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頭の中の胡桃を取り出してバターを作ります。まずは材料です。狂気1g。暇な時間10㎏。  作者: 絢郷水沙


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添い寝相手

 旅館の受付にて。


「あのー、すいません」

「…………」

「あのぉ! おじいさん耳が遠いんですか! 受け付けしてほしいんですけど!」

「ああ、はいはい、すいません。目も悪くて、耳も遠いもので。いかがなさいましたか」

「ああ、ちょっと急なんだけどね、今から泊まるのって可能かな? 人数は一人で、とりあえず一泊したいんだ」

「ええ、確認しますので、少々お待ちください」

「…………」

「ああ、18時にチェックアウトされるお客様がおりますので、その部屋でよろしければご用意できますが」

「いまは17時半か……。どれくらい時間がかかる」

「チェックアウトによりますが、三十分ほど待っていただければご用意できるかと」

「てことはあと1時間くらいか。わかった、待つよ。それで、料金はいくらかな」

「はい。一泊の基本料金は3000円になります。ですが、いくつかオプションを付けることもできます。どうされますか?」

「なに、オプションって?」

「ご夕食をご用意したりだとか」

「ああ、いい。いらない。買ってきたから」

「あとはそう、添い寝相手をご所望なら手配いたしますが」

「ん? 添い寝相手?」

「はい。一緒に寝る相手です」

「えーっと、なんだ。寝るってその、エッチ的な意味の……?」

「それはご想像にお任せしております」

「否定はしないのか。てことは……」


 ごくり。


「ちなみにその相手は選べたりするのか? たとえば若い女の子とか。もちろん参考までに聞くだけだけどな。あくまでね」

「事前に条件をお伝えしていただければ、可能な限り善処いたします」

「なるほど。じゃあこれもちなみになんだけど、そのオプションっていくらくらいするのかな」

「はい。一晩1万円となります」

「1万か、ちと高いな……。いやでも一般的な値段と比べれば安い気も……」

「なにをぶつぶつとおっしゃっているのですか? すいません、なにぶん耳が遠いもので……」

「よし決めた。おい、じいさん!」

「はい。なんでしょうか」

「オプションのことなんだが、いやあ、まあ、実はその、いま一人旅をしてるんだけど、話し相手がいなくて寂しかったんだよな」

「……」

「うん。それで誰かと話しができたらいいなあとちょうど思っていたところなんだ。んーだから、まあ、添い寝の方はあんまり興味はないんだけど、ちょっとだけそのオプションとやらを頼もうかなぁ、なんて思ったりして……」

「ええ、かしこまりました。では改めて、こちらの用紙にお名前など必要事項を記入していただき、オプションの条件につきましてもお書きください」

「わかった。…………よし、書けた。はい、これでいいか」

「ありがとうございます。ええっと……オプションのご予約は23時ですね。かしこまりました。では、いましばらくお待ちくださいませ」


 約一時間後──。


「大変お待たせいたしました。お部屋のご用意ができましたので、ご案内いたします」


 移動。そして到着。


「こちらのお部屋でございます。何かありましたらいつでも受付までお越しくださいませ。それからオプションに関してですが、予約時刻に添い寝相手をお連れ致しますので、部屋の灯りを消して布団にお入りになってお待ちいただくよう、よろしくお願い申し上げます。それではごゆるりとお過ごしくださいませ──」


 それから翌日。


「よ、じいさん! おはよう! いやあ昨日は楽しませてもらったよ。あははは。あれだよあれ、オプション。暗くてよくわからなかったけどあれはよかった。テクがね。今日も泊まるからよろしく頼むよ。うん。ただいくつか文句を言わせてもらうと、まず部屋が汚いね。ちゃんと掃除してるのか? ゴキブリの死骸を見つけたから昨日の22時くらいに受付に行ったら、誰もいなかったぞ。何かあったらいつでも受付に来いって言ってたから行ったのに、誰もいねえってどうなってんだよ」

「それは、大変、申し訳ございませんでした。なにぶん私と妻だけの老夫婦経営ですので、管理が行き届かないところも多くございまして。昨日の22時ごろですと、他のお客様のオプション対応の時間でしたので、妻を部屋に送っているところでした」

「妻? オプション対応? え? ちょっと待って。さっき老夫婦って言ってたよな。てことは、その……」

「はい。妻の房江ふさえは今年で九十二になります」


 ババアァァァッッッ!!!


「お客様。いきなりなにをそんなに大声で……」

「叫ぶに決まってるだろ! じゃあなにか、昨日の俺の添い寝の相手ってのはその……」

「それに関しては、大変申し訳ございませんでした。なにぶん私と妻だけの老夫婦経営ですので、可能な限り善処したのですが、条件を一つしか守ることができず……」

「守るも何もあるか! 俺が付けた条件は若い女だっただろ! それがババアだなんてッ……! くっ……! 合ってるのは性別だけじゃねえか!!」

「それが大変申し上げにくいのですが、条件を満たしたのはそちらではございません」

「え? ……。おいおい、まさか──!!」

「さきほども申したように、妻は他のお客様の対応をしておりまして……。お客様のお相手は、不肖ながら九十の私めが務めさせていただきました」


 ジジイィィィッッッ!!!

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