これがわが社の日常
「ちょっとだれー。朱肉のケースからスポンジ取って、輪切りトマトに入れ替えたひとー」
「あ、それ私です。すみません。インクが切れてて、色が似ているから大丈夫だと思ったんですけど。駄目でした?」
「バッカじゃないの。駄目に決まってるでしょ。あなたが入れたのは日本産。イタリア産のトマトにしないと」
「い、今すぐパスポートとってきます! 旅費は経費で!」
「ちょっとちょっと、何ちゃっかり旅行しようとしてんのよ」
「すみません。じゃあ私を殴ってください」
「そうね。そうすれば鼻血が出て、インクの代わりになりますわねって、バカ! ここにあるのはトマト。スポンジじゃなきゃ血が吸えないでしょ」
「活きのいいノリツッコミお見事です。ではトマトの代わりに、腹の肉を詰めるでもいいですか?」
「指を詰めるみたいな落とし前! バッカじゃないの。……といいたいところだけど、仕方ないわねー。あなたがやるってんなら止めないわ。でも、それはもう、朱肉じゃなくて血肉ね」
「ですね。では、服をめくって腹を出してください」
「私の肉!?」
「そうです。皮肉なものですね」
はい、えー、今見てもらった映像が、わが社日常的に見られる社内風景です。何か質問がある人は挙手してください。なければこのまま就職説明会は終わりにさせていただくのですが。
「はい」
はいじゃあ、そこのデブ。
「本当にこんな頭のおかしい会話が日常的に起きているんですか?」
はい、えー、就活に関係ない質問はお控えください。そうやって変人アピールしても採用されませんよ。では、他に質問ある人は。
「はい」
はいじゃあ、そこのガリガリ。
「結局、トマトはどうなったんですか?」
素晴らしい質問ですね。トマトはプランターに植えて育てました。スーパーで『朱肉トマト』という商品名で売られているものをご存じありませんか? あれは、このときの輪切りトマトの子供たちなのです。
「あ、知ってます。うちの母親が、『ウンコ食った方がまし』って貶してました。ところで輪切りトマトは乳首にぶら下げて、ビッグ乳輪にしたほうがよかったと思うのですが、その点はどうお考えでしょうか?」
なんと、素晴らしい発想! その考えは思いつきませんでした。たしかにビッグ乳輪なら日本産の特徴を存分に生かせます。あの、ぜひわが社に入社してはもらえないでしょうか!
「大変申し訳ありませんが、こんなに頭のおかしな会社には就職するのはちょっと……」
そうですか……。残念でなりません。では、来世の入社を心からお待ちしております。ではこれにて、就職説明会は終わりにします。みなさん、夜道には気をつけてお帰り下さい。