婚約者と平民のメモ
せっかく王宮の図書室に来ても好きに本を読めるわけじゃない。
「ご希望の本がありましたら、お持ちします。」
図書室の中にある小さな部屋。
僕は、そこに閉じ込められた。
当たり前だと思う。こんな怖いモノ持っているヤツ、野放しにしてたらヤバイ。
僕しか持てないみたいだから持っているけど、出来たら早くどうにかしてほしい。
「手袋と千年樹のことが書いてある本をお願いできますか?」
でも、せっかくの王宮の図書室だ!有意義に使ってやる!!
「てぶくろ、ですか?」
図書の人が疑問符だらけの顔をしている。
「僕が直接本を触らないほうがよろしいかと。あっ!それと書くものもお願いできますか?」
あの小瓶を直接触っているからねー。僕には無害でも僕の手についている千年樹の蜜を他の人が触らないほうがいいだろうな。
ていうか、僕、手を洗えるんだろうか?洗った水って安全?
僕一生このままだったら?どうなる?エメリンとも?
考えちゃいけない。うん、どうにかなる。きっと。
「わ、わかりました。すぐにお持ちします。」
図書の人たちがササッと部屋からいなくなる。
話を聞いているんだろうなー。逃げるようにいなくなったよ。
僕でもそうする。危険な物には近づきたくない。
紙とペンだけ先に届いたから、まず知っていることを書き出した。
千年樹・・・千年に一度花が咲く。花の蜜から、テオの雫という香水が作られる。イロノ国の奥の奥の秘境にあるといわれている。
テオの雫・・・千年に一度しか咲かない花の蜜から作られる香水。国の財政を傾かせるほどの値段がする。美容効果、媚薬効果もあると噂。
花守り・・・千年樹の世話人。唯一テオの雫の原料を作れる者たち?一族?一人ってことはないよねぇ?
千年樹への行き方(噂)・・・イロノ国の端、アーミサ山脈の山中にあるといわれている。獣道を一日、川の中を一日、崖を一日、灼熱を一日、氷の洞窟を一日歩いたら着けると言われている。
千年樹の蜜・・・千年樹の花の蜜?樹液?花守りか千年樹の葉でくるんでないと瓶に入っていても触ると黒く変色して、腐る?(腐臭はしなかった)、炭?(ベチャという感じで炭のように乾いていなかった)。けれど、インクが布に染みるようにスーと黒いのが広がっていき、熟しすぎた果実が木から落ちるようにソーリマ様の指は床に落ちた。やっぱりあれは、腐るが正しいのかな?
うーん、書き出しても謎ばかり。
だけど、僕の祖母が花守りだったのが一番の謎。そんな秘境に住む祖母と祖父はどう知り合ったんだ?大恋愛だと聞いてるけど。
「ユインスキー、わたくしに協力しなさい。」
「お断りします。」
僕は、即答した。
どこから涌いてきたのか。
マリークライスが部屋に入ってきていた。
キチンイ宝飾の店主もいる。
見張りがいるはずなんだけどなー。
僕は、保護対象の危険人物のはずだから。
「レオンクラウド殿下、王太子殿下の許可をお取り下さい。」
何度来ても一緒。きっぱり言うだけだ。
取れるもんなら、許可を取ってこい!
僕は、レオンクラウド殿下に許可してもいいですか?なんて怖くてきけない!だから、自分で許可を取ってきて下さい。
あの人とは、なるべく関わりたくありませんから。
「マリークライス、そなたが何故ここにいる。」
その声にマリークライスの顔が強張った。
すごく立派な服を着た人が護衛に囲まれて扉の向こうに立っていた。
だれ?
「へ、へいか。」
へいか?陛下だって!?
僕は慌てて平伏した。
「嫌疑が晴れるまで王宮には出入り禁止を言い渡したはずだ。」
「陛下、それは・・・。」
マリークライスの近くにいた騎士の一人が声を上げた。
「貴様は、王宮の騎士か?それとも神殿の兵か?騎士なら許可なく宮内を歩き回る者を捕らえぬか。」
マリークライスが不審者扱いされている。ざまあみろ。
顔色を無くしているマリークライスたちが追い出され、陛下と二人の薬師(?)、貫禄のある騎士様にソーリマ様のところに来た隊長らしい人とあと顔が傷だらけで大きな箱を持っている人、合計六人が部屋に入ってきた。
にしても、みゃー、みゃー、聞こえる。猫?
「そなたが、ユインスキーの息子か?」
「はい、キャスター・ユインスキーと申します。」
うーん、国王陛下だから、レオンクラウド殿下の父上だよなー。
レオンクラウド殿下より声に威厳と重みはあるのに、怖くないのは何故?この人が一番偉いんだよね?
「千年樹の蜜を持っているな。」
僕は内ポケットを触り、確認してから頷いた。
「はい。お預かりしております。」
どうにかなるって、期待していいのかな?
あの逃げた間者も花守りの血筋だよね?
素手で触っていたから。
これ、取りに来てくれないかなー。
こんなモノなくてもレオンクラウド殿下は、強いから。
逆にこんなモノ、レオンクラウド殿下に渡さないでほしい。
もし、悪い未来になったら・・・?
僕は、殺人兵器になりたくない!!
どうか良い使い道がありますように?




