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リピート客【ショートショート】

作者: No-Kin

 イタリアン・レストランチェーンを展開するA社に勤める、ぺこり野係長は苦悶していた。

 木間暮きまぐれ課長からこのようなミッションが課せられたためである。

「レストランを訪れた顧客のリピート率が悪い! リピート率を上げる施策を一週間以内に考えてこい! もし失敗したら降格もあるからな!」

 さぁ、大変である。家を購入したばかり。妻も小さな子どももいる。降格、とは、直営レストランの店長に戻ることを意味する。シフト制で休みのない店長に戻るなんてまっぴらごめんなのである。


 どうしたら顧客に再訪してもらえるだろうか。


・ポイント制や会員ランク制度の導入?

・メルマガやLINE、DMの配信?

・SNSの運用?


 だめだ。どこもやっている。誰でも思いつく。

 それに、人手が足りない。

 あの木間暮課長からOKが出るはずがない。


 リピート客とは、企業に対する忠誠心の高い顧客のことである。

 しかし、いちど利用し、また来たい。人間をそう思わせることは至難の業だ。


 また来たい…

 また来たい…

 また…


 ふと思った。


 また来たい、ではなく…

 来ざるを得ない、では???


「そうだ! これだ!」

 デスクを叩くぺこり野氏。課長の元へ


「課長! エステサロンを買収しましょう!」

「なにをいうてるの?」

「いいですか。まず、うちのレストランで、高カロリーメニューをバンバン開発するんです! そして、それを食べてしまった背徳感のある顧客がお支払いの際に、"エステサロンの脂肪吸引初回30%割引券"を渡すんです! そのエステサロンは当社のグループ会社なんです!」

「なるほど… 顧客は外食にお金を使う。そしてそれによって付いてしまう脂肪を消滅させるためにまたお金を使う、というわけやな…」

「そうです、人間とは余計なことにばかりお金を使うんです。高い車、ブランド物、高級観光地。普通の車、ちょうどいいバッグ、熱海あたり、で必要十分なのにです!」

「そういう余計な出費の一連の流れ、まとめて面倒見る、いう施策かぁ… よっしゃやったろ!」


 かくして、A社の業績はうなぎのぼりである。

 これによって昇進したぺこり野は、次はたばこメーカーと禁煙外来医院をセットでM&Aする計画である。

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