プロローグ
人魚姫はハッピーエンド派に贈ります。
「ちょ、なんで人間が海の底にいるんですか?!」
美男美女が多い、人魚の世界ですら見かけることのない、氷のように冷たくて透明な美貌。
海の中に溶け込んでしまいそうな、海の泡みたいな銀色の髪。
きっと、海の上の世界にあふれているに違いない深紅の薔薇みたいな色の瞳。
「レイラ姫に、一目会いたくて」
当たり前のように、恋愛経験のない私に、さらりと告げられた言葉は、破壊力があまりにも高い。
固まってしまった私に、笑いかけるのは、先日、まさかの確率を引き当てて、お助けしてしまった、人の国の筆頭魔術師様だ。
フラグ的には、王子様ではないのが、せめてもの救いだろうか。
それにしても、普通は逆だよね……。
人魚姫は恋焦がれた王子様に会いに行く。それが、定説だ。
なぜ、助けた、人の国の高貴なお方が、人魚姫を海の底まで追いかけてきているのだろう。
「俺は、願い事は、すべて自分の力で叶えると決めている」
「うえぇ……。海の泡になるのイヤですぅ。声もなくしたくないですぅ」
「俺から逃げなければ、そんなことにはならない」
「ーーーーひぇ?」
そのまま、恭しくひざまずいた、筆頭魔術師様が、私の尾ひれに口づけを落とす。
まるで、永遠の誓いを捧げるかのように。
こうして物語は、人魚姫の願いに関わらず、始まってしまう。
泡になる悲劇を回避したいのに、筆頭魔術師に溺愛されて振り回される、幸せになりたい人魚姫の物語が。
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