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 検討の結果、バルトさんにはロケットランチャーがいいのではないか、という事になった。


 ……いや、そういう事ではなく。





 興奮するわたし達をなんとか早川さんがなだめた頃、女神様からメモ通信が入った。

 

 生垣は、ゾンビ達にとって一撃で軽く壊せるものなので、あまり過剰な信頼を寄せてはいけないとの事。

 むしろ、兵器会社がゾンビに攻撃対象として認識させないための塗料を作成していたので、それを手に入れるほうが効率的だという。


 それ、誰が塗るんだろうと思いはしたが、わたしは口には出さなかった。


 とりあえずあって困るものでもないし。





 ようやく落ち着いたわたし達は、その情報を審議した。


 鋼のような肉体を持つゾンビからすれば、トゲがあろうがいい香りがしようが生垣などあってないようなもの。

 さながらどこぞの巨人の如く人の気配目がけて進撃してしまうのだろう。


 ゾンビが襲わない塗料というのは、どうやら兵器として売り出すさい自社と顧客の安全確保のためのものだったらしい。

 しかし商品発表前にAIとゾンビが暴走。

 機械による完全管理だったため各地の工場がゾンビを生み出し続けるかたわら、塗料も生産され続けているというのだ。


 また、兵器会社と同じ傘下にある企業の建物は、この塗料を塗らずとも破壊しないようインプットされているため、多くの工場やビルが壊されずにそのまま残って稼働していて、そこへ行けば食料や医薬品、生活に欠かせない様々な品が手に入る。


 だがそこはゾンビ達が徘徊する場所でもあるため、普通の人間ではたどり着くことすらできないのだとか。


「ゾンビを排除できればそこに住むのが1番ですよね」


「確かに。でもあれを敷地から完全に排除するのは難しいだろうなあ」


「やたらと強いですから」


「まるでラスボスのダンジョンみたいです」


「ああうん、そんな感じ。大型ライフルでヘッドショットしない限り1発じゃ無理だもんね……」


「手足ちぎれても普通に動いてるし」


「まさにゾンビ」


 みんな涙目になりながら昼間の恐怖を思い出している。

 四方八方から銃撃音を聞きつけたゾンビ達が叫びながら集まってくるのは本当に恐ろしかった。


 バルトさん達が悪意に傾きやすい人でなさそうな事は分かる。


 安易に流れて他者を踏みにじるような人でもない事も。


 だからこそ、仲間になって欲しかった。

 

 どんなに強い武器があっても、どんなにしっかりした防具があっても、わたし達には使う事ができない。

 重量や技術の問題もあるが、レベル制限があるものも多い。


 そして何より、部外者(拠点の仲間以外)には使用制限がかけられているものがほとんどなのだ。



 つまり、わたし達にはどうしても強い仲間が必要。

 武器や防具を売り歩くとしても、本当に強い、使って欲しいものは売る事ができない。

 売ったとして、ただの飾り物になってしまう。



 代わりに戦ってもらう。

 戦えないから守ってもらう。


 きっとそれはとても卑怯な事なのだろう。


 でもわたし達が戦えないことには意味がある。


 だからわたし達は精一杯のサポートをする。

 たくさんの場所へ行って、たくさんの人に会って。

 そのためにはどうしても仲間が必要だった。

 

 一緒に危険な場所に行ってくれる仲間、強い仲間、信頼できる仲間が。



 バルトさん達がそうなってくれればいいと思う。


 ただそれにはどうしても時間が必要だった。

 お互いを知って、手を取り合うための時間が。











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