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第22話 気持ちの整理

お久しぶりです。すみません。本当に。

投稿ストップした三年前、急に仕事で責任者任されて…という言い訳。懐かしんす。

 

 数日前までは正直劇どころじゃなかった。もはやただの友人では済ませられない下田涼という人物に対して自分がどんな気持ちを抱いていて、今後どうしたいのか。整理がつかずにソワソワしていた。

 なんなら劇本番が始まっている今だって、完全に整理がついている訳じゃない。


 でも一つ決心はついた。


 とりあえずこの劇だけは絶対に成功させよう。


 だって、彼が私のために膨大な時間をかけて、作り上げてくれたステージだから。私がここで中途半端な姿を見せたら、彼の努力が台無しになる。そんな展開だけはあっちゃいけない。

私が輝くことが今の私にできる一つ目の恩返し。


 柚香は覚悟の決まった表情で袖からメインステージに足を進めた。




 柚香登場シーンの少し前、劇のプロローグを観ながら、涼は神妙な面持ちでステージを見つめていた。


 普段からあまり緊張はしない方だが、今回は、特別に緊張している。陽香さんの時には感じなかった緊張感。この劇という手法、大衆に前でぶっつけ本番なんて、ある意味これはギャンブルだ。ここでヘマをすれば、全校生徒の印象に影響が出るし、何より白仲本人の自信や自己評価に大きく関わってくる。


 いつだって大衆に憧れられるのはいつだって自分に自信持っている人間だ。それが容姿なのか仕事なのか特技なのかなんだっていい。自信を持つこと。これが全ての成長において最初のステップだ。白仲に必要なのはこの最初のステップだ。踏み出せれば、俺の手は借りなくても良いまである。


 プランナーだなんだと言っても、結局は本人次第。だからこの劇は成功してほしい。


 それに、衣装もかなりこだわって時間をかけた。学園祭の出し物として違和感が出ない範囲で、白仲のビジュアルをより引き立たせるため、上品かつ派手すぎないカラーリングと装飾をドレスに施した。俺は自分の時間を白仲に投資したんだ。


「色々考えたら、なんか緊張してきた…」


なんだこれ…なんだこの感じ。自分が出るわけじゃないのに… 例えるなら…

うん。分からん。なんだこれ。あ、分かったあのあれだ。フィギュアスケートの監督がスケートリンクに選手を送り出すみたいなあr…


ごちゃごちゃ考えてたらステージ上に王子様と白雪姫が現れた。


「うお。白雪姫役の子めっちゃ可愛くね?」


「え、何あの子!凄い綺麗!!」


「衣装も綺麗じゃない?だれが作ったんだろ?メイクも似合ってる…」


「クオリティすご...」


 涼は周囲の反応を聞いて、口角が上がりそうになるのを必死で我慢しながら、ステージ上の白仲姫と八島王子を見守った。


 演技中、白仲は明らかに人々の視線を釘付けにしていた。


 なんだろう。ビジュアルだけがそうさせているわけではないのが白仲を見ていると分かる。

演技だ。圧倒的に演技の質が上がっている。噛まないとか、流暢とか、声のトーンがとかそういう質だけじゃない。それよりもっと抽象的な何か。


 涼が白仲を分析しながら分析していると、あっという間に時は流れ、物語は終盤に突入した。


 小人たちが言う「できれば恋の物語が聞きたい」

 白雪姫はあるお姫様(自分自身)の話を始める。それは恋のお話。


「彼みたいな人はどこにもいないわ。」


 白雪姫は高校生とは思えない憂いを帯びた表情で語った。一瞬、客席を一瞥して。


「今俺のことみた?」


「いや俺やろ」


 涼の周囲の生徒がざわついた。


 いや、王子様がいないシーンなのをいいことにこっちを見ながらいうなよ…

流石にドキっとした。畜生、余裕出しやがって。俺にファンサのつもりか?あれか?授業参観で親のことチラ見するタイプか?


 そんなこんなで、きちんと毒リンゴかじって、白雪姫はぶっ倒れた。終盤の終盤の例のシーン近づいてきた。恐らく観客も俺も心の中でそのシーンを意識し始める。


 名シーン中の名シーン。クライマックス。


 毒リンゴを食べて死んでしまった白仲姫が生き返るにはたった一つの方法しかない。

それはもちろん、王子様のキスだ。

キッス。キッスとはキッスのことである。

接吻、チュウ、唇まぐわいともいう

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― 新着の感想 ―
[良い点] おかえりなさい
[一言] 待ってました
[一言] 連載再開、ありがとうございます。
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