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婚約者と前公爵

しばらくシリアスです。

殿下は、鬼畜です。

彼女を傷つけた、傷つけようとした者たちには、容赦ありません。

色々矛盾がありますが、ご容赦ください。

ヒロインは、まったく出てきません。

 夏の休みも後半になってきた。

 公務(しごと)も少し落ち着いてきた。

 そのうち、可愛い彼女とゆっくり会える日が作れるだろう。

 楽しみだ。

 今度は、どんなことをしてあげようか。

 街に出掛けるのも楽しいかもしれない。

 デートというらしい。

 ブラブラ歩くだけでもいい。

 きっと彼女が楽しませてくれる。

 懸念が、ある。

 ラーシナカ家がまだ動かない。

 議会で彼女とのことをはっきり宣言したのにもかかわらず。

 私の卒業も半年に迫ってきている。

 ラーシナカ公爵令嬢マリークライスは私と同じ歳だ。

 今年、十八歳、結婚適齢期に婚約者もいない状態。

 相当焦ってきているはずだ。

 ほとんどの令嬢が学園在学中に婚約し、卒業から一年以内に結婚する。

 在学中にどうにか私の妃になれるように目論むだろう。

 今でも接触が多いのだから。

 可愛い彼女に会えないのに違う女に時間なんか作る必要ある?

 公爵の代理とかで来るから、用事だけ済ませてとっととお帰りいただいているよ。

 下手な噂を立てられて、彼女を傷付けるのも嫌だからね。

 女性の売れ残りは高位貴族ほど恥になり嫁ぎ先も悪くなるから、必死なのは分かるけどね。

 いい加減、諦めも肝心だと思う。

「殿下、ラーシナカ公爵から面会の申し込みが。」

 きたか。

 大丈夫、彼女には魔道具を送ってある。

 彼女の身を守れる魔道具が封じられた腕輪を身に付けているはずだ。

 アンタイルからもそうするようきつく言ってもらってある。

 彼女自身、屋敷(いえ)から出なければ安全だ。

 イハヤタカ侯爵の完璧な術の中にある。

 チラリと私の秘書官をしている男を見ると予定を確認している。

「半時後なら、可能です。」

 私は頷いて、伝令の文官に答えを伝える。

「半時後にここで。」

 言った瞬間、ゾゾっと悪寒が走ったのは対決を決めたからなのか。

 残念男(エドヴォルト)は、私の護衛として側に控えている。

 ラーシナカ家の手の者の中で一番の魔力の持ち主だ。

 イハヤタカ家とやり合うならここにはいない、はず。

 魔術師塔で問題を起こしイハヤタカ侯爵たちを足止めしても、彼女の持つ魔道具を壊すのに残念男(エドヴォルト)が必要なはずだ。

 そう分かっていても不安が消えない。


 半時後、私の前に現れたのは引退したはすのラーシナカ前公爵だった。前公爵が一人で来たことに違和感があった。

 手っ取り早く結婚を決めたいのなら、姑息な手段で既成事実を作るつもりで令嬢も連れてくると思っていたからだ。

「殿下、許可をいただき光栄にございます。」

 息子は急用ができ代わりに来たという言葉は全く信用ならない。

 白髪の男に座るように促した。

 私の嫌な感じはどんどん強くなる。

 すぐにでも可愛い彼女に会いたい。

 可愛い彼女の無事を確認したい。

 不安が膨れていく。

 それに気を取られて、私はすぐ側で残念男(エドヴォルト)が苦しそうな表情をしていることに気がつかなかった。

「孫のマリークライスが、半時もしたら参ります。」

 やっと私は、前公爵の意図を知ることができた。

 孫娘が別行動なのは、彼女を屋敷(いえ)から誘き出すためだと。

 従姉妹が和解のために誘ったのなら、素直な彼女のことだ騙されていると思わずにノコノコと付いていくだろう。

 その後は・・・、考えたくない。

 案の定、彼女の居場所を知らせる魔道具がいつの間にか役に立たなくなっている。

「殿下は、それまでお休み下さい。」

 そう、私を彼女の側に行かせないために、残念男(エドヴォルト)はこの場にいる必要があった。

 私は、咄嗟に立ち上がった。椅子に座ったままだと後々動きにくいからだ。

 残念男(エドヴォルト)から距離をとらないと。

「エドヴォルド。」

 残念男(エドヴォルト)の名前が呼ばれるのが早かった。

 寒い。身体がうごかない。

 私の身体が残念男の魔法で氷漬けにされた。

 残念男(エドヴォルト)の氷魔法はこの国一だ。

 温度が違うのか、同じ大きさの氷を作らしても他の者よりも数倍溶けるのが遅い。二時間で溶ける氷が一日その形を保ったままだ。

 夏は涼をとるのに重宝しているが、いくら暑い夏でも氷漬けは、寒すぎる。

 そして、生きたまま凍らすことも可能であった。

 今の私の状態だ。

 魔法が解けた時は麻痺しているが、すぐに普通の状態に戻る。

 私の場合、好き勝手できるよう身体の麻痺がしばらく残る状態にするだろうが。

「殿下、貴方がいけないのですよ。我が孫を選ばないから。」

 勝利を疑うことなく、恍惚と前公爵が話す。

「あんなイハヤタカ侯爵令嬢(ぜんせもち)など、選ばれるから。」

 異母弟(ティッオ)が優秀か愚者なら、私はとっくの昔に暗殺(ころ)されていただろう。

 現に十歳頃まではよく命を狙われていた。

 前公爵の孫になる異母弟(ティッオ)は、傀儡にするには聡明過ぎて、忠誠を誓うには愚鈍すぎた。

 私という目標があったため、操るには賢くなりすぎ国を任せるには思考が偏りすぎるということだ。

 後半の責任は、己の考えだけを押し付けたラーシナカ家にある。

 そして、私は始末(ころす)にしては優秀過ぎた。

 私に何かあれば、国内外から問題が溢れ出すことを彼らは分かっている。

 だから、彼らは私を取り込もうと必死だった。

二人で、ぶらぶら歩く・・・。

確か、マイタ通りの橋の上でキスをすると、幸せになれるとか噂があったな。

あ、キハサの丘で一番星を二人で見つけるというのも。

ラヤカの祠で二人で願うというのも。

ウニナ池で二人の名前を書いた紙を浮かべるというのも。

あとは・・・。

うーん、一日では回りきれない。

何度もデートしなくては。




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