Aがヘルメットをしない理由。
A「ねえ、Jおじさん」
J「どうしたんだい、Aパンマン」
A「ボクにヘルメットを作ってくれませんか。実はその、考えてみたんです。そう、考えてみれば単純なことだったんです。ヘルメットさえあれば水に濡れることもなく、バイ菌で汚されることもありません。Virusマンの攻撃に耐えられます。ですからどうかお願いします。ヘルメットを作ってください!」
J「えー。バイ菌対策ならもう防腐剤が入ってるから大丈夫だよ」
A「バイ菌はそれでよくても水はどうするんですか……って、え、ボクって防腐剤入ってるんですか!?」
J「うん。生まれた時からね」
A「なんかショックです」
J「まあ、そういうことだから」
A「ちょっと、そういうことじゃないですって。なんでそんなに嫌そうなんですか?」
J「だって……そりゃあ、ヘルメットがあれば顔が濡れなくて済むよ。それは百も承知だよ」
A「じゃあ、なんで作ってくれないんですか! Aパンマン号だって作っちゃうJおじさんなら簡単に作れますよね!?」
J「技術的な問題じゃないよ。もっと単純なことなんだ」
A「なんですか、その単純な問題って」
J「それは、うん……、まあ……」
A「ああ、もういいです! わかりました! ボクが困る姿を見て楽しんでいたんでしょう!」
J「そんなことはないよ。ただ」
A「もういいです! ボク、パトロールに行ってきます!」
J「ああ、ちょっと!」
~パトロール中~
A(まったく、Jおじさんってば分からず屋。本当はボクのことが嫌いなんだ。だからあんな意地悪をしているんだ。もう知らない……。
うーん……。
でもどうにかしてヘルメットを手に入れたいな。なんとか方法は……って、あれ? 待てよ……。
あ、そうだ思い出した! たしかいつだったかの劇場版でガラスのヘルメットを使ったんだったんだ。なんで今まで忘れていたんだろう。まあ、そんなことはどうでもいいや。肝心なのはどこにあるのか。あるとすれば工場裏の倉庫だけど……。
ああ、あったぞ。よし、これをつけていけばVirusマンの攻撃なんてへっちゃらだ!)
~パトロール再開~
V「はっひふっへほ~」
K「助けてぇ、Aパンムァーン」
A「あ! やめるんだ、Virusマン!」
V「来たな、Aパンマン! くらえ水鉄砲!」
A「ふん! ヘルメットがあるからもう効かないよ!」
V「そうか、ならばこれでどうだ!」
A「うわあ!」
このときVは非情にもAの頭部ではなく、胴体を攻撃した。その攻撃は慢心していたAの隙を見事に突き、致命的なダメージを負わせることに成功した。
数百メートル吹き飛ばされたAは、木々をなぎ倒し、地面をえぐり、最終的に巨木へとその体を打ち付ける。
薄れゆく意識の中でAは気づいた。なぜJがヘルメットを作らなかったのか。それはAの頭部が替えの利く部分だったからだ。その頭部は、たとえ濡れようが、千切れようが、汚れようが、食われようが――新しく作ったものと取り換えて、蘇らせることができる。
Jの戦略は、「あえてリカバリー可能な弱点を晒すことで、そこに攻撃を集中させ、その他の替えの利かない部分への被害を抑えること」であった。
A(あばら骨は折れ、内蔵は破裂か……。ああ、しくじったなぁ……。おそらくボクは過去に何度も同じお願いした。その度にJおじさんは説明してくれた。何回も、何回も。説明することに疲れたのだろう。ボクは頭が新しくなるたびに、記憶の一部が欠落していく。そのせいで、何度も……なん……ど……も……。……。)
◆
~翌日~
J「やあ、Kバオ君」
K「あ、Jおじさん! どうかしたの?」
J「うん。新作のパンができたから、君に食べてもらいたくて」
K「ええ、本当!? うれしいなあ」
J「これがそのパンだよ」
K「うわいありがとう! いっただきまーす!」
J「お味はどうかな」
K「うん美味しいよ!」
J「……」
K「やっぱりJおじさんがつくるパンは美味しいなあ……でもあれ、なんかお腹の中がむずむずしてきたぞ」
J「さっそく受肉が始まったようだね」
K「ん? ジュニクって何? ……ん!? なんか変だ。体がなんか、おかしくなっていく!?」
J「大丈夫。もう少しだから。心配しなくてもいいんだよ」
K「んあ! ああ! ぐあああ! ぼ……! ぼくあ……、あ……」
J「実に見事だ……」
K「ボク、Aパンマン! ……って、あれ? ボクはどうしてこんなところにいるんだろう」
J「ほら、帰るよAパンマン」
A「ああ、Jおじさん。ボクは今なにを……」
J「なんでもいいじゃないか。さあ、帰るよ」
A「はい!」




