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犠牲の山

作者: 尾生 礼人
掲載日:2026/02/22

大佐の号令 一下、兵たち は死地へと送り出された。


ろくな支援も 受けられない まま、要塞化された港湾 都市への突撃を強要され、続々と倒れゆく兵たち……。


しかし、大佐は命令を取り下げなかった。

なぜなら──


───


大佐はボンボンであった。


偉かった親が早死に し、お義理でエリート コースに乗せられ、やはり、お義理で現在の地位につけられた。


ある日、大佐は呼び出され、秘密の任務を与えられた。


'亜人 部隊の壊滅' である。


昨今、帝国では、地方 出身の亜人たちが勢力を増していた。


表向き 同じ帝国の同朋とされながらも、かつて侵略され、従属させられた者たち──それが亜人族である。


彼らは、人間族 偏重の帝政下、資源のない辺境で極貧の生活を強いられ、また、蔑視されていた。


かたや、かつての侵略者──人間族は、資源の豊かな中央で富を独占、その子弟らは皆 3Kを嫌がり、お洒落なデスク ワークを好んだ。


高級 官僚も 商会の経営者も、そのほとんどが人間族で、あとを継ぐ者たち も当然 3K職を嫌がり、現場を知らずに その席に収まった。


彼らは3K職を軽視。

給与や待遇を低く抑え、人員を縮小した。

そのため、人間族の若者は3K職に就きたがらなくなった。


──その穴を埋めたのが亜人族である。


彼らは被 差別 階級であり、侮られ、蔑ろにされ、花形 職は無論、就ける職業 自体が限られていたのだ。


そうこう してゆく内、'3K職なら亜人族' と言われるほどに、現場で働く者の大多数を亜人族が占めるように なり、民間でも 軍でも、第一線の現場で働く彼らの意見を無視できなく なっていた。


社会は、デスク ワークが出来る者だけでは──現場で働く人間がいなければ──立ちゆかない。


'このままでは、父祖の築きし、誇り高き人間族の帝国が、卑しき亜人族に 乗っ取られてしまう!'


そう懸念を伝えられた大佐は、たしかに承った。


同じ人間族として共鳴したのも確かだが、これまでの人生 お世話になりっぱなしで断れなかったのだ。

軍──特に現場──は、実力主義。


人種も性別も関係ない。


 3K現場『だけなら』、亜人族に任せてやっても良かったが、このままでは、地縁 血縁 学閥で親から子へ、あるいは先輩から後輩へと、連綿と『受け継いで きた』──もとい、『実力や働き』に関係なく『独占してきた』 大切なポストが危うい。


となれば、答えは一つ──

『排除』である。


( ノД`) 人の心とka……


───


 実際の現場は、学力だけ では どうにも ならない。


 兵の命や勝敗よりも、自分のメンツ──立場や、後ろ楯である 所属 派閥の不沈/権威が傷つかないか? を気に して、マトモに動けない──動かない ような輩は害悪でしか ない。


 ゆえに、エリート層は『代わり が いると』軍 内部での地位が危うい。


 表向きは、人間族『全体の』ため──


 本心では、 '人間族である' と言うだけでエバりくさって『サボってきた』下っ端たち など、どうでも良い。


 むしろ、いい気味でしかない。


 学業に専念させられ 灰色の青春を送ってきた自分たちの横で、ろくに勉強せずに バラ色の青春を送ってきた 憎むべき '低学歴の低能ども' と見下して いるから……。


 つまり、エリート層と その他 大勢は、同床異夢。

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