3話
今日は短めです。本当はもっと展開進めたかったんですが明日テストなんで勘弁してください。
後3話?ぐらいで結構大きく話を進める予定なので気長に待っていただけると嬉しいです。
アーブルの街から南西に10km程の道のり、多少の木々に覆われ早朝ということもあってか、若干の霧がでている所に目当ての洞窟はあった。
「いいですか、アベルさん私はあと3日はこの宿で待機してます。それ以上は待てません、魔物もかなりこの辺りは増えてきていますからね。アベルさんの事だから心配はないと思いますが、もしそれ以上この辺りに居座るつもりならトラストまではお一人で帰ることになります。……決して無茶はしないでくださいね。エリーゼ様の事だけでなく、少しはカインさんのことも考えてあげてください」
昨日の夜洞窟の話を聞いた後フーエルさんはそう俺に言い残し部屋を後にした。2日間もの間街に帰らず、ずっと心配をかけていただろうに本当にフーエルさんには頭が上がらない。
これだけ協力してもらったんだなんとしてでも、エリーゼのためにもゴラドの花を見つけなければならないだろう。
軽く荷物の点検をして、から気合いを入れて俺は洞窟の中に足を踏み入れた。
『我が身に叡智を、我が天に新たな瞳を』
青の魔法に属する探知の魔法を詠唱する。これは半径5mのものを視覚情報として取得する緑の魔法の上位版にあたり、効果時間は2時間と緑の探知魔法の半分しかないものの、半径5mいないのものをあらゆる五感で感じ取れるようになり、さらに通常では魔道具を使わないと測れない大気中の魔力濃度まで見れるようになる優れた魔法だ。
「これは……凄いな」
昨日の話を聴く限り、探索者を生業とする男達が数時間で魔力過重に陥る程の濃度。ある程度の予想はつけた上で来ているつもりだったが、俺の予想を遥かに上回る濃度だった。
魔力濃度、紫、しかも俺の体内魔力よりも濃い色だった。ゴラドの花を探すために様々な魔力濃度の高い地域を見てきた俺が見つけた中で最も濃かった魔力濃度が藍だったことを考えてみても凄まじい濃度だと言える。
しかし、この濃度は少し不味い、魔法使いは魔法を使いまた、魔力を操る修練を積み体内の魔力を練っていくことで体内の魔力の濃さを増していく。これは高度な魔法を使うには濃度の高い魔力が必要不可欠なことに起因するからだ。
また、体内の魔力濃度を上げるとそれだけ魔力過重の負担を軽減でき、相手から魔法の攻撃を受けてもそれを軽減することが出来る。
その為魔法使い達は日々体内の魔力を修練を重ねることで練り上げ、その色を濃くしようと努力を重ねる。
俺自身、エリーゼから魔法の才能を褒められてからずっと自身の魔力を磨き続けたことで、紫という最高位の魔法使いに至ることが出来たがそれに至る際に魔力の性質について分かったことがある。
魔力はどうにも一律の例外なく濃い所から薄い方へと流れる傾向にあるのだ。魔法学院在学時代に、魔法使いにとっての危機的症状である魔力欠乏と魔力過重に関してはそれこそ口を酸っぱくする程言われたのをよく覚えている。
魔力を心臓にだけにしか貯えることの出来ない一般人に比べ俺達魔法使いは、魔力濃度の高い地域における魔力過重の進行がはやいと俺は教えられていた。
しかし、研修で魔力濃度が王都周辺でも比較的高い緑の魔力地域に来た時、俺の同級生達は魔力過重の症状が少しずつ現れる中入学時の段階で既に青と高位の魔法使いのランクだった俺には一向に魔力過重の症状が現れなかった。
その事から俺はどうやら魔力濃度の高い地域で、魔力過重になるのは大気中の濃い魔力が体内に向かって流れることでおきるのだということが分かった。
何故他の薄い大気の所には流れでない濃い魔力が人間の中には流れていくのかと疑問にな点は少しあったが、体内の魔力が大気中の魔力より濃ければ魔力過重の心配はしなくてもいいということが分かった。
そのため今回の洞窟探索に関しても一般の探索者が数時間で魔力過重に陥る程魔力が濃くても、紫の魔法使いである俺には影響はないだろうをタカをくくって来たのだが……。
自身の魔力より濃いとなれば何か対策をしなければ不味いだろう。
『我が身から内なる敵を拒め』
緑の魔法に属する結界魔法を薄く身体に展開した。この魔法は通常相手の一定レベルの魔法を阻むための結界だが、別の使い方として自分以外の魔力を阻むという性質を使いこうして大気中の魔力が体内に侵入するのを防ぐという使い方も出来る。
(これだけの魔力濃度だ。きっとゴラドの花はあるはず……。待っててくれエリーゼ)
俺は、結界が大気中の魔力を阻んでいるのを確認するとあらためて洞窟の奥に足を進めた。
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洞窟の奥はやや下に傾斜しているようだが、特にこれといって魔物が現れることはなかった。。
(霧によってよく見えなかったとはいえ、登りになると思ってたんだがな……)
外から見た時に洞窟は山に出来た鍾乳洞か何かだと思っていた。洞窟のすぐ周りは木々が多少生えていたとはいえ山に覆われていたし、何よりその山は連なって魔領にまで届き、伝承に聞く魔領の大山脈の1部に思えたからだ。
だから、魔物を警戒して光源の魔法を使わなかったというのに、実際に入ってみると魔物どころか生物の気配さえない。鍾乳洞特有のつらら状の岩も見当たらないしそれどころかどうにも壁面はゴワゴワとしてはいるがそれに一定の規則性があるように思える。
まるで誰かが何かを意図して作り上げたかのようだった。
「それにしても……もう2時間は歩いているのにここまでずっと一本道だなんて……」
洞窟は地形の変化などの自然的遷移によって出来るため奥に行く程道が分かれているものだ。
洞窟の構造やそもそも異常に濃い魔力濃度ととにかくこの洞窟には奇妙な点が多すぎる。
魔物こそいないものの何かとてつもないものがあると俺の勘がそう告げて鳴り止まなかった。
「ん?……魔法がきれたか……」
突如として感覚が暗闇に呑まれた。探知魔法の効果がきれたのだろう。ずっと同じような道を歩いていたため、時間感覚に不安を覚えたが魔法の効力がきれた所を見るとおおよそ俺の時間感覚は正常なようだった。
(結界魔法の出力も最低レベルに抑えてるから魔力にはまだ余裕があるが、魔物がでない以上長く探索できるよう魔力消費の低い光源魔法に切り替えるか……)
この先も大気中の魔力濃度の都合上結界魔法は貼り続けなければならないため、俺は魔力消費の低い赤の魔法を唱えた。
『我が道を灯せ』
俺の目の前に小さな光の玉が現れる。淡く小さく輝いていたそれは数回点滅すると、すぐに辺り一帯を光で満たし始めた。
足元までしっかりと照らされていることを確認した俺は、再びを歩を進めようと前を向くと、今まで歩いていた壁の一面に文字が写しだされているのを発見した。
「?さっきまでは何もなかったはずだが……」
青の探知魔法の効力は確かだ、壁に文字がかいているのなら触感として伝わってくるし、何より視覚情報として書かれているのものはすぐに分かる。
これではまるで、青の探知魔法の効果が切れて光源の魔法を使うまでの間に文字が浮かんできたようなものだ。
奇妙に思い、結界の強度を強めながら慎重に壁に近づき、触ってみる。
魔法を使って探知していた時と変わらずゴワゴワとした、ただの壁であることに変わりなかった。どうやったのかは分からないが文字は壁の内側から浮かび上がっているようだった。
壁に書かれている文字も大分古い、この文字は確か聖神教の聖典における原初の文字だ。何故このような所にこんな仕組みの壁があるのだろうか?。
不思議に思い壁に書いてある文字を解読する。
「〔血の簒奪者よ汝の罪を償え〕?」
そう壁に書かれた文字を呟くと同時に、地面が大きく揺れたかと思うと俺が立っていたすぐ足元が崩落した。急に起きたその事象に俺は為す術もなく穴の底に落ちていった。
伏線は貼るのは簡単だが回収するのが大変なのが身に染みる。小説書くのは大変だね……