婚約者と聖女1
ナオプール伯爵家は、少し手を回しただけで面白い速さで没落した。
ナオプール伯爵家の没落で疚しいことがある者たちは、隠れるように身を小さくしている。
マリークライスとの婚姻を推進している者たちがほとんどだっからちょうど良かった。
これで少しは、大人しくなるだろう。
私が聖女と結ばれるという噂の出所は神殿関係者からだ。だが、本当に神帝の予見なのか、それは掴めていなかった。
彼女と中庭を散歩していた日だった。
私が学園に行けない日は、彼女も学園を休ませている。
彼女に悪いことをしている自覚はある。
護衛騎士を信じられないのもあるが、私の知らないところで襲撃されたらと思うと一人で行かすことが出来ずにいた。
だんだん暖かくなり、春が近づいていることを感じる。
まだ私の正妃候補は確定していない。
そのことでマリークライスがイライラしているのは、何もしなくても聞こえてくるようになった。
「レオン様!」
珍しく彼女といるときにマリークライスが現れた。
いつも通り無視するだけなのだが。
「これほどまでお慕いしておりますのに・・・。」
『満月の姫君』の異名を持つだけはあり、美人なのだとは思う。
だが、外見も中身も私の好みではない。
「邪魔しないでもらえるかな。」
彼女は私から少し離れたところで膨らんできた蕾を見ていた。
私はその彼女の姿を愛でていた。
数歩で近付ける距離しか離れていない。
私は彼女の側に行こうとした。
目の前に分厚い氷の壁が現れる。
残念男の氷だ。
「シャル!」
彼女が私の方を見て、首を傾げた。
目の前に氷が有るのが不思議なようだ。
彼女の手が氷に触れる。
一瞬で氷の壁が無くなった。
溶けたのではなく、無くなった。地面に濡れた跡もない。
彼女はキョトンとしている。氷が無くなったことにびっくりしたようだ。
「ヒロト様?」
私のほうに伸ばされかけてた彼女の手を取る。
マリークライスが彼女に何か言う前にここから離れたい。
耳障りな騒音を彼女に聞かせたくない。
「戻ろうか。」
ざわめきが聞こえたが無視して足を進める。
マリークライスが連れてきた者たちの声だ。
何を言っているか分からないが、氷が消えたことに騒いでいるようだ。
「私が消したのです。」
必死な声でマリークライスがそう言っているのが聞こえた。
だが、氷の壁は彼女が触れたと同時に消えた。その場に最初から無かったかのように。
それを多くの者が見ていた。
そのことは、瞬く間に王宮に広まった。
氷を誰が消したのか?
それは、自己主張したマリークライス、私、彼女の三人に別れていた。
何故、私が入っている?と思ったが、夏に私が閉じ込められた残念男の氷を破壊したからだ。
一位聖人の氷を一瞬で消せる。その力をもっている者ならば、同じ一位の聖人か聖女、もしくは・・・現身を持った子供神。
それは、神殿関係者を慌てさせていた。
彼女は、指輪を触る。
それだけで、胸が熱くなる。
どこまで私を夢中にさせるの?
彼女が望めばこの世界も差し出すよ。
優しい彼女はそんなこと望まないけど。
愛してる、誰よりも。
だから、誰よりも私を愛して。




