あたりません……(涙)
食後落ち着いたらベランダに集合。
時間を特に決めてはいなかったのだけれど、ほとんど間を置かずに全員が2階のベランダ前、休憩所に集まった。
この世界へ来てまだ3日。
わたし達は、きっとまだお互いを探って気を遣っている。
ただ集められたわけではなく、仕事をするために集められた。
そんな気がした瞬間だった。
「じゃあ、全員集まりましたので始めましょうか」
そう言って早川さんが出したのは小型の拳銃だ。サイレンサーが付いている。
「女性の皆さんには辛いでしょうが、塀の中にいるゾンビを相手に射撃の練習をしてもらいます」
返事ができなかった。
でも嫌だとは言えない。
「この小さな銃では、頭部に当てても1発では倒せません。手足も同様です。何度も撃って、それでようやく動きが止まる」
言いながら早川さんはベランダからゾンビを撃った。何度も、何度も。
「もう少し大きな銃だと撃つ回数が少なくなります」
次は崎田さんが撃つ。さっきよりは早くゾンビが倒れた。
「ただ、反動はかなりあります。女性の皆さんには使うのは無理かもしれません」
わたし達は互いを見た。
男性陣もそこまで筋肉のあるタイプではないが、わたし達は4人とも全くと言っていいほど筋肉がない。
スポーツ経験者に至っては男性含めてゼロだ。
「どんな危険があるとも限りませんので、この小さい銃だけでも、使えるようになっておいてください」
そう言われて、わたし達はそれぞれ小型の銃を渡された。
「私達は、新しく銃を取り寄せる相談をしていますので、何かあればきいてください」
のどかさんのカタログと、崎田さんが出した銃の専門雑誌を手に、男性4人は休憩所のソファに腰掛ける。
「やっぱり最初は対物ライフルですよね」
「対物ライフルとひと口に言っても色々ですからね」
「機関銃とか車の屋根に取り付けられますかね」
なんだか楽しそうなのは気のせいだろうか。
撃つ。
外れる。
撃つ。
外れる。
撃つ。
当たった!!
ピンピンしてる。
撃つ。
外れる。
撃つ。
外れる。
撃つ。
外れる……。
嫌々ながら、覚悟を決めて銃を手にしたわたし達だが、はっきり言ってそんな覚悟なんてすごくどうでもいいものだった。
当たらないのだ。
たまに当たってもめちゃくちゃ平気そう。
元気ハツラツ、わめきながら近寄ってくる。
「うおおおおおお!!!」
「っっ!!」
「きゃあああああ!!」
「いやあああああああ!」
「ムリムリムリ、もうやだ、もういや、なんで死なないの!!」
その様子に最初は悲鳴を上げていたわたし達だが、ゾンビがこちらを認識できず、そしてベランダまで上ってはこれないと確信して以降は、そこまで大声は上げずに済むようになった。
だが半泣きになって何度撃っても当たらない。
当たらないのだ。
当たっても死なない。
生き物を、人型のものを殺す、銃で撃つ。
それが恐ろしい。
気持ち悪い。
でも、殺さなければ殺される。
何度も何度も打ち続けて、やっと一体ずつ倒した。
ゾンビはまだたくさんいる。
疲れ切ったわたし達を尻目に、灰谷さんが大きなライフル銃を抱えてベランダにやってきた。
彼は今、甚兵衛姿である。
甚兵衛にライフル、すごい組み合わせだ。
崎田さんと灰谷さんは、暑いからと涼しい作務衣や甚兵衛で過ごす事にしたようだ。
しおりさんとくるみちゃんが大喜びである。
「んーー、こうかな」
言いながら灰谷さんはライフルを構える。そして何の気負いもなく撃った。
一撃。
離れた場所にいたゾンビの頭が吹き飛ぶ。倒れて、動かなくなった。
「おお、やっぱり大きい銃は違いますね」
感心したように腕組みをする崎田さん。
「次はこれいってみましょう。少し軽いです」
「やっぱり1発で倒せないと危険ですからね」
羽田さんが撃つ。
やっぱり1発で当たった。そして倒した。
わたしはもう一度銃を構え、寄ってきたゾンビの頭めがけて銃弾を放った。
外れた。
しおりさんが近づいてきて涙目でわたしの肩を叩いた。
「今日はゾンビに向かって撃てただけで十分だよ……」
ここで生き残っていける気がしない……。
作者は銃に詳しくはないのですが、多分女性陣は銃の反動とかに振り回されているのではないかと思います。
違ってたらごめん……。