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閑話 婚約者と夏祭り

お盆の季節になりました。

夏なので、まだ″殿下″呼びです。

「死者が還ってくる?」

「はい、お彼岸やお盆に子孫が元気にしているかご先祖様が見に来ると言われています。」

面白い話だね。

「それって、幽霊というものかい?」

あっ!彼女の顔色が変わった。

怖い話は嫌いだからね。

「ご先祖様が見に来ているだけです!」

涙目になって睨まなくても。

先祖でも幽霊には変わりがないと思うのだけど、認識の違いかな?

「けれど、人が亡くなったら輪廻転生で生まれ変わると言っていなかったかい?」

同じ転生の認識があるのに変わった考え方だね。

彼女が首を傾げた。

「ご先祖様が生まれ変わっていたなら、その生まれ変わりが会いに来るのかい?」

だとすると異世界は、前世持ちだらけということか。

それはそれで生きにくそうな世界だね。

前世の(しがらみ)を凄く引き摺りそうだ。

「いえ、あちらの世界も前世の記憶を持っている人は少なくて、前世持ち(そんなひと)が会いに来るのは(まれ)なことだと・・・。」

じゃあ、ご先祖様とやらは会いに来れないのではないのかい?転生をしてしまっていたら。

「ご先祖様?ご先祖様だよね?お盆に仏壇の回りが光って見えたのって・・・。」

彼女は自分自身を抱き締めて、″ご先祖様だったの!″と言い聞かすように繰り返している。

″ブツダン″は、家庭にある死者を奉る祭壇?だったかな。

ふーん、それが光っていた。本来なら光らないもの、だということだね。

″オボン″に光ったのを見て、誰かにご先祖様がと言われた?

本当は何で光ったのだろうね?意外に大人の悪戯だったかもしれないよ。

「あっ!」

ビクンと彼女の身体が揺れた。

私の声にそんなに驚かなくても。

我慢しても笑いを殺すことが出来なかった。

「殿下。」

涙目で睨まないでくれるかな、可愛い過ぎるから。

襲いたくなってしまうよ。

「夏は″オボン″がメインなのかい?」

ごめん、まだ笑いがおさまらないから声が震えてしまったよ。

だから、そう睨まないでほしいな。

「色々な夏祭りがあったり、終戦記念日がお盆の時期なので戦争についての特集があったり、色々あります。」

終戦・・・、昔、大きな世界大戦があって彼女の国は敗戦国になった。

終戦間近、彼女の国に雨の変わりに″バクダン″というものが空から降り注ぎ、何十万という人が一瞬で死傷した″ゲンシリョクバクダン″というものも落とされたらしい。

それらの武器は年月をかけ、さらに強力に小型化されているそうだ。

異世界の武器は、シャシャラル(ねむれる)神の力に匹敵するかもしれない。

彼女は、決して異世界の武器を具体的に話さない。恐ろしいモノとして話す。そして、この世界で作られないことを祈っている。

敗戦国となった彼女の国は、平和の尊さについて教えているらしい。

けれど、彼女の平和主義は、異世界の知識だけではないと思う。

彼女本来が持つ優しさだろう。

私の惚気と言うのなら、そうかもしれないね。

「夏祭りには、屋台がでるのですよ。射的に輪投げなどの遊びや、綿菓子にかき氷などの食べ物のお店が出るのです。」

屋台は、この国にもあるね。

食べ物屋がほとんどだけど。

「お盆には盆踊りがあって、櫓を中心にみんなで輪になって踊ります。」

それは、楽しそうだね。大人も子供も一緒になって踊るのだと。

けれど、″ボンオドリ″というからには、ご先祖様と関係している?

あっ、思い出してしまった?

だから、涙目で睨まない。

うん、″オボン″はご先祖様が死者の国から子孫の様子を見に来ている。

だから、幸せにしていると家族で集まったり、″ボンオドリ″で楽しくしていることを見せている。

そういうことにしておこう。

本当に異世界の考え方は面白い。

見たことも会ったこともない″ご先祖″のために祈りを捧げているのだから。

法要というものがあって、百回忌というものがあるらしいよ。

死後九十九年経った時に行う祈りらしい。

死者に会ったことのある人はいるのだろうか?

転生という概念がありながら、死者が何百年も会いに来ると思っている。

祖先がいなければ今がないのだから、祖先に感謝するのは良いことだと思うよ。

私も彼女に会えたことは感謝しているから。

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