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かくして魔王はいかにしてうまれるのか  作者: 闇の炎に抱かれて消えろ
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プロローグ

プロローグなんで短め。一人語りって難しい。成長したら書き直す

泣いていた。ひたすらに色んな感情がせめぎ合って大きな大きな木の下で膝にを顔を埋めて俺は泣いていた。これはきっと夢を見ているのだ。幼い頃のまだ俺が子供だった頃の記憶。自分が情けなくて、みじめで泣いていたあの頃の記憶。弟に対する劣等感と両親や周りの村の人達に向けられた失望の視線子供達に向けられる苛立ちの感情。それが悔しくて、悲しくて、どうしようもないと割り切ろうとしながらも割り切れず、何をしても認めて貰えないそんな中俺はよく村はずれの大きな木の下で泣いていた。

今思えばこの時の俺は既に自分という存在に見切りを付け始めていたのだろう。


弟は優秀だった。俺よりも1年遅く産まれたというのに俺よりもはやく弟は流麗に話せるようになった。それだけじゃない。運動や家の仕事の手伝い、商人から口頭で話を聞いただけで簡単な算術までも出来るようになっていた。そんな弟を両親は褒め称え、村の人達は天才だと持て囃した。当然といえば当然だった。明らかに弟の才能は俺達が住んでいるような辺境の村で治まるような器じゃなかった。また弟は顔も良かっただから村の人達特に村長はあわよくば弟を街のお偉い人や大商人の従僕として辺境の何もないこの村の覚えをよくして貰おうと期待し、弟の教育に対して力を惜しまなかった。


最初のうちは俺も期待された。なにせ教えれば教えるほどなんでもこなせる弟の兄なのだ。今はまだ才能に目覚めてないだけでもしかしたらこの子も何か特別な才能があるのかもしれないと3歳の頃からの3年間俺も弟と同じ教育をさせられた。苦痛だった。まだ言葉をおおよそ把握したばかりの3歳児に過剰な教育をこれでもかと詰め込むのだ。俺と弟を除いた子供たちは自由に遊んでいるのにどうして自分達はこんなめに合わなければ行けないんだと何度も思った。そしてその苦痛を感じているのが俺だけだと教育が始まった数ヶ月で俺は知った。弟は明らかに過剰で、とても子供にするようなものでは無い教育をなんともなさそうにいとも簡単に次々とこなしていった。そしてその3年で俺は完全に自分と弟の差を思い知らされた。


俺への教育が打ち切られ、その全てが弟に向かい俺は一般の子供達の輪に入れられた。けどそれで俺の苦痛は終わらなかった。村というのは閉鎖的なコミュニティだ。子供もいても十数人程度。そんな中で自我が確立しはじめてからの3年でなんの関わりもない子供が突如として自分達の世界に入り込んでくるのだ。しかもそいつは今まで自分の両親達の注目を集めていた子供の片割れときたら結果は火を見るより明らかだった。両親に構って貰えない苛立ちは全て俺のところに向かって来た。昼ご飯奪われた。落とし穴に嵌められた。馬の糞を服に入れられもした。そして暴力は日常にとって当たり前の存在になった。両親にも相談したが子供同士のくだらない諍いに弟という天才の教育という役目をもった両親は目を向けてはくれなかった。

自分の存在に目を向けられないことが寂しかった。圧倒的な存在が身近にいることがどうしても勝てない相手がすぐそばにいることが悔しかった。そんな存在と比べられ勝手に見放されることがどうしようなく嫌だった。そして理不尽な怒りをぶつけられて、そんな環境からも助けて貰えない自分自身が酷く空虚に思えて仕方なかった。


だから俺は村外れの大きな木。その下の影が好きだった。大きな大きな木の影は静かで暗く誰にも見られないような気がした。まるで自分が世界に溶け込んでいるかのような気がしたからだ。誰も自分を見ないだからこそ期待もされなければ、失望もされない。理不尽な怒りにも晒されず自分の持つこの悲しささえも、ただひたすらに世界の1部になったような気分になれた。そしてこのまま居なくなってしまいたかった。どうしたってこのまま変わらないのなら。何をしたって永遠にこの苦痛が続くのなら。この鬱蒼とした暗闇のような人生に終止符を打ちたかった。人生で最も絶望していた。そんな時の記憶だった。


泣いている自分に近寄ってくる足音が聞こえた。


「なにをしているの?」


そう声をかけられた。鈴のなるような美しい音色で、どこまでも眩しいような明るい声がだった。


「もしかして、泣いてるの?」


過去の自分が声が聞こえた方にゆっくりと涙や鼻水で汚れた顔を上げる。今思うととてもみっともない顔だったと思う。木の影にいた事もあってそんなめちゃくちゃな顔がはっきりと見えていただろうにも関わらず。彼女は嫌な顔ひとつせず、俺にこういった。


「私エリーゼ!貴方のお名前はなーに?」


思えばこれが俺の人生に始めて光が刺した瞬間だった。

次の話から結構場面変わりますがご了承侍(卍)

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