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仲間にしますか

 夜。

 生垣のおかげか、ゾンビが塀を攻撃する音がせず、叫び声がただ大きいだけの今までよりは幾分静かな時間が夕方から続いている。


「生垣は効果があるみたいですね」


「ただ、こちらの物音が聞こえたら破壊してくるそうです」


「今回は鋼鉄製の塀2つに遮音壁を設けて、トレーラーハウスには吸音措置をしたので問題ないかと思います。倉庫の方はもともと音が外へ漏れませんからね」


 

 この世界の人達は危険区域を通る際、昼間はゾンビを避けて進み、夜は森の中の高い木の上に体を縛りつけて休むらしい。


 その情報を手に入れた早川さんは、すぐさま外側の塀を生垣に変えた。

 バルトさん達に来た時と違うと言われたら、気のせいだと言い張るつもりらしい。





 あの後、目を覚さないイオナさんを連れて、ニグルさん達は倉庫の中へ入っていった。


 バルトさんだけが残り、わたし達と話をした。


 イオナさんは早くに両親と死に別れ、弟のニグルさんと2人、山岳地帯にある街・エオニオで両親の遺した店をやりながら暮らしていたらしい。

 だが街のまとめ役をしている人物が急死し、その息子が実権を握った頃から街の様子がおかしくなりだした。

 イオナさんに再三「愛人になれ」という要求があり、断り続けていたところ仕事の契約で陥れて奴隷にしようとしてきたと言うのだ。


 エオニオを拠点によその街と行き来する商隊の護衛を生業にしていたバルトさんとレークスさんは、このままではいけないと街から逃げ出してきたという。


 もしもエオニオに行くなら、女性は中に入らない方がいい、車は街の外に隠しておいて、珍しい品があるなら別の街で取引したほうがいい、と注意を受けた。


 今のエオニオでは何があるか分からないからと。


 




 わたし達が彼を信じるべき理由はない。

 だが、彼のステータスには犯罪関係の文字はなかった。


「全てを信じるわけにはいきませんが、私は彼は信頼できる人物ではないかと思います」


「そうですね」


「わたしもそう思います」


 全員が早川さんの考えに賛成した。


「イオナさんが回復するまでしばらくここにいようと思いますが、構いませんでしょうか」


 これにも同意した。

 しばらく手狭な中で過ごすことになるがそれは仕方がない。


「いっそ、彼らが信用できると確信できれば、一緒に行動してもらうのはどうでしょう。やはり、我々だけでは戦闘面で不安が残りますし」


「そうですよね。昼間思ったんですが大型の武器って扱いも大変ですし、何より音がすごくてゾンビが寄ってきちゃうんですよね」


 羽田さんが苦々しい表情をする。

 昼間、車の後ろに荷台をつけた際、彼の機関銃だけでゾンビに対応する事になった経験は非常に恐ろしいものだったようだ。


「確かに。ゾンビと肉弾戦ができる仲間はいずれ必ず必要になるでしょうし」


「ここにいたい、仲間としてやっていきたい、って思ってもらえるようにしましょうよ!」


「全面的に協力します!!」


 わたしとしおりさんが涙目でお願いすると、早川さんは苦笑した。


「まあ、それも彼らの為人(ひととなり)が分かってからですよ。それに彼らにも予定があるかもしれませんし」


「そうですね……」


「明日話を聞いて、それから先の話ですよね……」


 ここでくるみちゃんが手を上げた。


「いいですか」


「ええどうぞ」


「スーパー銭湯作戦で行きたいと思います」


「「「「は?」」」」


 男性陣は全員ぽかんとくるみちゃんを見つめる。


「イオナさんは回復してからですが、ナツさんに詳しい事は説明できないと伝えた上でスーパー銭湯を利用してもらいます」


「なるほど、そしてお風呂漬け、エステ漬けにしてあたし達から離れられないようにしようっていう作戦だね?」


 しおりさんがアゴに手を当ててにやりと笑う。


「ナツさんを落とせば、ニグルさんは反対できない。5人中2人は手に入ったも同然」


「イオナさんも落とせばバルドさんも手に入る。これで4人」


「いけますね」


 わたし達が悪巧みをするのを、早川さんが慌てて止めた。


「ちょ、ちょっと落ち着いてください。彼らの為人が分かってから、ですよ? 分かってますよね?」


「……ええ、もちろん」


「大丈夫、ですよ?」


「もうほんとに心配だなあ、皆さん」


 ため息をつく早川さんに、羽田さんが真剣な顔で言う。


「でも早川さん、僕思うんですが」


「はい、なんでしょう」


「バルトさんとレークスさんとニグルさんって、僕たちが持てなかったあの武器、あれ扱えるんじゃないですかね」


 灰谷さんが立ち上がった。


「キターーーーッ!!!」


 崎田さんがメガネをくいっと指で持ち上げて光らせる。


「私達から離れられないようにしてしまいましょう」


「のどかちゃん、カタログ、カタログ出して! 武器だけじゃなくて防具も出すよ!」


「お願いしたらビキニアーマーを着てはもらえないでしょうか」


「くるみちゃんそれ大事、それ大事だね!! オーガンジーと一緒にしたらいいんじゃないかな!!」


「パレオっぽく!」


「そうパレオっぽく! アクセも欲しいね! てかもうそれビキニだね!」


「選びましょう、しおりさん!」


「頑張ろうね、くるみちゃん!」


「み、皆さん……?」


 おろおろする早川さんの声は誰にも届いていなかった。

 大丈夫、大丈夫だよ、早川さん。

 きっとみんな、相手を見極めてからって分かってるから。


「日本刀! レークスさんに日本刀持たせましょう!」


「バズーカですよ、バズーカ!」




 ……多分。











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