おかしいのはお前だ!
狂った街
ああもうこの街は狂ってる。何もかもがイカれてしまっている。なんでこんなになっているのに俺は今の今まで気づけなかったんだ。どうかしていたんだ。この薬を飲んでからは全てがはっきりと見える。世界の真理。万物の法則。流れ。全てが一つの線となって統一されていく。神経は研ぎ澄まされ、鋭敏に周囲を把握する。その感覚は今まで味わったことのない多幸感を生むと同時に虚無を生み出していく。相反する感情が同時に混在しているのを体内の奥の奥から実感する。
だからわかる。この街は狂っている。おかしいのだ。おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。
「どうしたんだ。こんな夜遅くに」
俺は友人の安否を確認しに友人宅へと突撃した。
「おい大丈夫か!? なんともないか?」
「大丈夫って、何が?」
気づいてないのか? 全くどうかしている。早くなんとかしないと……。
うわあ、なんだ! か、壁に……顔が張り付いているではないか!
「なんだお前!」
その顔はニタっと嗤っていた。
「み、み、見ろよこれ なんなんだよこれは!」
俺は友人を問いただした。
「これって?」
友人は、とぼけたように頭を傾げる。
「顔が、顔があるだろ。見えるだろ!」
「あっはは、ああこれはね――」
なんで笑ってるんだよ。おかしいだろ!
「実はさっき」
「もういい!」
俺は一刻も早くこの場を去らねばならない。ここにいては危険だ。
「あ、ちょっと待っねねぜヴぉむゅ」
友人は何かを言っていた。が。
「ふa ホラk& ÷ま*◆てー¿ トッ♂」
途中から理解できなくなった。
俺は外へと飛び出した。
やはり汚染は進んでいる。
空は緑で、空気はピンク色。建物は歪んで、水色の肌の人間がそこら中を闊歩していた。
「⁂⇒、あ$ ∮!蠔∞▲覡髖∋&⋯?」
『死ンだァ ぽぉカ゛イぃ ・よ゛』
「屬繭懶オ縕磤死ヌゥ鐚愾貳辨偉褻靹」
なんでそんなこと言うんだよ!
『屍ネ! 葬ネ! 斃ネ!』
「◇◆◇◇◆◇。◆◆◇、◇◆◇◆?』
やめてくれ。お願いだ。やめてくれ!
『giAf T nVh+_IXKlp¥.-g<hi s^e,x@」
「⋯⋯・・⋯・・・⋯・・・⋯⋯・」
止めろ! 止メろ! 止メロ! ヤメロ!
ああ、駄目だ。駄目だ駄目だ。
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だぁッ!!!!
おかしい。狂っている。なんで? どうして? 何があった? 何が起きている? わからない。わからないことがわからない。虫が踊っている。頭が割れ、脳が溢れる。大地は叫び、鳥は大雨。悲しみの刃が心を傾け、禁断の果実は砕かれる。
思考がジャックされた!
こ、こ、こいつらを……正しい道へ導かなければ……耐えろ。耐えろ耐えろ! 流されるな。考え続けろ。導け。昨日の明日は今日の今。過去の未来は現在の窓。真理の森は、仮想の支配。全てを解決する方法。それは現世からの脱却。すなわちこれ【死】
自らの心臓に刃を突きつけろ!
さあ、今すぐに!
逝けぇッ!
うううわああああぁぁああぁああぁあああああああああああぁああああぁぁああぁああぁあああああああああああぁぁああああああああああああぁああああぁああああぁぁああぁああぁあああああああああああぁぁああああああああああぁぁああぁああぁあああああああああぁぁああぁああぁあああああああああああぁぁああああああああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁああああああぁぁああああああああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁあああああああああぁぁああぁああぁあああああああああああぁぁああああああああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁああぁああぁあああああああああああぁぁああああああああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁああああああぁぁああああああああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁまああああああああぁあぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァ……………
壁の顔は、溢した珈琲の染み。