婚約者と立太式(後)
短いです
昨夜、『婚約者と立太式(前)』の前にもう一話『婚約者と氷の棺』を割り込みしました。
悪夢の始まり→氷の棺→立太式(前)→立太式(後) になります。
赤い絨毯の上をゆっくりと歩く。
手で抱えるように持っていたマントは、引き摺っている状態だ。
豪華に見えるが、はっきりいって重たくて歩きにくい。
こんな衣装を考えた者は、見た目だけ重視したのだろう。
王座の前で膝をつき、王から冠と笏をいただく。
国の最高神官から洗礼を受けたら終了だ。
私は、王太子となった。なってしまった。
偽りの宣言をする。王太子として、この国のために尽くすと。
これから、今まで以上に国に尽くさなければならない。
彼女をこんな目に遭わせた国に、何故、私が尽くさなければならない?
疑問は不満になる。
求めた見返りを与えない国に何を望む?
それでも私は、口角を上げ立派な王子を演じる。
それは、昔彼女から聞いた″はだかのおうさま″のようだと思う。
正直者しか見えない布で作った服をきた王様。
大人は正直者でないと言われるのが嫌で、見えると嘘をついた。
子供が王様が裸だと笑って、王様も大人も騙されたことを知った。
立派な衣装に身を包み、嘘で外も内も固めている。
周りも分かっていて何も言わない。
正直者の子供がいない″はだかのおうさま″の世界だ。
バルコニーに出て、国民に王太子となったことを知らせる。
彼女と二人で立つはずだった場所で。
周りの止める声を聞かず、マリークライスがバルコニーに躍り出てきた。
聖女の衣装で、だ。
歓声が起こる。
私と聖女の婚約が発表されると思ったのだろう。
私は、上げた右手を下に下ろした。
歓声が静まる。
「私は、私の愛する者を傷つけ続けたこの女を妃とすることはない。」
ゆっくりはっきり宣言する。
「私は、この女、罪人を許さない。」
ざわめきが起こっている。
「私とこの聖女の婚姻を望む者は去るがよい。私は、聖女マリークライスと婚姻を結ばない。」
私は、真っ青な顔したマリークライスを一瞥して、バルコニーを後にしようとした。
「レオンクラウド王太子殿下、ティアシャルドネ様、万歳!!」
声のする方向を見ると、″守る会″のメンバーとキャスター・ユインスキーや学園で一緒だった者たちがいた。
「王太子殿下、ティアシャルドネ様、万歳!!万歳!!」
その言葉が他の者たちに広がっていく。
「ありがとう。」
聞こえているかい?この声を。
彼女に聞かせたかった、この声を。
二人で聞いたはずの声。
悔しい。けれど、嬉しい。
彼女の名前が叫ばれているのが。
先導者は、キャスターの婚約者だろう。
やっぱりヒロインというのは、思いもよらない行動が出来る者なのだろう。
だから、心を閉ざしていた攻略対象者たちも癒され絆されていく。
私は声に応えて手を振った。
時間が来て、従者に先導され王宮に戻る。
マリークライスの仄暗い光を宿す目に見つめられながら。
あのマントは、時々布団でないかと疑っている。
分厚くて重たいだけ。
野宿の時には、重宝しそうだ。
ただ嵩張るから、荷物になるが。
あっしゅくふくろ?
布製品を小さく収納できる?
塩化ビニル?石油?
どんなのか教えてくれる?
アンタイルと相談してみるよ。
出来たら、旅行の時に沢山ドレスを持っていけるね。




