4巻 1章 4話
赤髪のドワーフの男は息を切らして言った。「ルーペって言ったよなっ?な!」
「さー?聞き間違いじゃない?バナナうまーいって言っただけだよ。行こう。」サリーはそう言って、クラウンとブラストに目配せした。
クラウンは持っていたバナナの皮を隠すと、ドワーフは諦めず、クラウンの手を引いた。「それ見せて!」
クラウンはバナナの皮を取られて固まった。
「あ!」
「はぁ、はぁ、ほーら耳は腐ってなかった。ルーペって書いてるじゃないか〜。どうやって連絡取ってんだ、教えてくれ!」
「さあね。それ気に入ったならあげるよ。行こう。」サリーが歩き出そうとすると、ドワーフは呼び止めた。「待て!待ってくれ。一生のお願いだ。頼む!」
あまりの真剣さに3人は立ち止まった。
一呼吸してサリーは言った。
「あのさ、ルーペの何?ドワーフだから親戚じゃないよね。」
「俺の名前はミニヤだ。ルーペは愛しい恋人、大切な人なんだ。」ミニヤは強面な雰囲気なのに、優しく微笑んだ。
「嘘つけ!ルーペの恋人だって?!そんなネクタイの趣味で?は?」サリーは赤いドラゴンのネクタイを指差しムキになって言った。
「サリー、落ち着け。」ブラストがなだめた。クラウンとチョコはおろおろした。
「どうやって連絡取ったんだ?それだけでも教えてくれ。なんでもする!」ミニヤは最後には地面に膝をつき、手をつき、涙を流して頼んだ。
「これで最大トリック決めなきゃルーペとは話せないんだからな。」サリーはスケボーを見せつけた。
「わかった、ありがとう。まずはそれを買いに行かなきゃな。」ミニヤはポケットにバナナの皮を入れ、立ち上がってとぼとぼ歩き出した。
「あんなマフィアみたいな服着たヤツがルーペの恋人だなんて嘘だろ。」サリーも愚痴りながら逆方向に歩き出す。
それからリトル大阪に帰ると、リムジンが停まっていて、一連の話をしたサリーはローティに叱られた。「ペラペラ喋るな!わかったか?」
「せっかくトリック決めたのにー。チェッ。」サリーは褒められなくて不貞腐れている。
「チェはやめなさい!」
サリーの後ろでクラウンとブラストとチョコは気まずそうに反省した顔で話を聞いた。
サリーは振り返って「また行こうな。」と、ケロっとして言った。
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ホテル「エル・ココ」
ユナイトパークのすぐ近くのホテルのロビーに着いた。白いモサモサのシーズー犬がカウンターに顎を乗せて、うとうとしている。
クラウンとヴァルは犬をなでながら見渡した。「誰もいないね。」クラウンは小声で言った。ヴァルはカウンターのベルを見つけて押した。チーン!
「は、はい〜。エルココにようこそ。どのお部屋にしますか?ふぁー。」シーズー犬が眠たそうに喋った。
「あはっ!ごめんなさい。」「てっきり、、駅長ねこみたいな感じかと、すみませ〜ん。」クラウンに続き、ヴァルもたじろいで謝った。
顔はシーズー犬そっくりだがカウンターの下にスーツを着た胴体もちゃんとあった。混合種族のホテルの支配人は何も気にしておらず、部屋のリストをディスプレイに表示した。
クラウン達は部屋をタッチして選んだ。
廊下を歩いている時、ブラストが思い出して言った。「そーいえば、ここオバケが出るって。」
「やめてよー。」ハニは言った。
「あれ?ハニ怖い?」ブラストはニヤけた。
「怖くないけど、気味が悪いだけ。」ハニは鼻先をツンと上に向けた。
「同じ意味だよね?」ブラストはクラウンに聞いた。
「ほぼ同じ意味だと思う。」クラウンは言った。
「うっさい。」ハニはつっこんだ。
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男性陣は一つの大部屋、ハニは個室をとった。大部屋でみなで食事しながら、今日の出来事を話し合った。
時々、外のユナイトパークから音楽やトリックを決める音、レールを滑る音、笑い声も聞こえる。
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翌朝。
ホテルの廊下。
ハニは寝不足で植物を避けて歩いた。「ブラストが変な事ゆーから、気になってあんまり寝付けなかった。監獄が近いせいか変なうめき声もしたのよ。」
「オレじゃないよ。サリーが教えてくれたんだ。」ブラストは植物の陰からオバケの手をしてハニに見せた。ハニはブラストの手をぺちぺち叩いた。
「拙者はユナイトパークの音で時々目が覚めた。夜中にパーティーくらい騒いでるやつらがいて寝付けなかった。」虎徹も寝不足だ。
食堂に着いた。
クラウンとブラストとスノーは朝からバイキングをモリモリ食べまくった。
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部屋に戻って、みなはギルドスーツに着替えた。チェックアウトを済ませ、ホテルの前で腕のワッペンを合わせて同士撃ちなしの設定にした。
クラウンはチョコのイカロスを使って、拉致された3人の息子達を検索した。
すると今出たばかりのホテルにマーキングポイントが3つ点いた。チョコからプリズムが出ている。
みな目を合わせて驚き、振り返った。「やだ、私の部屋の上の階だったんだ。昨日のうめき声はリアルだったの〜。」ハニは悔しそうに言った。
みなで戻ると「おかえりなさいませ。スンスン。どちらのお部屋に。」支配人は鼻を鳴らした。
「いや宿泊じゃなくて、この部屋の人、捕まえに来ました。」クラウンはマップを見せた。
支配人は部屋のリストを確認した。「ありゃりゃ、やめといた方がいいかもですよ。このお部屋は国軍兵の方が1人で連泊のご予約でしたが、、ありゃ?3人も増えてるじゃないですか。追加の宿泊費もらってません〜。でもでも国軍兵の方には怖くて言えません。どうしましょう。くうん。」支配人は鳴いた。
「攫われた人の安全が最優先なので、関わりたくなければ、このまま通して下さい。」ブラストが言った。
「攫った人達?それは一大事。いつここを通ったのやら。くうん。けど捕まえても差し出す先は国軍側の警察だから、結局皆さんが違法逮捕で捕まりませんか?」
「眠らせて放置しとけばいいんじゃねーか?」スノーが言った。
「そうしよう。目が覚めたら勝手に帰れば良い。」虎徹は賛成した。
「はい。ではフロントはシャッターを閉めさせて頂きます。」
「じゃあ救出に行っこか〜。」ヴァルが支配人に軽く手を挙げた。
「いってらっしゃいませ。」
カコン、カコン、カコン。
支配人はカウンターの防犯柵を下ろして、カウンターの奥の部屋に隠れた。
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エレベーターで上がり、扉が開くと、廊下まで言い争う声が聞こえた。
「もう離してよ!誰にも言わないから!」
「お前達、黙ってバイキング食えって!せっかく好み聞いて持ってきてやったんだぞ!」
「うちの母さんの焼き豚が美味しいって褒めてくれてたじゃないか!なんで近くの村同士で殺し合わなきゃいけないんだ。おかしいよ!」
「だから今日代わりの捕まえたら、離してやるよ。」
「おじさん!頼むよ!国軍なんかやめて一緒に帰ろーよ。」
「逃げられないんだよ!黙って食え!」
「おじさん!頼むよ!」
ヴァルがみなに耳打ちした。
みな小さくうなずいた。
ヴァルはチョコを抱えて部屋をノックした。
覗き穴にチョコの顔を近づけ言った。「ルームサービスです。軍からの差し入れです。」
部屋は静まり返った。沈黙の後、返答が来た。
「、、えー、はい。国軍から差し入れ?ちょっとお待ちを。」数秒して扉が少し開いた。扉の前にゴーストが待ち構え、扉の横にスノーが張り付いて言った。「フリーズ」
国軍兵士の動きがスローモーションになると、スノーと虎徹が縛って捕らえた。
クラウン達も中に入り、3人の息子達の拘束を解いた。3人は傷もなく無事だった。ハニはクエストの報告をした。
ゴーストのパワーは時間切れとなり、縛られた国軍兵士が涙を流し話しだした。「うっ、うう。もう国軍に戻りたくない。戻ったら酷い目に遭う。助けてくれ。」
「おじさんは僕達を逃がそうとしてくれました。」
「宇宙保健所か知らないけど、おじさんは僕たちに乱暴してないよ。見逃してあげて。」子供達は国軍兵士をかばった。
ハニにコールが来た。バーでクエスト依頼した混合種族の女性からだ。「もう見つけてくれたの?ありがとう!お願いして良かった。今、探している所だったから一緒にいるの。ほら。」
動画に切り替わり、3人の母親達は息子達の無事な姿を見て涙した。
「母さん、おじさんわかる?」息子が国軍兵士にディスプレイを向けた。
「あら!え!どうしてこんな事を、、。」母親は口を押さえて絶句した。
「おじさん、僕達を逃してくれようとしてたんだ。」
「いいんだ。息子さん達を攫ってすみませんでした。どこにも逃げる所がなくて国軍に連れて行かれ、攫うか、襲うか、軍に帰るしか、、ひっく。村も乗っ取られて、ひっく。本当は他の村を襲ったりしたくないんだ。うわー。」国軍兵士は大泣きした。
クラウンは大人の男が大泣きしている姿をまた見て胸が苦しくなった。
混合種族の女性が声をかけた。
「もう軍に戻れなくていいなら、子供達と一緒に来て下さい。その時にお話します。」
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続く。
絵:クサビ




