表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/255

婚約者と前公爵2

シリアスです。

殿下は、基本は、やられたらやり返す人です。

未遂であっても許しません。

どっちにしろ、貴族の令嬢が貴族でなくなったら、助けてくれる人がいなければ身を崩すだけかな?手に職があれば、別だけど。

 部屋にいるもう一人の護衛騎士は、宰相の遠縁の者だ。

 騒がないところを見ると話がついているのだろう。

 宰相の姪が私の側妃となることに。

 残念男(エドヴォルト)がいては、ラーシナカ家に勝つことができない。だから、側妃で手をうったのだろう。

 私の意志はあくまでも無視されているが。

「ラーシナカ前公爵、愚かなことは止めるのだ。」

 無駄だと分かりつつ、一応聞いてみる。

 腕輪の石が砕けていく。

 彼女の魔道具が役目を終え、力を失ったことを示している。

「さすがですな。氷との間に風の壁を作りましたか。」

 軽く目を見張り、前公爵(ジジイ)はそれでも笑みを崩さない。

 本来なら、氷に閉じ込められた時点で身を守るために仮死状態に近い形になるはずだった。つまり意識がなく、言葉を発せられる状態でないということだ。

 私が魔力で氷と身体の隙間に風を流し、意識を保っていると思っているのだろう。

 私が意識を失っていないのは、誤算のはずなのに慌てもしない。

 肯定済み、ということだ。

 既成事実さえ作ってしまったら、後は貴族の力でどうとでもなるということか。

 父である国王でさえ、丸め込まれているかもしれない。

 氷の魔法を解いた瞬間、私に媚薬を飲ませ、ラーシナカ公爵令嬢を私に襲わせる。

 自由を奪おうが、薬を使おうが、私の意志など関係なく、私が襲った事実を作ることが彼らには重要なのだ。

 だから、引退した前公爵(ジジイ)が目の前にいる。独断で息子の現当主一家には関係ないとするために。

 今回のことで公爵の地位は失うが、全責任を前公爵(ジジイ)が全て負うことで被害を最小に止められる。

 孫を私の妃にすることのほうが、何よりも価値があると考えての行動。

 反吐が出る。

「心配なさらずとも、元婚約者殿も楽しい思いをするように手配してあります。」

 それが何を指しているか、分からない私ではない。

「ケイン。」

 私は、もう一人の護衛騎士の名を呼んだ。

「騎士の棟に連絡を。今夜は、()()()()を呼ぶ必要はない。」

 前公爵(ジジイ)は何を言うのかと眉を寄せたが、笑みを崩すことはない。

「今夜は、()()()()()()()()()()()()を遣わす、と。」

 前公爵(ジジイ)が、笑みを張り付けたまま固まった。

 隣に立つ秘書官もケインも私の言葉の意味が分からず固まっている。

 王宮の警護に当たる騎士たちが住む騎士の館には、毎夜、公費で娼婦が呼ばれている。命をかけて警護に当たる騎士たちに慰みを与え、その精神の安定を図っている。

 まあ、血気盛んな若者が多いから、余分な熱が溜まらないようにする意味が強い。

「聞こえなかったのか?今宵は、マリークライス・ラーシナカに騎士たちの相手をさせる。」

 わざと貴族の称号、フェス(男性ならファス)を取って名を告げる。

 彼らは、僅かだが私が氷の中で自由に動けるようになっているのに気が付いていない。

 首を動かし、周りを確認する。

 窓は、開いたままで凍ってもいない。

 修繕費を増やしたくないからね、無駄遣いは彼女に怒られるから。

「私の孫娘を愚弄される気ですか?」

 いや、私の可愛い婚約者を馬鹿にし続けているのは、そっちだろう。

 何故、前公爵(ジジイ)に怒る権利があるのか分からない。

「″楽しい思い″をお前の孫娘にも体験してもらうだけだ。仕事だから、最初から覚悟も出来るし、給与も支払われる。貴族の無駄な矜恃しか持っていない()()()には、身一つで出来る簡単な仕事だ。」

 喧嘩を売ってきたのが、そちらだと分かっているかな?

 こちらはもう言葉を飾る気かないくらい怒っているのだが。

 腕を組んで氷に凭れたら、やっぱり冷たかった。

 前公爵(ジジイ)は、顔を真っ赤にして目を白黒させている。

 不敬罪にならない言葉を探しているようだが、もう極刑にできるレベルになっているのを気付いてないのかな。

 何故、自分たちは大丈夫などと妄想できるのだろう?

 隣にいる者たちも、もうそろそろ登場してもらおうか。

 空き室である部屋から、伺うような人の気配がしているのは分かっている。

 彼女も心配だ。

 誰も()()()()()()のは分かっている。

 だが、可愛い彼女が騙された、辱しめを受けさせられようとした事実が許せない。

 彼女に泣いた跡でもあれば極刑でも生温すぎる。

 だから、覚悟はいいかい?

「ケイン、二人追加だ。」

 魔法を使って壁を壊す。

 ハゲ頭の宰相(はげ)とどっぷり太ったグラスハイム公爵(ぶた)が、ぎょっとした顔でこちらを見ていた。

 その側には、青ざめた顔の娘が二人。

 宰相(はげ)の姪とグラスハイム公爵(ぶた)の娘。

 娘たちは、この暑い季節に外套を着ている。外套の下は、人に見せられない脱ぎやすい服なのだろう。

 元公爵令嬢(マリークライス)が終わったら、この二人の相手を私にさせるつもりだったのか。

 彼女以外と関係を持たされそうだったと思うと恐怖で鳥肌が立った。

「シャル、どうしていらないと言うんだい?」

せっかくその瞳に合う石をみつけたのに。

首元に飾ったら、とても素敵だろう。

「国のお金ですよね?」

いや、これは、魔道具販売で稼いだお金だけど。

どういうことが聞き出してみよう。

「私は王族だからね」

国庫に私の予算もあるからね、一応。

最近使ってないから、貯まっていく一方だけど。

「民から、集めたお金ですよね」

そうだね、国庫は。

「民から、集めたお金は血税なんです。無駄使いしてはいけないのです」

血税?血まみれの税?

無理矢理徴収されている地区かあるのかな?

調べてみよう。

倍の課税をしている地区があった。

彼女はどうやって知ったのだろう?


シリアスな分、小話もシリアスになってます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ