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路地裏の友達

作者: よよ

「おう、ロジ!」

 路地裏のアパート前で、いつものように時間を潰していると、いつもの彼がやってきた。

「にゃ」と、小さく挨拶すると、少し離れてぼくの横に座った。かわいいやつだ。

「なあロジ、もうじき卒業なんだぁ。会えなくなるなぁ」

 いつも挨拶はしてくれるが、話しかけてもあまり反応はしてくれない。側から見たら、猫と話してる変なやつと思われそうだが、ここで人に出くわしたことはない。アパート前なのに人の出入りがなく、1人の時間を過ごすのに気に入っている。

「そろそろバイト行くわ。ロジ、またな」

 寝転んだままで、ちらとこちらを見て、でもすぐ、こてん、と、頭を落とす。

「ふふっ」ぼくはいつも、そういう彼の仕草に癒されている。


「ロジ、今日な、卒業式だったんだ。もう高校卒業しちゃったから、ここにも来なくなるわ」

 ぼくは彼の方を見ずに言う。

「三年間同じクラスだったみたいな感じだよなぁ。いろんな話、したよなぁ」しばらく思い出話に花を咲かせ、彼を見る。しっかりと目が合う。

「じゃあ、ロジ。ありがとうな。元気でな」

 歩く背中に視線を感じる。唇をギュッとして、手に少し力が入るが、振り返らず、ぼくの視線の先には、今日で最後のローファーが右、左と、前に前に動いている。

 路地裏を抜け、見えないところまで来てから、ぼくは振り返り、もう一度、「ありがとう。元気でね」


 新しい街にも少し慣れてきた。知らない街を散策するのがこんなに楽しいとは知らなかった。すでにきっと、地元かと言うくらい近所の路地裏も把握している。どっかに君の姿を捜してるってわけではないけれど、ついつい猫を見かけると、特に三毛猫はじっくり見てしまうし、路地裏に行くと猫はいないかとキョロキョロしてしまう。

 そして、こんなとこにいるはずもないし、来るはずもないかと、自分で自分にツッコミを入れる。

 ぼくは新しい街で新しい生活を送っていて、やりたいこともたくさんある。でも、これから先、何度も何度も彼のことを思い出すだろう。高校時代のことを思い返せば彼がいるし、猫を見かけたら脳裏をよぎる。

 一生涯、忘れることはない、大事な思い出だ。人生は出会いと別れの連続で、その一つひとつがぼくを形作っていくんだなと、見上げた空に、ふと思う。

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