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アンデッドヒーロー  作者: 白鴉
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ゼクト再び

 なんだ?真っ暗だ。あぁ、そうか。


 真っ暗闇の中目が覚める。僕は死んだのか…。ってことはここは死後の世界?


 両側から順々に火が灯されていき周囲を明るくする灯篭。そして神殿のような景観が眼前に広がっていく。あれ?この光景、なんか見覚えが…。


「我は命の裁定官ゼクト。貴様っ…、貴様っ!」


 この人も見覚えがある。あぁ、これ夢に見たやつだ。あの夢で言ってたっけ…、ここは死んだらここに来るって。


「そうじゃ!普通はな!」


 普通は?どういうこと?


「貴様はな!死んだわけではない!今回は儂が呼んだんじゃ!」


 目の前のゼクトさんはプンスカ怒っている。あの夢でもそうだったけど、とりあえず怒られるところから始まるのかな?


「全く…。死なないように転生させたにも関わらず、僅か十年で死にそうになるとは…。はぁ…。」


 えっ、あの夢って僕のこと?


「まぁ、普通は転生すると記憶を失うからのぉ…。そうじゃ、貴様が見た夢、あれは貴様の転生前の記憶じゃ。貴様に認識させようと夢に見せたりしてみたが、まさかこんなに早く死にそうになるとは…。全くの想定外じゃ!」


 そんなこと言われてもなぁ…。僕だってあんな目に遭いたくてあったわけじゃないのに…。


「もうこの際じゃ!貴様に力の使い方だけは教えておく!」


 力の使い方?


「そうじゃ!貴様が持っている力、リバースについてじゃ!」


 あぁ、最後に言わされたっけ…。


「良いか!リバースは貴様が受けた攻撃をお返しする力じゃ!それはどうやっても防ぐことはできん。大変な力じゃ!」


 でも、そのために毎回死ぬ寸前にならないといけないっていうこと?


「確かに死ぬ寸前だと自動的に発動するようになっておる!しかし貴様が強く念じることでも発動できる!」


 あぁ、それで意識を失う前にリバースと言えと。


「そうじゃ!貴様はあいつらを殺したいとは思っておらんかったようじゃしの!リバースはこれから先、貴様が様々な鍛錬をしその身を強くすれば念じて発動した場合のその効果は更に強いものとなる!だから、死ぬまで精進し続けるがよい!さすれば、どんな困難も最後に乗り切れるはずじゃ!」


 なるほど…。だけど、なんでそんな痛い思いをするような力を授けてくれたんだろう?


「全く、覚えてないのは無理はないが…。転生前のそれまでの記憶が戻ればきっとわかる!今回リバースの使い方を覚えることで、また危険な状態に瀕した時少しずつ記憶が戻る!恐らく!いや、多分…。」


 そこは不確かなんだ…。ゼクトの不明確な返答に苦笑いをしてしまう。


「とりあえずじゃ!危ない時はリバース!どうしようもない時はリバースじゃ!儂も今まで数多く転生前の記憶を思い出させるようなことはしたことがあったが、儂自ら死ぬ前に呼んで力の使い方を教えるなんてしたことはないから結果はわからん!それでもリバースだけは覚えておくんじゃ!」


 あ、やっぱり夢に見た通り適当だなぁ。


「うるさいっ!ほれ、また戻すぞ!」


 ゼクトがそう言うと目の前が真っ暗になり僕はまた記憶を失った。


 ………。


「う、うん?」


 首元で何かプニプニしたものが動いている。目を覚ますと道端だった。首元でスライムが身を寄せてくっついていた。何だか心配しているようで愛らしいスライムを両手で持ち上げる。


「ハハ、くすぐったいよスライムゥ…。というか、お前無事だったんだね…。」


 自分の言葉にハッとして慌てて身を起こした。


 そうだ、街へと戻る途中で野盗に襲われて死にかけたんだった!


 不思議とあれだけ暴行を受けていたにも関わらずどこも痛くも無いし、怪我した痕跡も無いことに気付く。


 あれほど怪我をしていたはずなのに…。あっ、あいつらは…!


 辺りを見ると、先程襲ってきた三人が地面に倒れている。全員、ひどい大怪我をして気絶しているようだった。僕はその場から今のうちに逃げないといけないと思い、三人の近くに落ちてあった剣や自分の荷物を確認してその場を急いで後にした。


 なにがどうなったんだ…。


 思い出そうにもあの三人が倒れていた理由がさっぱりわからない。僕の服はところどころ破れたり間違いなく暴行は受けたはずなんだ。だけど、体はどこも痛くも無いし何ともない。それにスライムも蹴られたはずだけど、何事もなさそうに僕と同じ速度で動いてる。


 一つの考えが頭をよぎる。


「そうか、お前が僕を助けてくれたんだね。ありがとう。」


 一緒に進むスライムを見て僕はお礼を言った。そう、蹴られたスライムが無事で僕を助けてくれたんだと思ったんだ。そうでもないと気絶したのに相手が倒れているなんて考えられないし。僕は命の恩人のこのスライムを家に住ませてもらうようお願いする決意をした。


「さ、早く父さんの所にムスタさんのお手紙渡しに帰らなきゃ!」


 そう言って更に速度を上げて街へと向かった。そんな僕の頭の中には不思議な言葉がずっと残っていた。


「危ない時はリバース!どうしようもない時はリバースじゃ!」

お読み頂き感謝致します!

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