これからよろしくお願いします(by女性陣)
「わたしは椚のどかです。35才。アパレル店のスタッフでした。能力は『武器と防具の衣料品店』です。普通の服もあるので、安心してください」
「良かった。戦わないでいいって言われても、武器とか防具は必要ですよね」
「うんうん、それに洋服も破れたり汚れたりしたら困るし。あ、下着とかはどうなってますか?」
「それも大丈夫です。日本のブランドでサイズも揃ってるみたいです」
「良かった〜〜」
椚さんから笑顔を向けられて安心したように笑ったのは胸の大きな、全体的にふっくらした女性だ。
とても立派なものをお持ちなので、羨ましいのだがきっと苦労もあるのだろう。
「じゃあ次はわたしですね」
その女性が安心した勢いで笑顔のままそう言った。
「春山詩織、36才です。ドラッグストアで働いてました。能力は『ドラッグストア』、そのまんまです!」
見た目そのままにふわふわした柔らかい印象の人である。
「お薬があると色々安心しますね」
にこにこと早川さんが言う。どこか疲れた様子の拭えない優しい表情に涙が滲んできた。
次はわたしの番だ、泣いている場合じゃない。
「小野田雪見、33才です。不動産会社の受付で派遣をしてました。能力は『建物設置』です。この家は、わたしが設置したわけではないのですが……」
「全員を同時に転移させるさい、あなたの能力を使って安全な場所を用意したと聞いています」
「そうなんですね。確かにこの建物は壊される事はないようです。安全ですね」
「出したり引っ込めたりは自由にできるんですか? それによって移動もどうするか変わってくると思うんですが」
「問題ないようです。出し入れは自在みたいですね」
全員が口々にお礼を言いながら質問してくる。
わたしは少し申し訳ないような気分になった。
そしていよいよ最後の1人である。
「最後はわたし、ですね」
黒髪ロングの同人誌女性が静かに前を向く。腐女子なのか、普通のオタクなのか気になるところ。
「来見田朝奈、31才。スーパー銭湯でアルバイトしてました。能力は『スーパー銭湯』です」
「お風呂!?」
「お風呂、お風呂きた!!」
「至れり尽くせりだよ女神様!!」
「どういう事!? スーパー銭湯ってどういう事!? どこでもあのでっかいのが建っちゃうの!?」
「女神様最高、ヤバい入信しそう……!!」
彼女の能力が発覚したさいの騒ぎはすごかった。
だがそれも彼女の能力の全貌が明かされた時の比ではない。
「ちなみにこのスーパー銭湯には、付属で美容室とマッサージ室とエステがついています」
「「「マジ!?」」」
「マジです。ただ、料理処はついていませんが……」
「充分だよ! 充分すぎるよ!」
「教会を建てましょう! そして女神様に祈りを捧げましょう! エステの後で!!」
「エステにはアロマもついてますか!?」
「マッサージはいくらかかりますか!? 時間は!?」
「すぐに! 今すぐに入りたい人! はい!!」
一緒に数人が手を挙げる。
外のうめき声はきれいさっぱり忘れ去られてすでに気にならなくなっていた。