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第1話 無能の俺は、“何か”に選ばれた
「お前は、本当に何もできないな」
その言葉に、もう傷つくことすらなくなっていた。
剣もだめ。魔法もだめ。体力も人並み以下。
この世界で生きていくには、致命的すぎる。
「……分かってるよ」
小さく呟いて、その場を離れる。
反論する意味なんてない。
全部、本当のことだから。
気づけば、足は森へと向かっていた。
理由なんてない。
ただ、ここにいたくなかっただけだ。
木々に囲まれた道を、あてもなく進む。
そして——
足を踏み外した。
「え——」
落ちる。
暗闇に。
気づいたとき、そこは洞窟のような場所だった。
静かすぎる空間。
「……誰かいるのか?」
『いるよ』
背筋が凍る。
声は、外からじゃない。
「……中かよ」
『正解』
楽しそうな声。
逃げられない。
『あげるよ』
「……何を」
『力』
甘い囁き。
拒むべきだと分かっているのに——
「……代償は」
『いらないよ』
嘘だ。
そう思った。
でも。
『変わりたいんでしょ?』
——その一言で、崩れた。
次の瞬間。
胸の奥に“何か”が入り込んできた。
「っ……!!」
逃げられない。
拒めない。
『契約しよう』
その声と同時に。
何かが、完全に“繋がった”。
——俺は。
力を得た。
そう思っていた。




