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こちらからもお願いします

 早川さんが代表して話し出した。


「バルトさん。私達には秘密があります。その秘密を話しても問題ないかどうか、しばらく一緒に行動して、バルトさん達がどういう方々なのか見るつもりでした。そして問題ないとなれば、仲間になってもらえないかお願いしようと話していたんです」


「では……!」


「はい。こちらからもぜひお願いしたいと思います。ただその前に、バルトさんにこうして頭を下げさせてしまった事、その事について本当に申し訳なく思っています。どうかお詫びを言わせてください。申し訳ありませんでした」


 早川さんがバルトさんに頭を下げる。

 それに合わせて、わたし達も全員揃って頭を下げた。


 まるでどこかの会社の謝罪会見のようだが、特に打ち合わせていたわけではない。


 わたし達は全員、申し訳なく、居心地の悪いものを感じていたのだ。


 バルトさんがここまで追い詰められていた事に思い至らなかった事に。


 食事の後、これからどうするのか、またどうする予定だったのか話をきいて、仲間になってもらえないか誘導しつつ、本当にわたし達が思っている通りの人で間違いないか確認する、ぐらいのつもりでいた。


 きっと不安で不安でしょうがなかっただろうと思うと胸がちくちくする。


 こんなにいい人そうな人を不安にさせて、頭まで下げさせてしまった……。


 周りを見れば、みんなそれぞれ似たような事を考えているらしく、バツの悪い顔をしている人もいれば、申し訳なさそうに眉を下げている人、無表情の人といろいろだ。


 無表情なのは崎田さんとのどかさんとくるみちゃん。


 でも大丈夫、分かってるよ。


 バルトさんが頭を下げてお願いしたとき、3人が『しまった!』と言いたげなギョッとしたような表情をするのをわたしは見ていた。


 みんなほんと、いい人ばっかりだ。







 わたし達は、1人で話を聞くかそれとも他の誰かも一緒に聞くか、バルトさんに質問した。


 バルトさんはひとまず自分だけでと希望した。


 その上で、他の4人に話すかどうか考えさせてほしい、と。


「分かりました。では、まず……説明するよりも見てもらうほうが早いかもしれませんね」


 そう言ってわたし達を見回した早川さんに、のどかさんが手を挙げる。


「では、わたしの能力はどうでしょう」


「そうですね、お願いします」


 のどかさんはパッドを操作、テーブルの上に次々と銃器や大剣などの武器を出した。

 中にはもちろん、真剣な話し合いの末バルトさんにかついで……間違えた、使用して欲しい武器No.1のロケットランチャーも入っている。


「これは……」


 驚くバルトさんに、早川さんが説明した。


「わたし達はこことは違う世界から来ました。この世界の女神様に、このままでは人類が滅亡してしまうので助けて欲しいと依頼されたのです」


「滅亡!?」


「ええ。ゾンビ達はそのうち進化してさらに力を増す、そうなれば人類は住む場所を追われ、いずれは滅びてしまうだろうと」


「なんと……」


「ただ、この世界の人類の後始末はこの世界の人類自身で行うべきもの。そう仰って、我々には戦うための能力は与えられていません。これらの武器の他に防具もありますが、わたし達には使えないものがほとんどです」


 早川さんは武器の1つを取り上げる。


「そのため、わたし達は一緒に各地を旅して回り、そしてわたし達を守ってくれる仲間を必要としているのです。戦闘はほぼ全てお願いする事になってしまいますが、生活に関する事はできる限りサポートさせていただきます」


 バルトさんは武器を見つめて考え込んでいる。


 早川さんは続けた。


「周囲の壁は私が、バルトさん達が泊まった倉庫はこちらの小野田さんの能力です」


 わたしは紹介されて小さく頭を下げる。


「羽田さんは食事、崎田さんは本、春山さんはお薬、来見田さんはお風呂を出すことができます。昨日私達が使っていた車はそちらの灰谷さんです」


 次々と簡単に紹介して、そして早川さんは再びバルトさんに向き直る。


「秘密にしてほしいのは、女神様からいただいたこの能力と、私達が異世界人であるということです。いかがでしょうか」


 バルトさんはわたし達を黙って見つめていた。

 まだ少し唖然とした表情をしている。


「え、ええ、もちろん……もちろんです。ただその、少し話についていけなくて……」


「分かりますよ。いきなりこんな事聞かされてもどうしていいか分かりませんよね」


 羽田さんがオレンジジュースやコーヒーを乗せたトレイを出す。

 そしてバルトさんに冷えたビールを渡した。ちなみにシリコンバンドで6本まとめたやつだ。

 それから全員を見回して提案した。


「とりあえずここまでにしませんか? バルトさん、朝からアルコールって抵抗あるかもしれませんが、お酒でも飲まないと落ち着かない事ってあると思うんです。戻ってゆっくり考えて、またお昼ご飯のときにゆっくり話すってのはどうですか?」


「それがいいですね。答えは急ぎませんので、何か質問や疑問などあればお昼の際に話しましょう」


 バルトさんはトレイとビールを手に倉庫へ戻っていく。


 その背中を見ながら羽田さんがぽつりと呟いた。


「ビール、足りるかなあ……」


 足りるといいね、とわたしは心の中で羽田さんに相槌を打った。
















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