惨状①
ライダーさんがナリアさんと野盗討伐に出た日、僕は鍛錬室で剣を振り、シュクバルは鍛錬室をプニプニと動き回っていた。ライダーさんたちが向かってくれたなら野盗討伐は心配ないだろう。
シュクバルは元気にプニプニしている。何とも愛らしくて心が癒される。懐いてくれて良かったなと心から思う。だってこんなに可愛いんだもん。
ライダーさんは漆黒の冒険者と呼ばれるブラックプレート所持者の冒険者だって聞いて、剣を振る手にも力が入る。だって普通に考えたらそんな凄い人がここに来て自分のトレーニングをしながら僕の相手もしてくれてたなんてありえないことだから。それを無駄にしないためにもライダーさんの言葉や動きを思い出して剣を振る。
そんな時だった。鍛冶場の方から激しい爆発音がして、鍛錬室にも悲鳴が聞こえた。
何だ!?何があったんだ!?
シュクバルは先程までの愛らしい動きを止め警戒するように悲鳴が聞こえた鍛冶場に繋がる扉の前で動きを止めている。
「シュ、シュクバル…。」
僕は不安になり扉に近づきシュクバルを一度ギュッと抱き締めた。鍛冶場から怒声と悲鳴が聞こえてくる。
「全員殺しちまえっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
怖い、怖いよ…。どうしたらいいんだ。恐怖で体が震えてしまう。
「おい、そこら辺の扉の中もしっかり調べとけ!誰も生かしておくわけにいかねぇからな!」
まずい、こっちに向かってくる…!
鍛錬室の扉が激しくぶち破られた。そこからガラの悪い男が現れた。
「おい!ガキがいるぞっ!」
ガラの悪い男が鍛冶場へと聞こえるように大きな声を出した。
この前会った野盗と同じ感じがする。この人は絶対悪い人だ。僕の直感がそう告げた。するとシュクバルは僕の胸から飛び降りその男に向けて何かを打ち出した。
「ぐあっ!」
シュクバルから放たれた何かはその男の胸を貫いた。貫かれた男は大量の血を流し動かなくなっていた。
恐る恐る動かなくなった男に近づくとそこには尖った鉱石のようなものが落ちていた。まるで研がれた短剣の様に鋭い鉱石だった。
え?これをシュクバルは撃ったってこと?今までそんな攻撃する様子なんて無かったし、スライムが鉱石を放って攻撃するなど聞いたことが無い。
そんな時、僕の頭の中に廃棄する鉱石の欠片を食べさせた記憶が蘇った。
「シュクバル、君は食べたものを自分のものにできるのかい?」
シュクバルはまるで頷くかのようにプニプニした。その様子から僕はシュクバルが速く動ける理由もわかった。ワイルドドッグを食べさせたからだと。
目の前の恐怖は去ったが鍛冶場の様子が気になるしこのままここで怯えているわけにはいかない。剣を持ち、僕は扉の外へ向かう決意をした。
「シュクバル、行くよ。」
異変に気付いたガラの悪い奴らが迫ってきたがシュクバルが鉱石でそいつらの体を貫いていく。シュクバル、なんでそんな確実に心臓を貫けるんだ…。
シュクバルの攻撃の正確さに恐怖を覚えたが、今はそんなことを言っていられない。父さん、兄さん、皆は大丈夫なのか?
鍛冶場の様子が僕の目の前に広がる。辺りは破壊され、燃え盛る火炎に包まれた中、数多くの職人たちが倒れている。
「父さんっ!兄さんっ!」
そこには動かなくなった父さんと兄さんの姿があった。
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