4巻 1章 6話
火龍族の元格闘技チャンピオンは立ち上がった。赤茶色の肌に角を2本生やし、スノーと同じくらい背が高く、体つきもたくましい。横に居たならず者が腰にぶら下げたホーンを取って吹いた。
ブォーン!
「おい!兄貴がやるぞ!」「オスカーが戦うぞ!」半壊した家々の奥にある森から、複数のならず者達がぞろぞろ出て来た。
「お前らそこで構えてろ。こいつをぶっ倒したら、他のもやっちまえ。」オスカーは立ち上がって軽く腕を伸ばし始めた。
スノーは5人と2匹にハイタッチし、みなはスノーを応援した。
「スノーがんばれ!さっき汲んだ湧水あるからね。」「スノーかませ!」「スノー殿!チェストー!」「スノー!」「スノ〜!」
準備ができたオスカーは両手の平を上に向けて振り、煽った。
ならず者達が武器を片手にオスカーを鼓舞する。「オスカー!」「オスカー!」「兄貴!兄貴!」
2人は構えてゆっくり近づいた。
スノーはオスカーが間合いに入った瞬間、素早くキックした。オスカーはキックをキックで返し、そのまま回し蹴りした。スノーは腕をクロスしてガードした。
ドカッ!ドカ!
オスカーは回し蹴りの勢いのまま、瓦礫の壁を蹴上がり背面飛びしてスノーの首に飛びつき、頭ごと地面に叩きつけた。
ダーン!
「オスカッターでたー!」
「うおー!」
ブォー!
ならず者達は歓声を上げ、ホーンを吹いた。
四つん這いで起き上がるスノー。ギルドのみなも応援した。
「スノーがんばれ!」
「スノー殿、来るぞ!」
オスカーは半壊した壁を駆け上がり、てっぺんから宙返りして膝から体当たりを仕掛けた。
スノーは素早くその場で高く飛び上がり、飛んでくるオスカーを両足で蹴り飛ばした。
ドゴーン!
オスカーはドロップキックをくらい、ふっ飛ばされ壁に激突した。壁は割れて倒れた。
オスカーは瓦礫の中から立ち上がり殴りかかってきた。
スノーはパンチをのけぞって避け、オスカーの腕を逆上がりする様に回転し、オスカーを地面に叩きつけた。スノーはスパニッシュフライを決めた。
ドシーン!
「やった!」
「スパニッシュフライだ!」
「イエ〜!」
ギルドのみな興奮した。
両者声援を受け、オスカーとスノーは四つん這いになり、目が合うと頭同士をぶつけて睨み唸りあった。オスカーの角でスノーは額を切り流血した。
「ガー!」
「うおー!」
押し付け合う頭を振りほどき、タックルをしかけるも両者タックル切りで交わした。お互いパンチやキックを繰り出すも、避けたりガードした。次第にお互いに避けなくなり、パンチとキックの殴打ラッシュになった。
ブォー!「わー!」「行けー!」「きめろー!」
ブオォーー!!
「ギョエ、ギョエーー!!」
空から鳴き声が響いた。
みな驚いて空を見上げると、上空に火竜が旋回している。
「お前がバカみたい角笛を吹きまくるからだよっ!」ゴツン!ならず者は仲間にバットで殴られて気絶した。
オスカーとスノーはタックルし組み合った。スノーは一瞬腰を落とし、オスカーを担ぎ上げた。頭を落としながら回転をかけ、頭から地面に叩きつけた。スノーはストームブレイカーを決めた。
ゴズッ!!
オスカーは仰向けのまま気絶した。スノーも仰向けで息を吐いた。「シーッ!シーッ!」
「スノー!逃げてー!」ギルドのみなは叫び、ゴーストは水を咥えて走った。
「ギョエーー!!」
火竜が急降下で飛びかかり、オスカーを掴み腕をちぎって食べた。スノーは横回転して逃げ、ゴーストと瓦礫の陰に隠れた。
ならず者達がやけくそになって火竜に襲いかかった。火竜は火炎を吐いた。
「ギュエ!」
ゴオオオ!!
「ギャー!」火炙りにされ、逃げ惑うならず者達に火竜は頭を下げて噛みつき攻撃した。
ガブッ!ガブッ!
「ハニ、あれでガードして!」ヴァルは瓦礫の壁を指差し、火竜の後ろに立った。「スピリット!」火竜の目は紫色のグラデーションになり、火炎を吐きながら、ならず者達を襲う。
「タクシス!」黄緑色の光で大きな壁を包み、ハニは両手を持ち上げ、スノーとゴーストの上に壁を斜めに立てかけ守った。
クラウン達はスノーの元へ駆け寄った。身をかがめ、クラウン、ブラスト、虎徹、チョコ、ゴーストはスノーの身体中の傷に湧水をかけた。
ハニとヴァルもスライディングして壁の中に入った。
「ナイスファイト。しばらくこのままやり過ごそう。」ヴァルは回復中のスノーに声をかけた。スノーは笑ってグータッチした。みなもグータッチした。
火竜はならず者達を追い回した。10分程経ち、スノーも無事回復した。火竜は遠くの高い空を旋回している。
クラウンはチョコのイカロスを使った。すべてのマーキングポイントは消えており、ならず者達は全滅した。
みな壁の外に出て、村を見回りながら歩いた。
家の中で殺された村人が数人見つかり、納屋には国軍兵士の死体がたくさん見つかった。
翼のないピギーバット達、村の入り口にいたならず者達も丸こげになっていた。
ハニは村を出るとクエスト報告した。みな修道士の谷へ向かった。
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修道士の谷。
石の噴水広場に大勢集まっていた。バー「土火土火」で会ったドワーフも測量計を持って来ていた。ドワーフは棟梁だった。ローティは改めてギルドに紹介した。
ハニは集まったみなに見える様に、ディスプレイを大きく表示しログを再生して見せた。
ログを見ながら、クラウンとヴァルはひそひそ話し、車で見かけたメスの火竜かチェックした。同一と分かるとメモをした。
スノー、ブラスト、虎徹、犬達は湧水を汲み、喉を潤した。
ログを見終わったローティ達は、村の事もショックだった様だが、元格闘技チャンピオン、オスカーの成れの果てにもショックを受けていた。
ハニはクエスト完了のサインをもらった。ドワーフの棟梁に声をかけられた。「ハニさんよ。今夜バーにまた集まれるか?お礼を渡したいんだ。」ハニは報酬以上はいらないと断ったが、役に立つはずだからと言われ、好意を受ける事にした。
待ち合わせまで、ユナイトパークで時間を潰す事にした。
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ユナイトパーク。
サリーと候補生3人がいた。みなとグータッチした。
候補生がMチップスのコードをかざし音楽をかけた「freedom of speak」が流れた。みな思い思いに滑った。
クラウンはハニに手を引いてもらったり、段差でつまずいて飛んでいったり、転がってばかりいた。
クラウンは上手くいかないイラつきで、乱暴にスケボーを踏み込み転倒した。
ガコッ、ガザッー!
「っつ、いたー。」クラウンは飛んできたスケボーで右目の上を切った。
休憩していた虎徹が、すぐさま駆けつけ「クラウン殿、前髪あげて。」と言い、止血ガーゼで手当する。
スノーは覗きこんで「パックリいったなー。」と言いながら、傷を押さえて閉じた。
虎徹は傷ケアテープを貼った。「よしっ!」
ハニはインラインスケートで駆けつけた。「クラウン、大丈夫ー?」ヴァルも心配して来た。
クラウンは前髪を下ろして、パッパと手で払いながら「全然へーき。」と何事もなかった様にそっけなく言った。
「そ、そう?私達そろそろ行くわね。無茶しちゃダメよ。」ハニはベンチに座ってインラインスケートを脱いだ。
スノーも虎徹も「そうだぞ。」と言いながら、飲みに行く準備を始め、ヴァルも手を振って「ブラストによろしく〜。」と言って出て行った。
クラウンはうつむいて不貞腐れた。ブラストとチョコがスケボーの競争から帰って来て、クラウンの雰囲気を見て、横に座りなぐさめた。
残った2人と1匹は、候補生達の滑りに見入っている。数人の子供達が目の前を通り、会話が聞こえた。
「うーわ。おっさんが来てるよ。」
「え?どこ?あーいた。マフィアみてー。あはは。」
「ヤベー。あ、また転んだ。ふふふ。」
クラウンが振り向くと、隣のコースでミニヤがスケボーの練習をしていた。手をバタバタさせたり、ひどい時は足をかけただけでスケボーが前に進み転んだ。
クラウンとブラストは呆気に取られてじーっと見ていると、サリーが休憩所に来た。クラウンの傷を見て、痛かっただろうのジェスチャーをした。クラウンはうなずいた。
「サリー見て。ミニヤが練習してる。」ブラストが指差した。
「知ってる。みんな不気味がってる。あの転び方、見てらんないよ。はー。あっちのコースで滑んない?」サリーがため息まじりに言った。
クラウンはすねた声で言った。「僕、スケボー向いてない。」
「あー気にしないで。さっき彼女の前でさんざんカッコ悪いトコ見られて落ち込んでるだけだから。」ブラストはすかさずフォローした。
「気持ちわかるよ。彼女いた事ないけど。ははん。」
3人は笑った。
「けどね、クラウン。女の子はひたむきな男に弱いんだ。」そう言ってサリーは隣のコースにいるミニヤにフェンス越しに声をかけた。
「ヘイ、ミニヤさん!バナナ貸して。」サリーはバナナをポケットに入れてコースに向かって歩き始めた。
「やってくれるのかい?本当にいいのかい?ありがとう!頼んだよ!」嬉しそうにミニヤはサリーの後ろを歩く。
クラウン達もその後をついて行った。
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続く。
絵:クサビ




