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婚約者と実験

 謁見の間には、国王陛下と私だけが残った。

 実際には、護衛騎士が部屋の奥に控えているが。

「レオンクラウド、そなたにこれを見せておく。」

 陛下の言葉に何かが運ばれてくる。

 一つは記憶の魔道具だ。

 もう一つには布がかけられている。その布がゆっくりと外された。

 人の腕らしき物。おそらく手から肘までの。手の部分はボロボロで手首より少し上までが真っ黒になっていた。

「ソーリマの右手だ。千年樹の蜜が入った小瓶に触れた部分から黒に変色しこうなったらしい。」

 話は聞いていたが実際に見ると・・・。ソーリマの肌の白さと変色した黒の違いが異様で気味が悪い。

 異世界では、こういうのをグロテスクというのだっか?

「もう一つを。」

 魔道具が作動する。

 キャスターと猫が入った檻がニつ映った。

 キャスターが小さな小瓶を右手でギュッと握り混む。その右手で猫を触った。何も変化はない。

 次の篭の猫に小瓶を当てた。猫が毛を逆立てていたが・・・、小瓶が触れた部分から黒く変色していく。

 そのうちボロッと黒く変色した部分が崩れた。黒いのは止まることなく広がっていく。変色した猫に布がかけられた。

 映像が消えた。

「小瓶に触れなかった猫は今も生きておる。」

 直前に小瓶を触っていてもキャスター自身は千年樹の蜜の影響を受けずに無害ということか。

 なら、部屋も準備しやすい。あの小瓶だけ注意したら良いのだから。

「保管は、出来ないのでしょうか?」

 陛下は、重い息を吐かれた。

「薬師の話では、千年樹の葉で包まない限り何重にしようが、半日ももたないらしい。」

 被害を出さぬためにもキャスターが持つ必要がある。

 肌見放さず? 誰も触らなければ、入浴などの短時間なら大丈夫らしいが、見張りが必要だ。小瓶にもキャスターにも。

「分かりました。警備を厳重にします。」

 ″もしも″の場合、あんなグロテスクなモノがそこら辺に転がることになる。

 彼女が起きてなくて良かったと思う。到底彼女に見せたいモノではないからね。

「ユインスキーの息子は、図書室にいる。任せたぞ。」

 そう言って、陛下は退出された。

 私も重い息を吐くと動くために立ち上がった。


「キャスター・ユインスキー。」

 本を捲り、必死に何かを書いている背中に声をかけた。

 ギィギィギィと音が聞こえそうな動きで首を動かし、振り向いたキャスターはやはり面白い。

「王太子殿下。」

 慌てて立ち上がって礼をしようとするキャスターだが、関節がうまく動かないのかぎこちない。

 私の前だと何故そんな動きなのだろうね? 面白いから別にいいけど。

「何か、分かったかい?」

 色々書かれた紙があちらこちらにある。

「あっ!こちらです。けれど、千年樹も花守りも謎だらけです。」

 差し出された紙には、色々書いてある。

 千年樹は、百年前くらいに花を咲かせたようだ。

 キャスターの祖母君は千年樹の花守りでも花を見たことが無いということかな?

千年樹の花は、大きなのが一輪だけとも細かいのが沢山とも言われている。見たことがあるのなら、どちらなのか聞くこともできただろう。

「夕食にしよう。わたしの私室(へや)に準備させた。」

 私が保護することになったと伝えるのは、食事の時でいいだろう。

 どんな反応をするか楽しみだ。

 部屋の前には、アンタイルと残念男(エドヴォルド)がいた。

 彼らと部屋に入る。

 彼女の頭、胴、手足の辺りに触れながら魔道具を解除していく。今日は一つも解除されていなかった。

 それを嬉しく思う。

「ただいま、シャル。」

 私は、彼女の額くらいの位置に唇を落とす。

 人目かあるから、これだけで我慢してね。

「レオン・・・。」

 呆れたアンタイルの声に返事が無くても挨拶は必要だろうと思う。何故そんな可哀想な子を見る目で見られないといけないのは分からないが。

 残念男(エドヴォルド)は呆れた笑みを浮かべているし、部屋に入れた護衛たちは死んだ目をしている。

 キャスター一人真っ赤になって俯いていた。

 アンタイルと残念男(エドヴォルド)は食事を済ませてきたらしいから、二人には酒をすすめキャスターと食事を始める。

「キャスター、明日から警備の都合、私と行動を共にしてもらう。」

 キャスターが固まった。フォークとナイフを持ったままカチンと。

「学園の教室といた時と同じと思ってもらったらよい。」

 カクカクと首を縦に振るキャスター。

 逆にそんな動きのほうが体を傷めそうだよ。

「フェルプス。」

 昨日から王太子(わたし)付きの近衛隊長になった男を呼ぶ。

 優しそうな顔をした男がすっと前に出てくる。

 残念男(エドヴォルド)の一つ上の先輩で平民から実力で近衛隊に入った男だ。優しいのは見た目だけの男。それに騙されて何人もが大怪我をしている。

「フェルプスが王太子付きの近衛隊長だ。そして、マークウエル。この者が主に君の護衛に付く。」

 マークウエルは、小柄な騎士だ。だか、体の小さなことを利点として小回りの効く剣技を持ち、炎魔法を使う魔法騎士だ。

 他にも近衛隊員はいるが実力も考えて、この二人にキャスターを任せたほうがいいと判断した。

 片方がキャスターと同じ()()()()()だ。お互い仲良くしておいたほうが良いだろう。

ぐろい?

あれは、黒くないよ?

″ぐろてすく″だから、ぐろい?

グロテスク?

フランス語?

異様で気味が悪い?気持ち悪い?

確かに生魚の内臓は、見ていて気持ちがいいものではないけどね。

けれど、ああやって料理人たちが綺麗に捌いてくれるから、美味しくいただけるのだよ。

気持ちが悪い?

まあ、あれほど大きな魚の腸だからね、男でも気分を悪くする者はいるよ。

じゃあ、向こうで少しゆっくりしよう。

ちゃんと、服は緩めてあげるから。


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