屋上の白いチャペルで祝福の鐘を鳴らします
イオナさんとナツさんはのどかさんと一緒に朝からドレス選び。
式で着るウェディングドレスと、その後のガーデンパーティ用のウェディングドレス。
アクセサリーももちろんそれぞれのドレスに合わせる。
あと1番大事なのは夜のナイトウェア。
人生で最良の日として思い出せるよう、もう最っ高のものを用意するとのどかさんが張り切っていた。
羽田さんは料理の担当。
さすがにウェディングケーキは作った事がないので、飾りのほうに力を入れるそうだ。
くるみちゃんのエステと美容室は今日の夜と明日の早朝にフル稼働を予定。
早川さんは屋上にチャペル代わりの四阿と鐘、そしてガーデンを作り上げた。
残りのわたし達は羽田さんと早川さんのお手伝い。
こんなににぎやかで楽しいのはこの世界に来て初めてかもしれない。
そして結婚式当日。
朝から気持ちの良いお天気で、屋上に集まったわたし達は今か今かと花嫁の登場を待っていた。
屋上の扉が開いて、レークスさんを真ん中に、イオナさんとナツさんがエスコートされてバージンロードの上を歩き出す。
イオナさんはマーメイドラインのシルクのウェディングドレス。
後ろに長く引く美しいブーケを繊細なティアラで押さえている。
ナツさんは妖精のような短いスカート丈のウェディングドレス。
ウェストの後ろで幾重にもふわりと広がったリボンが裾を引くように流れている。
わたし達はため息をついた。
レークスさんからそれぞれの奥様の手を取ると、緊張したバルトさんとニグルさんは何度も噛んだりどもったりしながらなんとかプロポーズの言葉を告げ、そしてOKをもらう。
バルトさんがイオナさんの、ニグルさんがナツさんの指に結婚指輪を嵌める。
すると鐘の音が鳴り響き、女神の言葉が全員に届いた。
『バルト・ズィーリオス、イオナ・ズィーリオス。ニグル・ドールグ、ナツ・ドールグ。2組の夫婦の誕生を認め、これを祝福します。産み、育て、幸せでありなさい』
一瞬、誰もが言葉を失った。
鐘の音が響き続ける。
蕾だった花が開いて香りがたつ。
泣き出したイオナさんとナツさんをバルトさんとニグルさんが抱きしめて、わたし達は無言のままただ拍手を送った。
ウェディングケーキは真っ白な3段重ねで、そこにアイシングやエディブルフラワーが飾られている。
イオナさんのケーキは淡い色の花を中心に。
ナツさんのケーキは可愛らしい原色の花を中心に。
エディブルフラワーのミモザサラダ。
プチトマトとチーズ、サーモンに薄切りキュウリのピンチョス。
お肉や野菜のひと口サイズのセイボリータルト。
小さくカットした生ハムメロン。
海苔やふりかけ、具材が可愛い手毬のおにぎり。
ドリンクは今日は全部カクテル。
お祝いはお昼まで。
午後はお部屋でゆっくり。
外は殺伐としているから、せめて家の中では笑っていられるように。
楽しい事、お祝い事は盛大に。
食べきれなかった料理はキッチンの時間停止の保管庫に入れて、また明日からに備える。
外では相変わらずゾンビ達がうめいていて、夜になれば騒ぎ出すけれど、なんとかなるんじゃないかとそんな風に思えてきた。




