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婚約者と花占い(過去)

殿下八歳の頃の話です

「すき、きらい、すき、きらい、すき!!」

花弁をむしられた花をほおり投げながら、マリークライスが嬉しそうに手を叩いていた。

「レオンクラウドでんかは、わたくしのこと、すきなのですわ。」

私は、うんざりと何十回目か分からないその言葉を聞いていた。

きっと、私の眉間には年に似合わない深い皺が出来ているだろう。私の気持ちは、私のモノだ。そんな花なんかで分かるはずがない。

このくだらない茶番にいつまで付き合わなければならないのか、と。

チラリと異母弟(ティッオ)を見ると退屈過ぎて、居眠りをしている。

「つぎはこのはなですわ。」

花弁が七枚しかない大輪の花を持って、どうなるのでしょうと不安げに花弁を引っ張り始めた。

七枚しかないのだ。答えは分かりきっている。

本当ならこの時間は、異母弟(ティッオ)と剣の稽古のはずだった。

そこにマリークライスが乱入してきて当たり前だと花占いとやらに付き合わされている。

はっきりいって、どこが占いなのか分からない。

五枚、七枚、十一枚の花弁の花でしか占っていない。結果など分かりきっているのに。

八歳の誕生日前にマリークライスとの婚約の打診があった。

神帝の予見のコトは私も知っていた。

だからこそ、安易に婚約者を決めたくなかった。

それに人のコトを全く考えないマリークライスとは婚約したくなかった。

とりあえずマリークライスとの婚約は保留と出来たが、このままでは外堀を埋められ、婚約をさせられるのは目に見えていた。

早急に覆せるほどの力をつけなければならない。

そんな時、まだ学生なのに変わった魔道具を作るアンタイルのことを知った。

お忍びでイハヤカタ侯爵家を尋ねた。

アンタイルは、最初嫌な顔をしたが自分の作品に興味を持っていることを知ると喜んで見せてくれた。

アンタイルの作品は、興味深く面白かった。

そして、売れる!と思った。

どれも生活に結びついたモノで役立つ物だった。

イハヤカタ侯爵にも協力を仰ぎ、アンタイルと魔道具専門の商会を作り、魔道具の販売を始めた。

驚いたことに魔道具の発案者は、アンタイルの妹だった。

初めて会った時、異世界の前世の記憶を持つ彼女は、大人の雰囲気を持つ不思議な少女だった。

アンタイルが生み出す魔道具は、彼女が異世界で日常生活で使っていたものだった。

私は、最初、彼女を警戒した。その青銀の髪と青い瞳に惹かれながらも。

マリークライス、マリークライスの友達、令嬢と名の者たちは私の妃の座を狙っていた。彼女も同じかもしれない、と。

だから、彼女には、″ヒロト″と名乗った。本名は王子と分かった途端、態度が豹変したらと名乗れなかった。ヒロドではなくヒロトと言ってしまったのは、緊張していたからかもしれない。

新しい友達が出来たと嬉しそうに見つめる彼女が眩しくて、どもってしまったから。

彼女の異世界の話も興味深く面白かったが、年相応に彼女と遊ぶのも楽しかった。

魔法の訓練が終わったエドヴォルドと三人で、時には彼女と二人で、イハヤカタ侯爵家の庭を走り回った。

エドヴォルドと間違えられて、彼女の電撃を浴びたこともあった。

ちゃんとアンタイルと魔道具の打ち合わせもしていたよ。

私のイハヤカタ侯爵家訪問は、アンタイルが目的なのか、彼女が目的なのか、分からなくなるほど待ち遠しくて楽しみだった。

彼女は、イハヤカタ侯爵家で隠されるように育てられていた。

届け出はきちんとされていたが、イハヤカタ侯爵家に次女がいることを知る者はほとんどいなかった。

その理由は、ラーシナカ公爵家にあった。

当時のラーシナカ公爵夫人は、他国の王族でとても気位が高い人だった。そして、大の前世持ち、特に異世界の前世持ち嫌いだった。

継子の子供が異世界の前世持ちと知ったら、何をしてくるか分からなかった。母国の力を借りてでも彼女を消しにきたかもしれない。ラーシナカ公爵家の血を引く者に前世持ちはいらないと。

ラーシナカ公爵夫人にはそれを出来る力があった。

彼女と遊んでいたある日、彼女が雑草の花をちぎって花占いを始めた。

「売れる、売れない、売れる、売れない、売れる!!」

花弁が五枚しかない、売れるにしかならないのに何故?

私は、素直に質問をぶつけてみた。

「絶対当たるように占ったの。」

ニッコリ笑う彼女が眩しくて、直視できない。

「意味あるの?」

「うーん、ないかも。験担ぎかな。わざと良い結果にして、そうなりますようにって。」

験担ぎ・・・。初めて聞く言葉だ。

けれど、そういう意味なら分かる気がする。

新しい魔道具が売れることを期待して、占いで良い結果しか出さない。だから、売れると信じる。自己満足だけど。

マリークライスの花占いの意味は考えたくない。

私が、マリークライスを好ましく思える日などくるのだろうか?

絶対にないと思ってしまう。政局的には、最適な相手だと分かっていても。

花占いに凝っているから、うんざりする贈り物のお礼に偶数の花弁を持つ花を贈った。花占い用に、と。

マリークライスは、わざわざ一枚花弁を取ってから花占いをしていたと聞いた。

私の気持ちは、まったく伝わらなかったようだった。

彼女に奇数の花弁の花を贈ったら、私との恋占いに使ってくれるだろうか?

たぶん、意味を分かってくれない。

花瓶に挿してある花を一輪取る。

彼女と・・・

幸せになる、ならない、なる、ならない、なる。

うん、幸せになるようにするよ。

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