婚約者と生徒たち
私は礼装のまま議会に参加する。
重たいマントは外している。
まず、無事に立太式を終え、王太子になったことを議会に報告した。そのためだけに開かれた議会。
皆ももう知っているはずなのに儀礼というのは、面倒なものだ。
「お、王太子殿下、バルコニーでの・・・。」
睨んだつもりはない。ただ、勇気ある発言者を見ただけだ。
色を無くし発言を止めてしまったら、何が言いたいのか分からない。
「私は、国民に下手に期待せぬよう伝えただけだが?」
聖女の恩恵は受けられない、と。
「王太子殿下としての自覚をお持ちになられませんと。」
そう声をかけてきたのは、異母弟の母親、国王陛下の側妃ソーリマだ。
王太子となった私のほうが身分は上だが、私を見下ろす位置に座っている。ソーリマの隣は私の父である国王陛下だ。
「自覚を持ったからこその判断です。マリークライスは、私の妃に相応しくない。」
ぼかして言う必要もなくなった。私が相応しくないと言えばそれが決定だ。
チラリと見上げるとソーリマは、綺麗といわれる顔を醜く歪ませていた。
国王陛下と妃たちが退出し、議会は直ちに閉会した。
立太を祝う舞踏会の準備をしなければならないからだ。
私は部屋に戻る途中、一人の文官を捕まえた。
「ところで解毒剤の手配は、どうなっている?」
あれから、薬師に彼女を診てもらった。エドヴォルドに一時だけ魔法を解いてもらって。
ノモイルワ毒で間違いなかった。
解毒剤に必要な薬草が足りず、まだ解毒剤を作れていない。
王宮の薬庫にあるはずの在庫がなかった。
薬庫の担当者たちは青くなって至急手配をしているが、希少な薬なだけに手に入りにくかった。
「何故、薬が無くなっていたのか調べはついたのか?」
この質問にも答えない。答えられない。
薬は毒にもなる。薬庫の管理は徹底されているはずだった。
だが、必要な薬が消えていた。まるで使われるのが分かっていたように。
「手配を急いでくれ。」
私は申し訳無さそうにしている文官を解放して、その場を去った。
おや、私室の前が騒がしい。
「ティアシャルドネ様には、指一本触らせない!」
「悪女が起きる前に追い出すんだ!」
若い文官たちが、部屋の前で言い争っているようだ。
一組は部屋に押し入ろうとし、もう一組が止めている感じだ。
従者が注意しようと先に行こうとするのを私が止めた。
衛兵たちは困惑顔で扉を守っていた。押し入ろうとする者たちの中に高位貴族子息がいるからだろう。
「何をしている?」
私の声でピタッと動きが止まる。
「で、でんか?」
止めようとしていた者たちが明らかに助かったという顔で私を見て、さっと姿勢を正した。
「王太子殿下、おめでとうございます。」
押し入ろうとした者たちも姿勢を正して頭を垂れている。
「ありがとう。で、何をしていたのだい?」
止めていた者たちは分かる。
問題は押し入ろうとした者たちだ。私の部屋に勝手に入るなど罰して欲しいといっているようなモノだ。
押し入ろうとしていた者たちは視線を泳がせていた。
「ティアシャルドネ様から、出されていた課題ができましたので提出に。」
止めていた者たちが、床に置いていた紙を慌てて拾いあげると次々と差し出してきた。
ああ、彼らは彼女の生徒だった者たちだ。
とても勤勉な者たちだと彼女が誉めていた。
私に優秀な部下が多くて嬉しいと。
そんなことをいわれたら、嫉妬しても何も言えないではないか。
「彼女が元気になったら、採点してもらうよ。」
従者がさっさと受け取っていく。
毒のことがあってから、従者を介してしか物に触れられなくなった。
一人が意を決したように前に一歩踏み出した。
護衛たちが雰囲気を変えたのが分かる。
「私は、レオンクラウド王太子殿下とティアシャルドネ様に永遠の忠誠を誓います。」
叫ぶように言うと床に跪いた。
「私も。」「私も。」
後の者たちも跪こうとしたのを私は止めた。
「ありがとう。気持ちはとても嬉しい。だが、彼女が元気になってからお願いできるかな。」
その気持ちは凄く嬉しくて悲しい。
一緒に聞くはずの彼女がいないから。
彼女の生徒だった者たちは頷き合い、礼をすると下がっていった。
後は、押し入ろうとした者たちだ。
「次、同じことをしたら許さない。」
忠誠を誓ってくれた彼らに免じて見逃してやろう。
彼女もそうすると思うから。
上司や親の耳に入り、小言は言われるかもしれないが。
そんなことは私の知ったことではない。自業自得というものだ。
異世界には、ドラゴンという怪物がいるのかい?
えっ?空想の動物?
ドラゴンは、りゅうで、モンスターで、神で、神の獣?伸獣で・・・。
結局、何なのかな?
場所によって、ドラゴンは形が違うのかい?
同じドラゴンという名なのにそこまで違うと面白いね。
比べてみるともっと違うのかい?
ああ、実際にはいないのだったか。




