった。昨夜は悪夢を見たはずなのに、今日の数学の授業では眠くなかった。

夢に何を見たかって?

簡単に言うと、昨日のユキの沈黙とキリカの怒りを受けて、二人が大喧嘩して、そのままバンドが解散してしまった夢だ。

ダメダメダメダメ。

そんなこと考えちゃダメだ。夢は逆に見るっていうし、でも……これが本当に怖い。

逆に、隣のカガミは今日はずっとぼんやりしていた。いつもなら退屈な授業でも自分で何かを見つけて遊んでいるのに、今日はただ鉛筆を弄っているだけで、呼んでも返事をしない。


これは全部昨夜のLINEから始まった。

「このままだとセイナちゃんが本当に耐えられへんよ。落ち着いて話そう。」

「でもあいつをこのまま置いたら、絶対いつか問題になると思うねん!もしセイナがベースの助けが必要な時にユキが弾かへんかったら、セイナもっと落ち込むやろ!」

「でもみんなで約束したんやないん?バンドに入ったらみんな家族やって。セイナにはそう言うたのに、ユキには言えへんの?」

「あんたがそう思うなら、うちもそう思う。セイナもそう思う。でもユキはどう思うか聞いたことある?ていうか、ユキはどこから連れてきたんや?」

「ユキちゃんはオレの仲良しの先輩やねん!ユキちゃんにもきっと理由があったんや!」

「……あんたはそう思うんか?」

キリカと一晩中言い合って、今のカガミはめちゃくちゃイライラしている。

「か、カガミさん、だ、大丈夫……?」

「うん。」

ハナルはすぐに口を閉じた。カガミはまるで今にも立ち上がって誰かを殴りつけそうな雰囲気だった。

「き、今日はリハーサルないし……カガミさん、ゆ、ゆっくり休んでね。」

「うん。」


百合泉。

高2一組。

掲示板に貼られた成績表には、相変わらずあの優秀な名前が一番に並んでいた。

岸和田セイナ。

しかし、この名前の持ち主は今、窓の外をぼんやりと見つめながら、自分に問いかけていた。

「百合泉に合格したからには、前の友達とは一切連絡を取らんと、東京大学に合格するために全力を尽くしなさい。わかったな?」

「はい、お母さん。」

「それから、勉強に差し支えるようなことは絶対にするな。一位を譲るんじゃないぞ。家柄のある生徒とだけ付き合いなさい。わかったな?」

「はい、お父さん。」

セイナはそれを守ってきた。ずっとトップだった。最初はトップを取るだけでも精一杯だったが、そのうち74点を取らなければならなくなり、どんどん疲れていった。だからバンドに入りたかった。でも……ギターはセイナには永遠にマスターできないものなのかもしれない。

もしかしたらセイナは諦めたほうがいいのかもしれない。みんなに迷惑をかけない方がいい。


「岸和田さん!誰かがあなたを訪ねてきましたよ。」

「あ、はい、すぐに行きます。」

セイナは気持ちを引き締め、ネクタイを整えてドアへ向かい、自分を探している人が誰なのかを確かめた。

「セイナ!ここやで!」

セイナが振り返ると、壁にもたれかかっている白いツインテールの女の子がいた。

「ああ、キリカさん。どうかされましたか?」

「別に。ちょっとあんたの様子見に来ただけや。元気なさそうやからな。」

「ああ、そうですね。最近ちょっとプレッシャーが大きくて。すみません。」

「何言うてんねん。午後、一緒に遊びに行こ。」

「え?」


和歌山。Vlady。

「太ってないし!むしろ前より痩せたわ!もうこれ以上太ったって言われたら怒るで!」

ヒデミはアイスを嬉しそうに食べながら、Vladyの中に座っていた。ライブ配信を見ていて、隣にはアコが座っていた。

「何か食べたいもんある?あほ、作ったるわ。」

「自分で食べたいもん作ったらええやん。うちには何もあらへん。」

アコはもう私服に着替えていて、ミルクティーを飲んでいた。

「昨日のベースの音……あんたやったらもっと上手くできたんちゃうかなって思うて。」

「何言うとんねん。ようわからん。」

「昨日のベース、ユキさん、なんかバンドに不満あるみたいやった。キリカさんがその時すぐに言い合おうとしてたんを、うちが止めたんや。」

「そのベースかい?」

「うん。覚えとるやろ?」

「あの隅で隠れて何も言わへんやつやろ。見た目からしてあんまり良さそうに見えへんけどな。」

「なんか大きなショックを受けたのかもしれへん……何とかしてあげられへんかな。」

「そんなん気にすることあらへんわ。一日中、あの子たちに貸しがあるみたいやな。あほ。」

「あほはあんたや。」

「前からずっと言うとるやろ。自分にもっと優しくせえや。あの子たちのこと気にせんでええ。」

「そんなこと言われても……彼女たちはうちのことを……まあええわ。とにかく、見て見ぬふりはできへん。」

「好きにしたらええ。でもな——あんまり期待しすぎたらあかんで。」

「……わかっとる。」


同時に、百合泉と松園の放課後がやってきた。


セイナは相変わらず、誰かを待っていた。校門の前で、まるで兵士のように立っている。それがセイナの一番クラシックな立ち姿だ。

「ほら。そんなに固まらんでもええやん。」キリカが突然後ろから現れて、セイナを驚かせた。

「!び、びっくりした……キリカさん。」

「そんなに怖がらんでええやん。行こ。おもろいとこ連れてったる。」

キリカはセイナの腕を引っ張った。まるであの時カガミがハナルを掴んだように。

「普段、こういう寿司屋とか行かへんの?」キリカはセイナを回転寿司屋に連れて行った。

「いいえ。父と母は普段あまり私が何を食べるか気にしないので、たいていラーメンです。」

「敬語なんかやめい。うちは普段こんなもん食べたことないから、一回食いてんねん。家族、みんなあんまり良うないんやろ?」

「そうですね。キリカさんもですよね?」

「うちの母ちゃんがいわゆる『下級』と遊ぶのを許さんから、毎日遊び足らんねん。でもうちは、金ないとか勉強できへんとかいう理由で『下級』って決めつけるのはおかしいと思うとる。やからうちは『下級』って言われる人たちが使うような楽器を触るようになったんや。そうじゃなかったら、今ごろバイオリニストなってたかもしれへんな。」

「でも私の家は……全然開放的じゃないと思います。キリカさんと同じですね。」

「うちはあの人らの意見なんか気にしたことないわ。弾きたいなら弾けばええし。あんたが上手く弾けんからって、うちは嫌ったりせえへんよ。」

「ハナルさんみたいに、もっと楽観的になればいいんちゃう?」

「あんたはもともと悪ないやん。なんでいつも自分を縛らなあかんの?うちは別にめっちゃすごい大学に行きたいわけやないし。自分の好きなことをするのが一番や。やからうちの成績はずっと下の方やねん。知らんかった?」

「本当に羨ましいです……でも、もしギターに時間を使いすぎたら、もしかしたら……」

「大丈夫やて。信じや。あんたはあんたらしくやればええねん。人が思う『セイナ』にならんでええ。早よ食え。」

セイナは笑った。

「ツンデレお嬢さん、どうして私にそんなことを言うんですか?」

「それはな、あんたがバンドに入った時のあの顔を見たからや。青春のためにロックをやるって決めたんやったら、あんたがうつむいてギター弾いとるのを見るのが忍びないねん。バンドのイメージが悪なるし。ロックやったら、楽しまなあかん。家族やったら、温もりを分け合わなあかん。当たり前やろ?」

「……そうですね。ありがとうございます、キリカさん。頑張ります。」

キリカ自身も、なぜこのバンドの愛と絆を守ろうとしているのかわからなかった。

明らかに言ったはずだ——このバンドなんてそんなに気にしてない。ただ金をもらって仕事をしてるだけだって。

「なんでやろ……」そう考えながら、彼女はセイナに手を引かれてラーメン屋へと連れて行かれた。


一方、放課後の松園は違った。

「ユキちゃん!待って!」カガミは半日探し回った末、やっと運動場で学校を出ようとしているユキを見つけた。

「何?」

「昨日、なんかあったん?昨日のユキちゃん、調子悪そうに見えたんやけど。」

「別に。」

「そんなこと言わんといて……何かあったら話して、一緒に解決しようや?」

「大丈夫だって言ってるだろ。」

そう言うと、ユキはカガミが自分の手を掴んでいるのを振り払い、そのまま歩き出した。

カガミはその場に立ち尽くした。

「なんでや……バンドに入ったら家族みたいなもんやって約束したやん!家族がそんな言い方するか?」

自分のスケートボードを手に取り、乗って帰ろうとしたが、やっぱり家には帰れなかった。

家に着いてから、カガミはベッドに寝転がった。

その時、LINEの通知音が鳴った。

「こんばんは。カガミさん、今日は調子どうですか?」アコからのメッセージだった。


(From Dandy:

I've been pretty busy lately. But I'll still make sure to post at least one chapter every day. So please follow and support this author! Love you guys!!)

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