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婚約者とお出掛け

今回は、大人しいです。

短編『婚約者とプール』は、このあとすぐの話になります

 今日は、私の可愛い婚約者とお出掛けだ。

 彼女の屋敷(いえ)に迎えに向かっている。

 この前、ちょっと(だよね?)やりすぎたから、私室に招くと彼女に怯えが見える。

 ある程度抑えているのだよ、これでも。

 うん、自重はしよう、出来るだけ。

 まあ、今回は公務(しごと)だから。

 公式訪問というもので、孤児院や修道院などの施設を幾つか廻る。

 婚約者だからね、彼女を同伴させるのは当たり前だろう。

 学園が夏の休みに入ってしまって会えないのだし。

 だから、会える機会は大いに利用するよ。

 それに彼女は子供が大好きだ。

 いつも子供たちに仲良く遊んでもらっている。

 うん、そうだよ、子供たちが彼女と遊んでくれている。

 彼女に気を使って、彼女が勝てる遊びをしてくれるのに何故か彼女が負けている、いつも。

 まあ、それも可愛いからいいんだけど。

 私としては、彼女の泣き顔は独り占めしたいが。

 彼女を認めない者たちが何を言おうが、こうやって連れ廻せば民は彼女を私の婚約者としてみるようになる。

 何故、前世持ちだと駄目なのか、はっきり根拠もないくせに。

 彼女もね、いい加減覚悟を決めて貰わないと。

 人の言葉に惑わされないで。

 私の限界も近いのだから。

 けれど、反対派は本当にうっとうしい。

 ちょっと国が揺らぐぐらいだから、全部潰してしまおうかな。

 チマチマ潰すのも飽きてきた。

 もう少し外交の整備が必要かな? 付け込まれるとやっかいだ。

 ああ、彼女の家のことを説明しよう。

 彼女の名は、ティナシャルドネ・フェス・イハヤタカ。

 イハヤタカ侯爵家の令嬢だ。

 イハヤタカ家は、優れた魔術師を何人も輩出していて強い魔力も持っている家だ。

 彼女の父である現当主のイハヤタカ侯爵は、王宮で魔術師長であり、兄弟もその下で魔術師をしている。

 あ!魔法と魔術は、似てるようで違うから。

 魔法は、魔力を持つ者なら使える力で、魔術はその通り術だ。

 魔術は、呪文、呪式を必要とし、知識がないと使えない。

 魔力持ちは貴族に多いが、年々その魔力は弱くなっている。

 王家でも私の魔力が一番強いが、イハヤタカ家で一番魔力が弱いとされている長女のササリッタ夫人(結婚されている)とギリギリ同格といえるぐらいだ。

 強い魔力を持っているということで、本来なら脅威の対象になる一族だが、はっきりいうと魔術バカで好きなコトさえやらせておけば、野心家の貴族より大人で信頼できる人たちである。

 新しい魔術、魔方陣、魔道具の研究に忙しく、野心の″や″の字、いや″や″の音さえも思い付かない人たちだ。

 家族の情も厚く、家族仲も羨ましいくらいにいい。

 だから、どれだけ魔力が強くても腰抜けだと思われ他の貴族たちから舐められている。

 本当の価値が分からない愚か者ばかりで、将来国を治める予定の私としては、楽なようで困るような複雑な気持ちだ。

 私の婚約者、彼女は私より強い魔力を持っている。

 今は、使えないけどね。

 だから、()()()悪戯が出来るんだけど。

 彼女の魔力で抵抗されていたら、今頃、私は動けていないだろう。

 彼女には、八つ上の姉、七つ上と五つ上の兄がいる。

 次男は、あの残念男(エドヴォルド)と同じ歳で幼馴染みだ。

 ちなみに長女のササリッタ夫人は、私の婚約者候補だった。

王家に強い魔力を取り込みたくて話が出ていたそうだが、私が結婚できる十六歳だと、女性の適齢期ギリギリのため流れていた。

 十六だと私がまだ学生だし、跡継ぎのこともあるからね。

 シャル、年齢的に釣り合う彼女が、私や異母弟(ティッオ)の婚約者候補に名前すら上がらなかったのは、色々な思惑や事情が絡みすぎて説明はまた今度にしよう。

「久しぶりだね、アンタイル」

 玄関で仏頂面で立っていたのは、長男のアンタイルだ。

 彼女より濃い青い瞳で一点を睨み付けている。

 その眼差しは熊でも射殺せそうだ。

 もちろん睨まれているのは、私ではないよ。

「殿下、ようこそお越しくださいました」

 アンタイルは、魔道具研究の第一人者だ。

 彼女の前世(ちしき)を取り込んだ魔道具は、庶民に使いやすいと評判が良い。

 私は、次々と画期的な魔道具を生み出すアンタイルに興味を持ってこの屋敷を訪れ、複雑に隠されていた彼女を知った。

 それが、八歳の時だ。

まあ、その時に一目惚れした。

 うん、運命の矢に射ぬかれるという体験をしたね。

 彼女の放った電撃をくらっただけと言う者もいるけど。

 あの頃の彼女もとても可愛かった。

 変装してヒロトとして遊んだことを、彼女はきっと覚えてないだろう。

 十三歳の誕生日パーティーで彼女を見初めたことになっているけど、本当はもっともっと前から会っていたのだよ。

「ティアは、もうすぐ来ます」

 アンタイルの言葉に頷く。

 親しい者は、彼女のことを″ティア″と呼ぶ。

 だから、私は彼女をシャルと呼ぶ。

 人と同じように呼びたくないから、私だけが特別に彼女を呼びたいから。

 少し慌てた様子で彼女が出てきた。

 慌てなくても大丈夫だよ。早く着きすぎただけだから。

 今日は、動きやすそうなドレスだね。

 子供たちが、喜んで遊んでくれるよ。

 馬車に乗ってゆっくり話そう。

 て、まだ怒っている?

 顔が強張っているよ。

 けれど、そんな顔も可愛い。

 ねぇ、頬に口付けてもいいかな?

 あっ、固まった。

 アンタイルが苦笑している。

 彼は味方だからね、一応。

 応援はしてくれないけど、妨害はしない。

 妨害しないということは、認めてくれているということだから。

 安心していいよ、馬車には護衛騎士と侍女が同席してるから。

うん、二人っきりになりたいけど、二人っきりにさせてくれないから。

「夕方には、戻る」

 アンタイルが頭を垂れていた。

「じゃあ、行こう」

 固い表情の彼女と馬車に乗り込んだ。

「隣に座ってもいい?」

「ダメです!!」

そんなに力一杯で、拒否しなくても。

真っ赤になって座る彼女は可愛い。

そうだよ、彼女は何をしも可愛いんだよ。

どうせ、帰りは隣に座るからね。

私に凭れて、遊び疲れて眠る彼女は少し幼く見える。

無防備に上下する胸元は、誘っているようで直視が出来ない。

こんなところで何もしないよ。

私にとっても特別なコトだからね、こんなギャラリーいないときに、ね。


寝てる人に危ない悪戯しては、いけません!

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