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第1話 日常と非日常

タピオカ片手にfeel like I'm a JK


 白仲とのやりとりを終え、いつも通り席に着き、机に伏せる。ホームルームや授業以外はいつもこうだ。和気あいあいと話すような友人もいないので、陰キャとして何もおかしいことはない。


「また寝てるよ、あいつあんなんで人生楽しいんかね。」


「いつも暗いし何考えてるか分かんねぇよな。陰キャってのは」


 陽キャの皆様は何とも手厳しい。俺はあいつらに迷惑を一切かけていないつもりだ。他人が寝ているだけでどうしてあんな言葉が出てくるのだろうか。人生が楽しすぎるせいだろうか。


「ねぇ...今日は水曜だからね。ちゃんと来てよ」


「行くから教室で喋りかけるなって...」


 心の中で悪態をついていたら、白仲がまた喋りかけてきた。本当にお喋りが好きなやつだ。いつも通り軽くあしらって変な噂が立たないように気をつける。こういう場合は、


「トイレっ」


「ちょ、ちょっと! もう...」


 トイレという名の異性絶対不可侵領域に逃げ込むのが最善の手だ。何度もこの手法で躱してきた。


「何であんなやつと白仲さんが...」


「近寄ってんじゃねぇよ陰キャが」


 近寄ったのは俺じゃないんだが...陽キャに見えている世界はどうなってるんだろう。あ、あの陽キャのワックス水分足らねぇな。馴染ませてからつければベタつかないのに。もったいない。




───放課後


 部活動生のランニングの声や吹部の練習音が薄っすらと聞こえてくる。夕暮れ時のこの時間。

 毎週水曜放課後は、人が寄り付かない屋上行きの階段で、俺は白仲と2人きりになる。


「いつも思うけど、どうにかなんないの?あの態度、ちょっと冷たすぎない?」


「あれは、ルール通りの行動だ。白仲の価値を落とさないためだ。白仲も分かっているはずだろ?」


「分かるよ。分かるけど... でも、私は───」


「それより、最近姿勢が悪い。猫背になってきてる。あんなに苦労して改善したんだ。意識してくれ。背筋が伸びてるだけでスタイルも良く見えるし、姿勢を正しく保ち続けるだけでも相当なカロリー消費になるんだ。」


「うん、分かった。気をつける。」


 白仲は普段は少し強情な一面もあるが、指導の時はとても素直だ。

 こういう傾向の子は良い方向に伸びるし、指摘の入れ方や方針を正しく示せば、女性として磨きがかかってくると、母が言っていた。


「あと、最近、少しだけ肌が乾燥してきてないか?そういう時は───」


「はーい。楽器そっちから持ってきてー!とりあえずこの階段の方に置かせてもらうからーっ」


 気になった点をつらつらと喋っていると、だんだん近づいてくる生徒の声。まずい。ここに人が寄り付くことはないと思っていたんだが。

このまま指導を続けていれば、部活動生にバレてしまう。


「よし。大分早いが今週はここまでだ。来週俺が先に行くから、タイミングずらして出てきてくれ。」


「え、ちょ、わ、分かった!」


「はぁ... 本当に一瞬だなぁ...」





 柚香は限界だった。出会った当初は自分が変わるため、女性としての自信をつけて学生生活を送るために彼を頼ったが、今となっては目的がひっくり返っている。

 自分を磨くのは彼のため。ただ振り向いてほしい。こっちを見てほしい。私だけを見つめてほしい。そんな一方的な感情がモチベーションになっていた。


 もう半年前になるんだ...

 第一印象は良くなかった。彼と屋上前階段で顔を合わせた日のことは今でも忘れられない。


 柚香は彼との出会いに想いを馳せる。


米を売った金で米を食って先祖にありがとう



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