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武器と防具は大事です

「これは……」


「ええこれは……」


「確かに武器と防具……」


 リビングでカタログを見ていた崎田さんと灰谷さん、羽田さんが重苦しく言葉を交わし合う。


「ええと、なんだかすみません……」


 のどかさんのカタログは、衣料品の種類は様々で素晴らしかったが、武器と防具のページは非常に少なかった。

 そしてその質はといえば、武器はナイフと日本刀、防具は剣道とアメフトの防具が一式、という悲しいものだった。


「しかしなぜ剣道とアメフト……」


「弟が学生の頃、剣道をやっていて防具が家にあったんです。あとアメフトは多分、幼馴染がアメリカに留学してアメリカンフットボールにハマって帰ってきたので……」


「なるほど、身近なものが反映されているんでしょうね」


「でもなぜ武器がこれだけなんでしょう」


「日本人にはそもそも銃などの武器が身近じゃありませんからね。これは仕方ないでしょう」


 早川さんですら困ったように表情を曇らせ、そして続けた。


「まあでも私達はゾンビを倒す必要はないと言われていますし、最低限身を守る事さえできていれば……」


 そのときくるみちゃんが「あの」と声を上げる。


「多分これ、『武器』のイメージなんだと思うんです。のどかさん、ゲームはあまりやらないですよね」


「ええ」


「映画とかはどうですか? 普段どんなものを見ますか?」


「映画もあまり見ないですが……コメディやヒューマンドラマ、恋愛映画くらいならたまに」


「小説とかマンガとかは」


「エッセイや時代小説とかはよく読みます。マンガは、読まないこともないですけど……」


 そう言ってのどかさんがあげたコミックのタイトルは、癒し系というか、ほのぼの系というか、まちがっても戦闘にはならないようなマンガばかりだった。あとはお仕事系、とでも言うのだろうか。


「時代小説……」


「子供の頃、家族でよく時代劇を見ていたので、その影響で」


「火縄銃とか手裏剣とかって、武器としては何か違う感じするよね、確かに」


「使いこなせそうにないし、使っても人工生命体とか作っちゃうような文明には敵わない」


 うーーん、と腕組みをしてうなる男性陣。

 のどかさんはますます申し訳なさそうにしている。


「という事はですね、武器と防具のイメージがいくらでも膨らませられるって事だと思うんです!」


 くるみちゃんの目が初めて見るレベルでキラキラしている。オーラまで輝いているようだ。

 反応の薄いみんなの中で、羽田さんが誰より先に気がついてソファから立ち上がった。


「……ランスにボウガン!」


「そしてミスリルにオリハルコンです!!」


 くるみちゃんがニヤリと悪い顔で笑う。

 この子意外に表情豊か。


「わかった、崎田さんか!!」


 叫んだのは灰谷さん。

 いきなり名前を出されて崎田さんは動揺する。


「え、俺!?」


「素晴らしい……崎田さん、あなたの能力はなんて素晴らしい……! さあ僕らのために攻略本を!!」


「攻略本? あ!」


「のどかさん、いいですか、これから武器と防具についてイラスト付きで様々なものをお見せします。そして何より大事なのはですね、いいですか」


「は、はい」


「武器と防具は衣服類、そしてアクセサリーも防具になるという事なんです!!」


「ええ!? そうなんですか!?」


「そうなんです!!」


 くるみちゃんの目の色が変わっている。

 そして崎田さんがまずは一冊、美しいイラストの攻略本を取り寄せた。


「ありました、これです! 最新の人気ゲームの攻略本!!」


「キターーーーッ!!」


 灰谷さんが大きくガッツポーズで叫ぶ。


「◯◯ハンも、◯◯ハンもお願いします!」


「もちろんです、今出しますね」


 リビングは突如お祭り騒ぎとなったが、それもすぐに収まった。


 のどかさんのせいではない。

 彼女は出された課題を見事こなしてみせた。

 そしてゲーマー達の夢と希望が詰まった武器や防具の数々を取り寄せたのだ。



 一般人には持つことすらできないそれらの武器と防具を。



 ましてや扱う事など……。


 リビングには悲しみに暮れる30代の男女の姿があったが、のどかさんとしおりさんはアクセサリー類のページを見ながらとても楽しそうだった。


 わたしは使い物にならなくなった羽田さんの代わりにキッチンで全員分のお茶を淹れ、自分の能力で何ができるか、もっとしっかり調べる事にする。


 家の外からは、ずっと騒がしかったゾンビの声に加えて、大きなものが崩れて倒れる音が聞こえてきた。














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