婚約者と平民の焦り
僕は、マリークライスを見ていた。
乙女ゲームの最後の場面。
おかしな動きをしていた商会は、チェックしてある。
商品の中にとても嫌なモノを見つけた。
そんなモノまで準備したのか!と思わず鳥肌が立った。
対策用のモノは手配済みだけど、使わなくていいことを祈っている。
「キャスター、緊張してるの?」
エメリンが、腕を引いてきた。
「″あれ″が大人しくしていると思う?」
エメリンは顔をしかめて首をよこに振っている。
「絶対企んでるわ。だって、あの余裕。」
言われてみると、マリークライスは忌々しいと控えの間に続く扉を睨んでいるがその顔に焦りがない。
せっかくの卒業記念パーティーなんだから、何も起こさずに楽しませてほしいと思う。
卒業記念パーティーが始まった。
隣でエメリンがキャアキャア騒いでいる。
レオンクラウド殿下とイハヤカタ侯爵令嬢は、僕でも見とれてしまうほどお似合いで綺麗だった。
イハヤカタ侯爵令嬢のドレスは似合っているのはもちろんのこと、光によって、角度によって、黄色、青銀、黄緑と色が変わる。レオンクラウド殿下の執愛を感じ、思わず腕を擦ってしまった。
学園長の簡単な挨拶が終わると、ラーシナカ伯爵によるマリークライスの断罪が始まった。
ティッオ殿下とラーシナカ伯爵は、マリークライスの血縁者だからこそ本人が望んでいようが不幸な結婚をさせたくないようだ。
だから、マリークライスの罪を暴露し、婚約者としての資格を無くそうとしている。
マリークライスは壇上の実の兄を睨み付けているが、断罪しているラーシナカ伯爵も辛いと思うよ。
それが分からない限りマリークライスには破滅しか待っていないような気がする。
レオンクラウド殿下の挨拶も終わって平穏に卒業記念パーティーが始まった。
ダンスは、エメリンがイハヤカタ侯爵令嬢が踊るのが見たいというから、軽食をつまみつつダンスを見ていた。
「ティアシャルドネ様は、ダンスが苦手なの。」
確かによく見ると足元が・・・。それを感じさせないのは、やっぱりレオンクラウド殿下の執愛だろうな。完璧なリードだ。
マリークライスもエドヴォルド様と踊っている。
エドヴォルド様も騎士の位を剥奪され平民になったから、呼び捨てでいいんだよなー。けど、なんか″様″つけてしまう。
虚ろな目をしているエドヴォルド様だけど、レオンクラウド殿下とイハヤカタ侯爵令嬢が視界に入った途端、その目に力が宿る。特にイハヤカタ侯爵令嬢を見つめる目は切なさがある。
無理してマリークライスの側にいなくていいのにと思う。ゲームでは、ずっとレオンクラウド殿下の護衛騎士だったのだから、強制力というモノがあるなら殿下元に戻るのが普通なのに。
やっぱり従縛の魔法が関係しているのかな?
喉が渇いて飲み物を取りに行き友達と話し込んでいたら、二曲目のダンスが始まっていた。
レオンクラウド殿下は、マリークライスと踊っている。
なんか違和感。
あ!あの石がデカイだけの指輪をしてない!それに肘丈の手袋?
なんか引っ掛かる。
二曲目が終わって、マリークライスは悔しそうな目をしていた。レオンクラウド殿下に何か言われたのかな?
なんで諦めないんだろ。あそこまで気持ちがないと言われたら、普通諦めるだろ。
マリークライスが休憩室に行ったのを見て、僕はエメリンの元に戻ろうとした。
そこに偶然、ティッオ殿下と会った。不審な点がないか見ていたそうだ。
なんか気が付いた点がないかと聞かれ、マリークライスの手袋のことを話してみた。
「あのマリー姉上が指輪を外していた?」
信じられないとティッオ殿下が呟く。
調べてみるとティッオ殿下が言ってくれたので、僕は不安を持ちながらもエメリンの元に向かった。
エメリンの隣でやっぱり気になって、マリークライスを目で追っていた。神官たちに隠れているけど顔は見られる。
こわー。すごい目でイハヤカタ侯爵令嬢を睨んでいるよ。
手は、どうなってるんだ?神官たちが邪魔でみえない。
あ、移動?
えっ!!手袋が手首までのに変わっている!!
なんで?
怪しいリストに入っていた恐ろしいモノは・・・、白色の粉だ。いや、簡単にいろんな白い粉は手にはいる。
「エメリン、レオンクラウド殿下の元に行こう。」
違うといい。違うはずだ。
こんな所であんなモノを使うなんて考えられない。
レオンクラウド殿下たちは、ちょうど真向かいのデザートが在るところにいる。
早く知らせないと。
エメリン、いい加減にやめない?
エメリンがイハヤカタ侯爵令嬢がとても好きなのは分かっているよ。
だからといって、ずっとそれを聞いているのも。
何回もきいてるし。
うん、苦痛。
わ、分かった、分かったよ。
聞けばいいんだろ。
だから、僕の仕事に墨をぶちまけようとするのは止めて!!




