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第12話 守るための選択

夜。


張り詰めた空気のまま、時間だけが過ぎていた。


火の音だけが、静かに響く。


誰も、口を開かない。


——そのとき。


「……来る」


少女が、ふいに呟いた。


「え?」


クレアが顔を上げる。


次の瞬間。


森の奥から、気配が溢れた。


「……っ!」


明らかに、さっきまでとは違う。


重い。


圧倒的な圧。


「囲まれてる」


少女が淡々と言う。


その声に、迷いはない。


「さっきの連中か……!」


歯を食いしばる。


気配は複数。


逃げ場は——ない。


「戦うしかない」


少女が一歩前に出る。


その動きに無駄はなかった。


「クレア、下がってろ」


「嫌」


即答だった。


「戦う」


その目は、もう揺れていなかった。


「でも——」


「足手まといにはならない」


言い切る。


その強さに、言葉を失う。


『いいね』


頭の奥で、声が笑う。


『やる気満々じゃん』


「……黙れ」


小さく吐き捨てる。


そのとき。


木々の間から、影が現れた。


男たち。


さっきの連中だ。


「見つけたぞ」


低い声。


逃げ場は、完全に塞がれている。


「対象を確認」


「周囲ごと制圧する」


淡々とした指示。


迷いがない。


「……来る」


少女が呟く。


次の瞬間。


地面を蹴る音。


一斉に動いた。


「っ!」


クレアが剣を構える。


俺も前に出る。


だが——


速い。


一人が、一瞬で距離を詰めてくる。


「——遅い」


少女の声。


その瞬間。


男の動きが止まる。


「な……っ!?」


見えなかった。


何をしたのか。


ただ。


次の瞬間には、男が地面に倒れていた。


「……強い」


クレアが息を呑む。


少女は、何も言わない。


ただ、淡々と次へ動く。


——別格だ。


だが。


数が多い。


「囲め!」


声が飛ぶ。


一気に包囲される。


「くそ……!」


クレアが応戦する。


だが、押されている。


「っ……!」


一人の攻撃を受け、体勢を崩す。


「クレア!」


駆け寄ろうとする。


だが——


別の男が立ちはだかる。


「どけ!」


剣を振るう。


弾かれる。


強い。


焦りが募る。


そのとき。


クレアの方から、鈍い音が響いた。


「……っ!」


振り向く。


クレアが、膝をついていた。


剣を落としている。


「……やばい」


血の気が引く。


間に合わない。


——その瞬間。


どくん。


胸が、大きく脈打つ。


『ほら』


声が囁く。


『まただよ』


「……っ」


手が、震える。


『使えばいい』


甘い声。


『守りたいんでしょ?』


見る。


クレア。


苦しそうに顔を歪めている。


「……やめろ」


『死ぬよ?』


その一言で。


思考が、止まる。


——選べ。


頭の中で、声が響く。


——守るか。


——守り方を選ぶか。


「……くそっ!!」


踏み込む。


迷いは、消えた。


手を伸ばす。


目の前の男へ。


触れる。


——繋がる。


冷たい。


深い。


でも——止まらない。


「……従え」


低く、呟く。


男の目から、光が消える。


「なっ……!?」


周囲がざわつく。


その隙に。


クレアの元へ駆け寄る。


「大丈夫か!」


「……ごめん」


かすれた声。


「謝るな」


肩を支える。


そのとき。


「無茶をする」


少女が、すぐ横に立っていた。


敵を制圧しながら。


こちらを見ている。


「制御、できていない」


冷静な指摘。


「でも」


ほんのわずかに。


目が細くなる。


「判断は、悪くない」


その言葉に、少しだけ息を呑む。


「……立てるか」


クレアに聞く。


「……うん」


まだ戦える目だった。


「なら——」


そのとき。


背後から、殺気。


振り向く。


一人が、こちらに突っ込んできていた。


間に合わない。


「っ——!」


その瞬間。


クレアが、前に出た。


「——守るって言ったでしょ!」


剣が振り抜かれる。


男を弾き飛ばす。


その姿に。


息を呑む。


——守られている。


「……っ」


胸が、強く締め付けられる。


『いいね』


声が、静かに笑う。


『最高じゃん』


「……黙れ」


低く呟く。


戦いは、まだ終わらない。


でも。


分かっていた。


もう——


後戻りは、できない。


それでも。


俺は。


この選択を、後悔しない。


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