表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/6

最終話:思い出せない私に、あなたは今日も優しい

朝が来た。森が、目覚める。


私は机に向かい、また物語を書き始めた。


猫たちが窓辺で日向ぼっこをしている。レオは外で薪を割っている音がする。

平凡で、静かで、満ち足りた時間。


私は思う。


この物語に、誰かの名前を入れたくなる日が来るかもしれない。

そのとき私は、もう少し素直に、自分の気持ちを見つめられている気がする。


“私はまだ、私が誰だったかを思い出していない。

けれど今、ここにあるこの時間を、私は大切に思っている。


そう思える今の私が、きっと私なんだ――”


ペン先から、そんな言葉がするりとこぼれた。


◇ ◇ ◇


レオは、何も語らなかった。


王女だった過去も。戦火の夜も。最後に交わした口づけも。


彼女の瞳が今、穏やかであるならそれでいい。

過去を知らずとも、彼女が笑うこの森の時間が、彼には何より尊かった。


そして今日も彼は、彼女の隣で火を起こし、食事をつくり、何も求めず、ただそばにいる。


彼女が思い出す日は来ないかもしれない。

けれどそれでも、レオは何度でも彼女に恋をするのだ。


この“今”に咲く、静かで温かな恋に。


お読みいただきありがとうございます。よろしければ、感想・いいね・ブクマお願いします。作者の今後の創作の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ