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婚約者と謁見の間(前)

やっと最後の馬車が出ていった。

もう夕暮れに近い空になっている。

次回は、彼女と二人で見送れるだろうか?

そうなるように頑張りたい。

私は謁見の間に向かった。

部屋に入ると父である国王陛下と主な大臣たちがそこに勢揃いしていた。

陛下の前に進み、跪き家臣の礼をとりながら報告する。

「陛下、恙なくお帰りいただけました。」

後は、国賓が何事もなく国境を越えてくれたら無事終了だ。

「うむ、レオンクラウド、そなたもご苦労であった。今後も王太子としての務め、立派に果たすがよい。」

儀礼は、とても窮屈なモノだね。

「はっ、精一杯務めさせていだだきます。」

実の親子なのに堅苦しい挨拶をさなければならない。

視線で椅子に座るようにいわれる。

私が定められた席に座ると大臣たちも着席した。

本題に入るのだろう。

「で、ソーリマのことなのだが。」

後ろ楯(じっか)の力を失い、必死に力を取り戻そうとしていた愚かな女。

「はい、こちらにも報告が上がっております。容態はどうなのでしょうか?」

腕を切り落としたと聞いている。

「処置が早かったおかげで命は助かったのだが・・・。」

罪を認めず、ゴネている?

「すべて、そなたとユインスキーに仕組まれたと言っておる。」

私は思わず笑いそうになってしまった。

どうやったらそう考えられるのか、凄く不思議だ。

「陛下、私はユインスキーが王宮に来ていることを知りませんでした。そもそもあんな早朝にしかも忙しい今日に呼び出したのか理解出来ません。」

女性の身支度は時間がかかる。

ソーリマは、今日の昼食会用にドレスを新調していたはずだ。自分を磨くのに忙しいはずなのに何故?

「キチンイ宝飾が泣きついたようだ。マリークライスがしている婚約指輪のことでな。婚約指輪の権利を持つユインスキー宝飾商に承認させようとしたらしい。」

陛下は、疲れきった顔をしていた。

ソーリマからの聞き取りは、とても気力を使ったようだ。

「そなたが婚約指輪に規制をしたのも、自分の侍女がイロノ国の間者と会っていたのも、間者が()()()()()()()()()()()のも、自分の小瓶の中身が毒になっていたのも、全てそなたの企てだと。イロノ国の者とは全く会ったことがないと言いながらな。」

愚かな女だ。

陛下は、乾いた笑い声をあげられた。

罪を告白したのに気付かない愚かな女。

『一部を返してきた』

イロノ国と関係ないと言いながら、間者に代金を支払うような買い物をしたことを認めたことに気付かない愚かすぎる女。

近いうちに病死を発表することになるだろう。

「ティッオは・・・。」

異母弟(ティッオ)は、このコトを知っているのだろうか?

「一緒に記録の魔道具を見た。今は、自主的に謹慎しておる。関係は無かろうよ。」

陛下の言葉にホッとする。

だが、立場が悪いのは確かだろう。

「で、ユインスキーの息子が持っておる千年樹の蜜の件だが。」

幻の香水、テオの雫の原料となる千年樹の蜜。

ソーリマが必死に取り替えそうとしていたモノ。

「本物なのでしょうか?」

そう思ってしまう。

テオの雫の原料なら、門外不出のはずだ。

「分からぬ。薬師も書でしか知らぬと申しておるからな。そなたへの詫びらしい。」

私は首を傾げた。

「詫び、ですか?ソーリマ様は、その小瓶に何が入っていたと思われていたのですか?」

詫びは、彼女に勝手に触れようとしたことだろうか?

「ソーリマは、あれは貴重な香水の元だと思っていたと。それが自分のモノになるはずだった、と。」

千年樹の蜜なら、確かに貴重な香水の元といえるだろう。

だが、瓶を触っただけで・・・、あの症状は何といったらいいのだろう。

「千年樹の蜜なら貴重な香水の元といえますが、聞いた限りではとても危険な物だと思われますが。」

陛下は、頷いた。

「薬師の話だと、千年樹の蜜は濃度が濃すぎてそのままだと猛毒だそうだ。取り扱うことが出来るのは千年樹を管理する花守りだけだと。普通は花守りが香水に出来る状態にして、イロノ国で特殊な水で稀釈し販売しているらしい。」

やはり本来ならイロノ国でも手に入りにくいモノなのだろう。

それなのに何故?疑問が膨らんだ。

りょうやく くちに にがし?

良く効く薬ほど苦くて飲みにくいのが多いということらしい。

異世界でも子供は薬嫌いが多いのかい?

ふーん、フルーツの味を付けて飲みやすくしてある。

けれど、こうせいぶしつ?菌を殺す薬?それは甘味が付けてあっても口に残ると苦くなる?

飲みやすくするためにゼリーやアイスに混ぜて?

チョコレートに混ぜて飲ますことも?

そんなに色々あるということは、異世界でも子供に薬を飲ますのは苦労しているのだね。

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