ソーセージ焼いた
「熱いな」
「そうですね、暑くて熱いですね」
なにを好き好んで七つ上の先輩の部屋で、こんなくそ暑い日に二人きりになって鉄板でソーセージを焼かにゃならんのだ。
「あの……先輩。クーラーをつけてはもら──」
「なあ、諸本よ」
「なんですか」
「俺は今ソーセージを焼いている」
「……はい」
「見ていて思ったんだ。このソーセージはなぜ拷問を受けている」
「……」
「熱々の鉄板の上に寝かされて、脂が溶けて汗みたいだ」
「そうっすね。汗かいてますね」
「違う! これは涙だ。泣いているんだよ諸本よ」
「はあ……」
「聞こえるか、この音が」
「ジリジリと焼ける音がします」
「そうだよ。これはソーセージの呻き声なんだ。わかるかね諸本くん」
「わかりません」
「ばらばらに切り刻まれて腸の中に詰められて、こんなクソ暑い日に鉄板の上で死体が焼かれる。なんなんだこの拷問は! そう思わんかね、諸々くん」
「もろもとです。暑い日にって言いますが涼しくすればいいじゃないですか。クーラーのリモコンは──」
「なあ、ぼろぼろくん」
「もろもとです。話を逸らさないでください」
「ほれ、もういいだろう。一本食べてみなさい」
先輩が一本を箸に差して、こちらに向けてくる。俺は言われるがままに口にする。
「うまあああーーーーーい!!!!」
「だろうっ!」
「うっま、なにこれ。うますぎんだろおい、どうなってんだよこれ。うますぎて俺の頭はどうかしちまったみたいだ。こいつはやばいぜ、ぶっ飛ぶぜ。たとえるなら、真夏のナイアガラだ。口の中が溶けだした肉汁で大洪水だ。おいおい救命ボートはまだか、おぼれ死ぬぜ。こいつは放っておけないぜ。おいマイケル、ビール持ってこい」
「誰がマイケルだ。先輩だぞ」
「うっせぇなあ、だーれがお前のこと先輩だと敬うんだバーカ。禿げろ!」




