お前ってやつは
「うぅ……健さん……。そんな……、こんな俺なんかを庇ったばっかりに撃たれて……」
「泣くなよ、正人。いいんだ。刑事として生きてりゃ、こうなる覚悟もしていたさ。でもよかった、お前に怪我がなくて……」
「もうあんまり喋んないでください! 腹の傷に響きます。
ああ、もう、ちくしょう! まさかこんな山奥でヤクザと銃撃戦になるなんて!
俺一人で助けを呼びに行くか? いや、健さんを一人にしてはおけない。でもかといって連れて行ってたら時間がかかりすぎる。やはりここは、俺一人で先に下山して……」
「しなくていいよ、正人」
「でも健さん!」
「それより煙草を一本くれないか。せめて死ぬ前にさ、あいつを味わっておきたいんだ」
「死ぬ前とか、そんな、ダメに決まってるじゃないですか!」
「いいんだ。どっちみちもう……」
「じゃなくて」
「え?」
「知ってますか? 煙草って、肺ガンのリスクを高めるんですよ。それだけじゃなく、動脈硬化に心筋梗塞、脳卒中。あらゆる病気を引き起こす原因になるんです。危ないんですよ」
「あの、俺もう直ぐ死ぬんだけど……」
「それに副流煙の方が有害物質の量が多いんです。俺、嫌いなんすよね。煙草の煙」
「でも……最後くらい……」
「あと一応いまも仕事中ですし、仕事中に吸うのってどうかと思いますよ。そういう煙草休憩は許されるみたいな風潮も大っ嫌いなんすよね。あとなんか、煙草吸ってる俺カッコいいみたいなあの感じが、どうも薄ら寒くて。なんなんすかねあれ。ただのニコチン中毒者がブツをキメてるだけじゃないですか。あれが良くて、麻薬がダメっておかしいでしょ。健さんもそう思いません?」
「吸わして……。おねが……い……」
「煙草って害しかないじゃないですか。メリットあります? お金の無駄だし、味覚はおかしくなるし、禁断症状出るし、いいことなんか一つもありませんよ。てか、煙草とコーヒー一緒にする人の口ってマジで臭いっすよね。あれすごいっすよ、マジでウンコみたいな臭いで」
「あ…………」
「なんなんすかね、あれ。マジ公害ですよ。なまじ歴史が長いから許されてますけど、普通に現代で流行り出したらすぐに違法っすよね」
「……………………」
「そう思いませんか、健さん。
って、あれ? ……健さん?
健さぁぁん!?
健さぁぁん!! うわあああん! 健さんが死んだぁぁあぁあぁぁっっ!!!」
た、ばこ……。
「うわっ、健さん!」
「マ……マジでもう死ぬから……。マジで一本だけ煙草吸わせて……」
「いやいや健さん。今の話聞いてました? 俺が煙草持ってるわけないじゃないですか。ちょ、勘弁してくださいよ〜」
「……このクソやろうが」
ガクッ――。
「え? そんな……。健さあぁぁあぁぁーーん!!!」




