婚約者と議会
7月17日19時に『婚約者と二つの家(捕捉)』を投稿しています。
イハヤカタ家とラーシナカ家の確執についてです。
次の日、学園に行きたいのに議会に呼び出された。
マリークライスの求婚をはっきり断ったからだ。
神殿から抗議があったらしい。
「聖女様は、息子神・娘神、二神の力を持たれたらしい。」
「希有なコトだそうだ。」
「初めてだと聞いた。」
「では、この婚姻を断るのは。」
「聖女様を袖にするなど許されませんぞ。」
ヒソヒソと話される。
議会では、マリークライスとの婚姻を断るデメリットだけ問題されている。
「どう言われようが、私はイハヤカタ侯爵令嬢としか結婚しない。」
私ははっきりと言った。
「それほどまでに聖女様との婚姻が嫌なのですか?」
バンと机を叩いて、ポンデ教司が立ち上がった。
「あなたもマリークライス嬢も誰もかもが誤解してみえる。私は婚約者以外と婚姻を結ぶ気が無いと言っているだけだ。相手が誰であろうが断る。」
まあ、マリークライスと結婚は絶対に嫌だけどね。
「それは、彼女と婚約をした時から公言していた。側妃はとらぬ、妃はティアシャルドネ嬢ただ一人だと。」
それでも諦めなかったのが、マリークライスだ。
向こうも大衆の面前で求婚したから取り返しが付かなくなっただろう。
「そもそも学園に乗り込んできて求婚など。私は断ると明言していたのに。」
恥をかいたのは向こうだ。知ったことではない。
「どうしてもとマリークライス嬢との婚姻を強いるなら、私は平民になろう。」
議会は騒然となった。
平民となった私をマリークライスが選ぶか?まず選ばない。
聖人・聖女に選ばれた者は国から位を贈られるが、私は持っていたモノを辞退するからそれは受け取れない。
本当に何も持っていない平民になる。
「イハヤカタ侯爵令嬢は、了承しているのですか?」
「彼女は、付いてきてくれると言ってくれたよ。」
珍しく議会に出席したイハヤカタ侯爵が頷いている。
今日は、魔術師のフードを被ってないのだね。彼女より淡い青銀の髪を出している。その色に安心する。
「その時は、事業も共同経営者に譲る予定だから、どこかで社員として雇ってもらうのもいいかもしれない。」
財産があるから、余程の贅沢をしなければ孫の代まで暮らせるはずだけどね。
「アンタイルの魔道具は、ほとんどがティアシャルドネの発案です。発案料だけで結構な額になります。」
イハヤカタ侯爵の言葉につい笑ってしまう。
何もしないで養ってもらう男が″ヒモ″だったね?
″ヒモ″にはなりたくないから、何かはしよう。
「その時は、私が家事をしよう。」
掃除は出来る。料理は覚えるしかないだろう。
そんな生活も楽しいかもしれない。彼女と一緒なら。
「殿下なら、魔法騎士の道もありますし。」
それは嫌だな。仕事で長期間家を開けることもあるから。
彼女も心配するから剣は護身用だけにしておくよ。
もうそろそろいいだろう。
私の決意も伝わったと思うから、退出しよう。
「私はこれで失礼するよ。学業があるから。」
私が立ち上がると異母弟も立ち上がった。
「お待ちください。レオンクラウド殿下。」
ポンデ教司が引き留めるか、私は早く学園に行きたい。
こんな議題に付き合ってはいられない。
「兄上、先に行っている。」
異母弟が足早に出ていく。その後ろを追いかけたいが。
「ポンデ教司、手短に願えるかな?」
私は、怒りを押さえ込むことなく声をかけた。
引き摺った顔をしたポンデ教司が目に移った。
「何故、そこまで聖女様の思いを踏み躙られるのですか?」
「私は、お互いが不幸にならぬようしているだけだ。」
はっきりと言う。
私の近くにいる限り、マリークライスを幸せにはしない。
「レオンクラウド殿下は、聖女様を嫌っておいでではないのですね?愛せないだけで。」
確認のように問われた言葉に私ははっきりと答える。
「マリークライス嬢を好きか嫌いかと聞かれたら、はっきり嫌いと答える。」
ポンデ教司の顔が険しくなる。
否定するような言葉が出なかったら、まだ可能性があると思ったのか?
「私の大切な人を傷つける者に好意など持てない。ポンデ教司、あなたが聖女様の求婚を断る私を気に入らないように。」
その通りだろう?聖女を受け入れない私を許せないと思っているはずだ。
「マリークライス嬢は、シャルが私の婚約者になったときから、彼女を虐げていた。そんな女性に好意を持てると思うか?」
私は、ポンデ教司の反応を待たずに部屋を出た。
マリークライスは、何も変わっていない。
公爵令嬢だった時は彼女より高位の令嬢だからと、今は聖女だからと彼女を虐げようとしている。
退屈な議会の時は、彼女のことを考える。
笑った顔、怒った顔、泣きそうな顔、泣いた顔、我慢している顔、満足している顔・・・。
どんな表情も可愛くて好きだけど、最近のお気に入りは・・・。
うん、言えないね。私だけに見せる顔だから。
私だけが知っている顔だから。
口付けが止まらなくなってしまうと言っておこう。




