婚約者と前世持ち
ヒロイン、何もしません。
重たい愛に振り回されているだけです。
王子の言葉が崩れてきてます。
今回の議会は、いつもにまして退屈だ。
私の可愛い婚約者について、だ。
十三歳の誕生日に決めろと言われて決めたのに、まだグチグチ言われるのはうんざりしている。
前世持ちだからって、何?
異世界の前世持ちは危ないって、根拠は?
あまり煩いと、彼女の実家を連れて母の国に亡命するよ。
従兄は大臣職を用意してくれると言っているし、私も実力でその地位をもぎ取れるから。
私が亡命したら、従兄の国を含めて隣国が何をしてくるかはしらないよ。
隣国は、従兄の国もあるから大人しいのだから。
過去の王殺しの前世持ちが、懸念のネタにされているのは分かっている。
そう、あくまでネタだ。
根本的に間違っているのを指摘しても、理解したくないから理解しない。都合のいい頭だ。
王殺しの前世持ちは、斬首された王妃の生まれ変わりだった。
王太子に見初められ、男爵令嬢から王妃になった女性。
その女性は、王妃になるにはあまりにも無知で愚鈍だった。
与えられた権力に対して、義務と責任を考えない者だった。
王妃の行いは国を疲弊させ傾けた。
だから、討たれた。国民たちの恨みをかい処刑された。
王妃であったことを思い出した女性は、その後、王になった者の子孫を殺した。幸せを壊した者として恨んで。
その後が問題視されている。
処刑された王妃は、異世界の前世持ちだったことが分かった。
異世界の知識で、幸せに暮らせるはずだったと騒いだ。
ストーリー通りに攻略したのに!と。
かの国のような悲劇が起こると困ると言っているが、何故、起こると決めつけているのかが私には理解できない。
その王妃は男爵の庶子であり、学校に入学前までは平民と暮らしていて貴族らしいことを全く出来なかったらしい。
そこから、彼女とは全く違う。
彼女は、公爵に次ぐ高位貴族である侯爵家の令嬢である、生まれてからずっと。
だから、貴族としての教育を受けている。
王妃教育もばっちりだしね。
それに私たちはその話を知っている。
対策も対処も出来る。
前世持ちだからと懸念することは無意味なのだよ。
お前たちがそう騒ぐから、優しい彼女が婚約破棄を企てるのではないか。
「結婚式は、イハヤカタ侯爵令嬢が学園を卒業後、直ちに行う」
これ以上、無駄な論争は本当に時間の無駄だ。
「しかし、殿下」
まだ、食い下がってくる?
子爵席の者か。派閥から言わされているな。
「私は、その話を知っている。ティアシャルドネ嬢とその前世持ちの女性をどうやったら、同一視出来るのかが分からない。共通しているのは、異世界の前世持ちということだけだ」
「その異世界の前世持ちが問題なのです」
いや、自分の娘たちを妃にしたいだけだろう?
「ほう、どう問題なんだ?確か、ワナミタ王国の王妃は、異世界の前世持ちだと聞いている。侮辱するのか?」
そう他国でも前世持ち、それも異世界の前世持ちが王妃になった例も幾つかある。いい例も悪い例も。
「私が卒業後、ティアシャルドネ嬢には王宮に住み、彼女が学園卒業後私と結婚する。変更はしない。以上」
私は終りと立ち上がった。
まだ何か叫んでいるが無視する。
決めるのは、私だ。
それに彼女が珍しく会いたいと連絡をくれた。
約束の時間が近いから、急いで戻らなくては。
内容はナオプール伯爵夫人のことかな?
伯爵夫人に怪我をさせてしまったから、婚約を破棄したいと言い出すだろうね。
色々言われたらしいからね、婚約者に相応しくないとか、相応しくないとか、相応しくないとか。
伯爵夫人が接触もしてないのに体勢を崩し、痛くもない足を痛いと騒いだことも。
ちゃんと全て手配済みだから。
お仕置きもしてあるから。
謝罪の手紙も預かっているよ。
心配するだろうから、医者の診断書ももらってあるよ。
部屋に着くと彼女がもう待っていた。
青銀の髪が揺れて、青い瞳か私を捕らえ、柔らかに笑う彼女。
私はあまりにも可愛いすぎて思わず彼女を抱きしめてしまっていた。
議会で色々言われたことで溜まっていたのかもしれない。
何故、こんなに可愛い彼女を認めないのか、怒りもある。
「殿下?」
私を気遣う彼女の声。
「ナオプール伯爵夫人から、謝罪の手紙を預かっているよ」
気力を絞って彼女から身体を引き離す。
そうしないと暴走してしまうからね。
抱き上げて寝室に行ってしまう。
「色々誤解があったようだ。心配しているといけないからと、医師の診断書までついてるよ」
ゆっくりとソファーに彼女を誘導し隣に座らせる。
これで、彼女は婚約破棄を言えなくなった。
「それから、ワナミタ王国の王妃が君に会いたいそうだよ」
彼女の片手を取り両手で包み込む。
「王妃様が?」
そうだよ、びっくりしないでね。
「同じ異世界の前世持ちとして、色々話したいそうだ。」
彼女の目が大きく見開かれる。
うん、その青い瞳も好きだよ。
「異世界の、ですか?」
そうだよ、ワナミタ王妃は王太子妃であった時から国民に慕われる方だ。
だから、悪い見本ではない方だよ。
「私の婚約者として、会ってくれるね?」
うん、決定事項だよ。嫌といっても無理だからね。
「シャル、私のことは、嫌い?」
俯いてしまった彼女が、ハッと顔をあげる。
そんなに悲しそうな声に聞こえたかい?
私のことを嫌ってないのは分かっているよ。
異性と見てくれているかは自信はないけど。
「私は、シャルが好きだ。愛している。」
顔を真っ赤にして、口をパクパクしてるね。
言葉が見つからない?
可愛いよ、すごく。
答えは、もう少しだけ待ってあげる。
けどね、結果は決まっているのだから早く落ちておいで。
「殿下、あの方の何処がよろしいのですか?」
珍しくずばりと聞いてくるね。
何処って、全部しか答えられないよ。
「お好きなところは?」
やっぱり全て、だね。嫌いなところを探すのが大変だよ。
「で、では、嫌いなところは?」
うーん、どこかな?怒った顔は好きだし、睨んでくる瞳は好きだし、膨れて嫌いという姿も可愛いし、うーん、無いかな
「そ、そうですか・・・」
あ!
「嫌いなところがありましたか?」
帰ってしまうのは、嫌だな。ずっと側にいてほしい。私以外と話さないで欲しいし、見ないで欲しい。
「も、もういいです」
変態につける薬はあるのかな?




