婚約者と卒業式前日
今も制服の第二ボタンなんて言われているのかな?
明日は、とうとう卒業式だ。
私が彼女の洋服タンスに近付くと彼女がそわそわしている。
ごめん、知っている。
タンスの奥に隠すように包装された小さな箱があることを。
ササリットと侯爵夫人が来た日からあった。
私への卒業プレゼントと思っている。
箱についていたカードには、『卒業おめでとうございます ティアシャルドネ』とあったから。
私へのプレゼントでなかったら、ショックで寝込んでしまいそうだ。二度と起き上がれないかもしれない。
誰へのプレゼントなのか、中身は何なのか、とても気になっている。が、彼女がもろバレの態度で隠そうとしているから聞くのを我慢している。
聞いたら可哀想だろう?一生懸命隠しているつもりなのだから。
けっして、私へのプレゼントではなかったら?と恐れているわけではないからね。
「シャル、異世界の卒業式はどんなのだい?」
異世界では何度も入学と卒業を繰り返すらしい。
彼女は、異世界の話をするときは少し懐かしそうな顔をする。
こちらの世界より過ごしやすかったからかもしれない。
多少の差別や階級はあるらしいが、こちらのように明らかにあるわけではない。こちらは、平民と貴族の格差は激しすぎる。
「異世界の卒業式は、こちらと同じで卒業証書授与がメインです。」
ふーん、あまり変わらないのだね。
「卒業生代表が答辞を行い、在校生代表が送辞を行います。」
私が答辞を行うのは、王族だからだよ。
異世界のように成績最優秀者であるからではなく、王子だからであって。
確かに面子もあるから成績は一位をキープしていたけれど・・・、凄い立派な人という目で見ないでくれるかな?
恥ずかしいじゃないか。
「卒業式の後、謝恩会やクラスごとでお別れ会が有志で行われたりします。」
こちらの卒業記念パーティーのようなモノだね。
有志ということは、参加しない(出来ない)者もいるということか。
「漫画などでは、卒業式の後の男子生徒は大変なのですよ。」
漫画は、絵で動きを表している本のことだったね。
物語で″走っている″と文字で書いてあるのが絵になっている。
「女子による制服の第二ボタン争奪戦があったりして。私の学校ではそんな騒動ありませんでしたけど。」
ふーん、第二ボタン、ね。
男子生徒が意中の女性に思いを込めて渡すボタン、らしい。
ボタンを貰った女性もその人が好きなら両思いで幸せになれると。
漫画では、卒業生・在校生を含めた女性が思いを寄せる男子生徒や憧れの男子生徒に群がって記念品として強請る、ということかな?
漫画では、揉みくちゃになりながらも意中の女性のために第二ボタンを守り抜く男子生徒が描かれているらしい。
明日の服は、ボタンが付いていたかな?
「シャルは、誰かからボタンを貰ったり、誰かのボタンが欲しかった?」
彼女が少し考えこんで首を横に振ったことにホッとした。
「その時は、回りで盛り上がっていたから、そういうコトに憧れは有りました。けれど、好きな人や気になる人がいなかったので貰っても困っていたかも・・・。」
ふーん、じゃあ明日は?
明日、渡したら喜んでくれる?
服に第二ボタンがなければ、今からつけるよ。
「第二ボタンは上から?下から?」
「えっ・・・、上からですけど。」
そこで赤くなって顔を反らさないでくれるかな?
我慢するのが辛いのだから。
明日は、卒業式に出てほしいから抱き潰すわけにもいかない。
渡すタイミングは、卒業式の後、学園の生徒で無くなってからだね。しっかり覚えておくよ。
彼女と幸せになるためなら、どんなジンクスでも縋るよ。
今も不安で堪らないのだから。
議会が婚約者を決めていてくれたら、乙女ゲームのように破棄して楽になれたかもしれない。
だが、私の婚約者はまだ決まっていないことになっている。
乙女ゲーム通りに婚約破棄しないように。
立太式と同時に発表されることになっているから、夜に行われる立太を祝う国を上げて祝賀会で婚約を破棄したらどうなるだろう?とは思っている。
何時間かの婚約者だ。
マリークライスは、とても屈辱的な気分を味わえることだろう。
だが、マリークライスを卒業式の日より後に婚約者にしてはいけないと感じていた。
彼女がピーマン料理を作ってくれた。
ピーマンを縦割りにして種を取り除いたものをオーブンで焼いたモノだ。
一種は、ピーマンにマヨネーズをのせたモノ。
マヨネーズは、彼女が作りだしたドレッシング?
共同作業で作ったもの。
私は混ぜただけだけどね。
もう一種類は、ピーマンのカップにチーズをのせたモノ。
どちらもマヨネーズとチーズに焦げ目がつくまで焼いてある。
チーズのほうが好きかな。
この塩気がお酒に合う。
マヨネーズも美味しいけど。
彼女は、マヨネーズのほうが酸味があって好きなの?
お酒と一緒に食べてごらん。
お酒が苦い?
やっぱりマヨネーズ?




