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愛と戦いとせつなさと…  作者: pipingjam
向かうがまま
4/4

4  勇者と魔王、そして最後の想い

魔王城の玉座の間。

黒い闇が天井から垂れ下がり、空間を押し潰すようだった。


オフィリアは剣を握りしめ、深く息を吸う。

手元には、かつての恋人――レオン・アルディウスの剣。


「……これで、最後ね」

小さく呟く声に、緊張が混じる。


その時、背後から響く重い声。

「勇者よ、よく来たな」


魔王が立ち上がる。

黒い鎧が闇と溶け合い、まるで影そのもののように揺れる。

「お前の力を、私に見せてみろ」


オフィリアは剣を構えた。

胸の奥で、レオンの声が響く。

『俺はここでお前を守る――勇者は前に進め』


闇が渦を巻き、襲い来る。

魔王の手が一振りするだけで、床が砕け、柱が倒れる。

しかしオフィリアはひるまない。


「聖剣・勇者の黎明!」


剣に光が集まり、天井を貫くような光の柱が生まれる。

光は闇を裂き、魔王の体を包み込む。


魔王は笑った。

「まだ小さき力……だが、情熱は認める」


闇と光が衝突するその瞬間――

レオンが姿を現す。

仮面も鎧もなく、彼は自らの命を削り、オフィリアを守るために立つ。


「オフィリア――行け!」

レオンの剣が魔王の攻撃を受け止める。

衝撃で地面が揺れ、火花が舞う。


オフィリアは涙をこらえ、光をさらに強くする。

「私は――勇者よ!」

全魔力を解放した聖剣が、魔王に真っ直ぐ突き刺さる。


闇が裂け、魔王は膝をつく。

力尽きた魔王の目に、わずかに理解の光が宿る。

そして崩れ落ちた。


沈黙の中、オフィリアは振り返る。

レオンは床に膝をつき、微笑んでいる。

しかし、その体は赤く染まり、動かない。


「レオン……」

声が震える。涙が頬を伝う。


レオンはかすかに手を伸ばす。

「世界を……守れ……俺の代わりに」

微笑みながら、静かに目を閉じた。


オフィリアはその手を握り、深く頭を下げる。

「ありがとう……愛してる」

涙と光に包まれ、彼の存在を胸に刻む。


月明かりが広間に差し込む。

風が吹き、仄かに星の輝きが見える。

オフィリアは剣を握り直し、歩き出す。

世界は救われた。

だが、心の中に欠けたものがあることを知りながら――。

エピローグ


数年後。

オフィリアは旅をしている。

子供が聞く。


「勇者様、恋人は?」


オフィリアは空を見上げる。

夜空に五つの星――レオンの剣の光を思い出す。


「いたわ……とても強くて、優しい人」

微笑みながら、そっと風に呟く。


勇者は世界を救った。

しかし、彼女の心を救う者は、たった一人――レオン・アルディウスだけだった。


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