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行き先はやっぱり工場です

 次の日、バルトさんとレークスさん、ニグルさんの3人は午前中いっぱい隣の薬品工場に何度も通い、薬を集め続けていた。


 どこの街に行くにしても、薬があれば歓迎されるだろうとの事だ。


 特にバルトさん達は指名手配されている可能性があるため、それを取り消してもらうためにも役に立つ事を証明する必要がある。




 午後は近くにあるという機械の製造工場へ向かう。


 

 灰谷さんは仕事柄、誰かを乗せている時にスピードを上げない癖があった。

 でもそれは出したくないとか、出せないとかいうものではなかったらしい。


 かなりのスピードで走るマイクロバスはゾンビ達を置き去りにしていく。


 彼らは目標を見失うと追跡をあっさり諦めてくれるとバルトさんが言っていた。

 おかげで灰谷さんはご機嫌で車を飛ばしている。



 

 バルトさん達の話によると、やはり街の外には強盗の類が出るとの事だ。


 街に入れない人達が集まって安全な場所に住んでいて、中にはやはり犯罪者の集団もあるそうだ。

 今向かっている先は問題ない可能性が高いが、街へ向かえばそういう輩と出会う事にもなる。


 そのためわたし達は高架橋の使用をやめる事にした。


 これまでとても役に立ってくれたが、ここからは余程のことがない限り地上だ。


 こうして夕方近くには、わたし達は機械工場の隣に建物を設置してくつろいでいた。












「では明日は工場の中を探索してもらう事になります」


 早川さんの言葉にバルトさんとレークスさんがうなずく。

 初めての場所なので、経験の浅いニグルさんはお留守番。何かあった時のために残ることになった。


 と言っても、わたしの能力はレベルアップしていて、外からは見えないようにできる。


 だがそれをやってしまうと、外へ出た仲間が戻ってくるのが難しいとか、建物の外に出るとゾンビに襲われるとかいろいろおきてしまう。


 そのため、外からの視線は早川さんの出す高い塀で遮り、第三者が訪れたさいは臨機応変に対応する事になっているのだ。


 ニグルさんとナツさんの負担が大きくなってしまうが、わたし達ももちろん応援をするつもりでいる。

 ただ問題は当たらない確率が高そうだということだ。










 日々、地下の射撃場で訓練に励んではいるが、これ(命中率)ばかりは一朝一夕ではどうにもならない。


 女性陣の中ではくるみちゃんが最初に、次にしおりさんがコツをつかんだ。


 次の日、昼間のうちわたし達は通路状に作った塀の上からゾンビを撃つ事にした。

 だがやはり頭に当たっても倒すまでは何発もかかってしまう。

 そしてわたしとのどかさんは相変わらずなかなか弾が当たらない。


 家の中と違い、塀の上はゾンビに気づかれるので、時々「があああっ!!」と凄まれてみんな半泣きになりながら銃を撃つ。

 大丈夫とは分かっていても怖いものは怖いのだ。


 万が一にもアレがジャンプなんかして、足を掴まれたりしたら、と思うと震えが止まらない。


 大体、殺気をぶつけられるとか餌として殺しに来られるとか、日本で普通に生きてたらあり得ないのだ。


 もう無理、と思っていたら少し離れた場所で悲鳴が聞こえた。


「きゃあああああっ!」


 あれはしおりさんの声だ。

 見ると、足下の垣根を壊してゾンビが「があっ、があっ!!」と壁を叩いている。


「もうやだ、もう無理ぃ」


 しおりさんがとうとう泣き出した。

 隣でくるみちゃんが真っ青になって震え、のどかさんもしゃがんで半泣きで震えている。


 ニグルさんがそのゾンビを槍で突き殺し、困ったように言う。


「そろそろ戻りましょうか」


 直後、塀から離れた場所にいるゾンビが倒れた。

 見上げると、建物の屋上からライフルでゾンビを狙い撃つ男性陣の姿が見える。


 ああしてゾンビが近くへ集まり過ぎないようにしてくれているのだ。


「うおおおおおおっっ!」


 わたしは叫んで迫ってきたゾンビの頭めがけて銃を連続で撃つ。弾が切れるまで。


「があああああっ!!」


 割と当たったはずなのにさらに元気になって歩いてきた。アレは多分怒ってらっしゃる。

 バキバキ、と生垣が壊されて、わたしは悲鳴を上げた。


「ひいいっ!」


「いやああああ!」


 涙目でのどかさんが銃を撃つ。当たるけどやっぱり死なない。

 カチ、カチ、カチ、と弾切れになった銃の引き金を引きながらのどかさんが叫んだ。


「ムリムリムリ、もういやあ!」


 そしてそれをやっぱりニグルさんがとどめを刺して言う。

 

「やっぱり戻りましょう、皆さん……」


 わたし達は無言で何度もうなずいた。

 心臓がバクバクいっている。これ、死ぬ。心臓が弱かったら絶対死んでるから。







 建物に戻ったわたし達を、イオナさんが心配そうに出迎えてくれた。


 彼女が用意してくれていたアイスティーはとても美味しくて、わたしはこのまま引きこもって戦わずに過ごしたいと真剣に考えた。













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