ぶつかりおじさん×ぶつかりおじさん
駅員A「うわああぁ!!」
駅員B「どうした新人」
駅員A「落ちてます……。腕が二本落ちてるんです!」
駅員B「ああ、これは争った跡だな。よくあることだ」
駅員A「よくあることって、どういうことですか?」
駅員B「新人は知らないだろうが、こういうのがよく落ちてるんだよ。肩から先の腕が捥げて落ちていること」
駅員A「捥げる?」
駅員B「ぶつかりおじさんって駅によくいるだろ」
駅員A「いますね。わたしも何回かやられたことあります」
駅員B「そう。大抵はぶつかりおじさんが勝つ。そういったときは相手が転ばされて終わることが多い。でもたまに、ぶつかりおじさん同士でぶつかることがある。そういったとき、どうなるかわかるか?」
駅員A「さあ……」
駅員B「肩のぶつけ合いだ。力に歴然の差があればいい。しかし、力が拮抗した場合は──」
駅員A「両者とも腕がもげてしまうんですね」
駅員B「そういうことだ。それを我々駅員が速やかに回収する。その場で死ぬ場合もあるが、ぶつかりおじさんは基本的に生命力が強い。翌日には片腕を失った状態でまた駅に現れる──が、たいていの場合はすぐに自殺してしまう。なぜだかわかるか?」
駅員A「さあ」
駅員B「肩を失ってはもう『ぶつかり』ができないからだ」
駅員A「なんだか可哀そうな生き物ですね」
駅員B「ぶつかりおじさんは決して自分の道を譲らない」
駅員A「そこだけ聞くと、なんか立派な名言みたいですね」
駅員B「いいや立派なものか。あれはただの、肩をぶつけ合う『堅物』だよ」




